女の正体
「コーヒーですか?」
「はい」
「アメリカン? ブレンド?」
「アメリカンで」
いや待て待て、今はコーヒーの種類を聞いている場合じゃない。
混乱した俺は考え込む。誰だこいつは、いや、その前になぜ俺が彼女にコーヒーをおごらないといけないんだ。
スキルを発動させても「ホットコーヒーをおごってあげる」としか出ない。ええいこのポンコツめ。
一般的に誰かにコーヒーをおごる状況を考えてみる。
……そうか、彼女に何か恩があるんだ。そうでないと辻褄が合わない。俺がお礼を言い忘れたから、恩返しを期待して対面の席に座ったんだ。ということは、俺は彼女に恩を返すべきなのだ。うん、そうに違いない。
「分かりました」
意を決した俺は立ち上がり、財布から220円を出し、カウンターでアメリカンコーヒーを注文する。
「ホットですか? アイスですか?」
「ホットで」
コーヒーが出てくると俺はスキルを発動させ、砂糖、ミルク、はちみつを入れて彼女に渡し
「その節はお世話になりました」
とりあえず頭を下げておいた。
しかし、彼女の顔には?マークが浮かんでいた。俺の言葉を聞いて不思議そうに首をかしげている。
何だ? 違ったのか?
「今日は財布を拾ってもらったお礼をしようかと思ったんです。以前私が落とした財布を拾ってくれましたよね。ありがとうございました」
彼女の口から出たのはお礼の言葉だった。
ああ、そうなんだ。いつかの財布を拾った人だったんだね。俺は君の顔覚えてないけど、君は俺の顔たとえ上半分だけでも忘れないよね。
ん? んん?
待てよ、そうなると、むしろ俺が貴女にコーヒーをおごってもらうのでは?
なぜお礼を言いに来た君に俺がコーヒーをおごるんだ?
混乱した俺は彼女とコーヒーを交互に見つめる。よく見たら美人だな。やや釣り目だがシャープなあごに、整った顔立ちをしている。黒木メイサ似の美人だ。ただ少し強気かもしれない、彼氏は苦労するだろうな。
彼女は一口飲んだ後、コーヒーを見つめてただじっと座っている。




