一之瀬GO
「な、な、な」
なんだこのクリーチャーは。
先ほど屋敷に一之瀬隼人が来たとの連絡が入った。うちのメイドが酷く怯えながら報告してきたので、どうしたのか聞いてみると
「あ、あの、一之瀬さんは本当に人間なのでしょうか?」
???
どういう意味だ?
何度聞いても要領を得ない回答をする彼女を置いて、私は自分の目で見に行くことにした。
「おはようございます。こうしてお顔を拝見するのは初めてですね。家電アドバイザーの一之瀬隼人と申します。今日からこちらの家でご相談を承ります。どうぞよろしくお願いします」
しかし、エンカウントしたのはこの屋敷に突如現れた化け物だった。
メイドをもっと信頼すべきだった、彼女は正しかったのだ。
ゴミは掃除しなければ。
「セバスチャン! こいつを追い出しなさい!」
シュバッという音とともに執事服を着た銀髪の40代の男が出てくる。
「どこにいたんだ!?」
モンスターが騒いでいる。
セバスの眉間は深いしわで刻まれ、主人に害なす虫けらを見る目でやつを貫いている。セバスはクリーチャーの腕をつかみ、体を引きずって、排除せんと扉へ向かった。
「いた、ちょ、やめて、痛いです」
モンスターはセバスに腕をつかまれて喚いているものの、全く抵抗できていない。肉体でセバスにかなう人は世界中探してもいませんからね。
「俺は! 一之瀬隼人です! 何度も電話したじゃないですか! 怪しいものではないです!」
馬鹿な、こんな化け物が隼人さんなはずがない。
「よしんばあなたが一之瀬隼人だとしても、それは私の隼人さんではないわ!」
そんな~と情けない鳴き声をあげている間に、ゴミ掃除は終わった。




