究極の二択
「ある女性が、顔か性格か、恋人に求める条件としてどちらか選べと言われたとします」
次に彼女が言い出したことは二者の選択だった。
「顔がいい人は基本的に性格もいいと思いますけど」
前世の俺の友達も、イケメンで性格もまともだったぞ。ちなみに現世で友達はほぼいない。のりさんぐらいか。
というか何で会話に付き合ってるんだろう。
「でも、どちらかしか選べないとします。彼女はどちらを優先させるべきでしょうか」
え、そういう話か。めんどくさいな。スキルを発動させる。
「自分が幸せになれる人、じゃないですかね。一緒にいて楽しいと思えるほうです。イケメンと一緒にいれば楽しいと思う人もいれば、話の面白い人といるほうが楽しいと思う人もいるじゃないですか」
結局その人次第なんじゃないですか。
「もしかして、その両極端の二人に告白されているんですか」
「……まあ、そんなところです」
へ~
イケメンはまだしも、不細工なのにこんな美人に告白するやつがいるなんて、俺と違って自分に自信がある奴なんだろうな。
「そのイケメンはそんなにかっこいいんですか」
「はい、むちゃくちゃかっこいいです。たぶん女性100人に聞いたら99人がかっこいいというと思います」
残りの一人は何だよ。
「その不細工はそんなに不細工なんですか」
「はい、ものすごく不細工です。たぶん女性100人に聞いたら100人が不細工というと思います」
満場一致かよ! 希望がねえな!
じゃあイケメンでいいじゃん。
心の代弁に答えるかのように
「でも性格が真逆なんです」
ポツリと彼女はこぼした。
「そのイケメンは最低な性格なんですか」
「はい、とても性格が悪いです。暴力を振るったり、浮気をしたり、そういうことを平然とします」
そりゃダメだ。
「その不細工はそんなに性格がいいんですか」
「……はい、たぶん」
たぶん? なんじゃそりゃ。
「俺の友達、というか先輩なんですけど、いつも俺の話を聞いてくれる人がいます。そういった人がいると心が救われるというか、安心できますね。俺はすごく嬉しいです」
「女性ですか?」
「? いえ、男です」
性別はどうでもいいだろう。
「逆に自分の意見をないがしろにしたり、何かを強要したりする人は、一緒にいて嫌ですよね」
「そうなんです」
うんうん、分かる、分かるよ。俺も家電アドバイザーの仕事辞めたいもん。
それから少し話をすると彼女は席を立った。
「今日はありがとうございました。またご一緒させてください。」
え、嫌です。
お礼を言い、女は去っていく。後ろ姿も美人だ。
なんだったんだ? 結局彼女の名前も分からなかったな。




