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エスカレート

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 夏は暑いが、この屋敷でそんな常識は通用しない。

「ふう、ちょっと汗をかきました。一之瀬さん、背中を流してください」

「嫌です」

 午後三時、いつものようにお茶を飲んでいると、いつものように無茶ぶりがくる。

 我が社のエアコンが最大限の猛威を振るい、屋敷内の温度は二十二度を下回っている、汗などかくはずがない。

 ここで働いて一ヵ月、そろそろ彼女の要求にも慣れてきた。

「水着を着ているから大丈夫よ。一之瀬さんは不思議な能力がありますから、背中を流してもらっても気持ちいいんでしょうね」

 確かに女の水着は前世で見飽きた。

丁重ていちょうにお断りさせていただきます」

 それでも俺は断る。俺の主人は俺自身だ。

 手足と肩のマッサージは何度も断ったのに、結局なんだかんだでやらされていた。背中を流せというお願いも三回目だろうか、絶対にやる気はない。

「ふふふ」

 微笑んでるように見えるが、こうやって笑うときはいつも何か隠している。内心は口裂け女ばりに笑っているに違いない。最近、この人の行動が読めるようになってきた。

 しかし今回こそ断固として首を縦に振らないつもりだ。俺の覚悟をみせてやる。


 プルルッと会社から電話があったのはそのときであった。

「失礼します」

 社会人の鉄則、ワンコールで出る!

「はい、一之瀬です」

「ああ、社長のわたりです」

 しゃ、社長!? 俺の覚悟は崩壊した。

「いま柏原様から命令があったと思うけど、きちんとやってね。しないと解雇、クビね。それじゃ」

 そう言って一方的に電話は切れた。

 スマホを見つめ呆然とする。社長と話したの初めてだよ。

 俺は柏原様に体を向け不本意ながら同意するしかなかった。

「わ、分かりました。お背中お流しします」

「ふふふ、あらいいの? それじゃあお言葉に甘えて」

 ちくしょう……



 俺も用意された水着に着替えて、浴室に入る。

 浴室というか、大浴場と言ったほうがいいだろうか。浴槽は10個以上あり、泡風呂、滝風呂、水風呂、電気風呂、露天風呂など多彩なラインナップが並び、サウナも併設している。

「入るわよ」

 入ってきた彼女に俺は目を奪われてしまった。

 水着は黒のビキニ、紐タイプだ。Cカップほどだろうか、二つの膨らみはビキニに寄せられてきれいな谷間を形成している。本物だ。漆黒の水着と対比的な白い肌も見事だ、まるで雪のように輝いている。メイドと最高級オイルのお手入れの成果だろうか、シミ一つない肌に吸い込まれそうになる。普段はコルセットで締めているので腹部がくびれており、それでいてお尻は突き出ていて、見事な凹凸が妖艶ようえんな雰囲気をまとっていた。多くの女性が憧れるであろうほっそりと細い手足がまた華やかな饗宴を演出している。

 国の至宝を目の前にして、目を離したいのに離せない男の性が恨めしい。俺はぼんやりと全体を見てごまかす。

 しかし

「私の体、どうですか?」

 前かがみになって腕を寄せると、重力に従って二つの山はプルンとその存在を強調する。上目づかいも忘れていない。最高のアングルだ。

「か、からかわないでください」

 俺は彼女の肩を持って後ろに向かせる。柔肌やわはだに触れ、一瞬ドキリとしてしまう。

「あらあら、ふふっ」

 彼女は楽しそうに笑った。



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