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渡りに船

 ネグリジェ越しに感じる二つの膨らみは、柔らかく弾力性が感じられる。彼女はこちらを向いているので吐息が首にかかる。

 おいおい、これで時給3000円?

 何かおかしくないか。どうなってるんだ。

 異常しかないこの空間で、しかし異常の本体を突き止めることのできない俺は、正常な思考を停止する。


 このまま寝ればいいのか? それだと時給3000円の働きをしていないのでは?

 どうすればいいのか俺が逡巡していると、太ももの上に手を置かれた。心がザワザワする。

「あの、柏原さん?」

「すーすー」

 どうやら寝ているらしい。もしくは狸寝入りを決め込んでいるらしい。

 寝ているなら構わないだろう、俺は太ももの上の手をどける。


 さて、寝るか。そう思った矢先、今度はもぞもぞと動いたかと思うとシャツの中に手を入れてくる。

「ひゃっ」

 ゾクゾクして女みたいな声を出してしまう。

 彼女はシャツの中に侵入した手で俺のお腹を触ってくる。寝ているふりをしながらこの動作はさすがに無理がありませんかね。

 彼女の腕をつかんで、シャツの中から抜いた。


 もう大丈夫かな? よし、今度こそ寝るか。

 しかし、そんなことで諦める彼女ではなかった。

 彼女の体全体が俺のほうに寄って来て、顔を近づけると、耳を甘噛みされる。

「ひゃうっ」

 カプッカプッと耳たぶを唇で甘噛みされている。たまに舌で耳たぶを舐められる。

 腕を俺の腕に絡ませて、ギュッと双山が押しつぶされるように当てられている。


「柏原さん、やめてください」

「むにゃむにゃ」

 寝ながらむにゃむにゃっていうやつがどこにいるんだ。


 もういいや。諦めて俺はまぶたを閉じ、カプッカプッという子守歌とともに眠りについた。


「おはようございます」

「おはよう」

 朝起きると柏原さんの機嫌は良さそうだった。心なし肌がツヤツヤしている気がする。







 それ以来、彼女の別荘で住み込んで別荘の管理を手伝うことになった。

 マンスリーマンションのほうも解約して、しばらくはこの別荘に住むことになりそうだ。


 もちろん、柏原様が家のない俺のためを思ってピエロになっているんだということは分かっている。

 別荘で住み込みの仕事ができるということは、お金と宿、両方の工面ができることであり、俺にとってありがたいことだった。明らかに憔悴している俺のことを気遣ってくれる彼女の優しさを感じる。もしかしたらセバスさんから俺が家を探していると聞いていたのかもしれない。

 いずれにせよ、渡りに船であることに違いはなかった。ここは好意に甘えることにしようと思う。


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