欲しいのは
屋敷から追い出された俺は、その後五時間かけてなんとか柏原様の誤解を解き、ご機嫌をとることができた。やっとのことで彼女の家、というか屋敷に入れてもらう。
セバスさんは怪力だったが、きちんと俺の話を聞いてくれ、彼女に伝言を届けてくれた。
「私はあなたの優秀さを見込んだのだから、顔は気にしないわ」
屋敷に入ると、急に開き直られた。
「いやいや、さっきまで騒いでましたよね」
「騒いでいないわ。細かいことは気にしないの、男なんだから」
はい、不細工を排除するなんて細かいことでしたね。
「よく見ればキモカワイイわね」
「さすがに可愛くはないでしょう」
「そうね、キモイだけね」
ひどい。
しかし、このままでは業務に支障をきたすおそれがある。
「やはりマスクをしたほうがよろしいでしょうか?」
「聞こえなかったの? もうあなたの顔を気にしたりはしません。私が欲しいのはあなたの頭脳よ」
頭脳じゃなくてスキルだけどね。
「はあ、私がお役に立てるかどうか分かりませんが」
「それではテストといきましょうか。まずお茶を淹れてくれますか?」
お茶? 家電はどこに行った?
スキルを発動させてお茶を淹れる。
柏原様は一口飲むと、ふふっと笑って
「それでは仕事の話といきましょうか」
そう言った。




