吐き出す悩み
「……ということがあったんですよ」
「うんうん、それは災難やったなあ」
この関西弁の男性は、昔働いていた職場の先輩だ。のりさんと呼んでいる。
いつでも俺の相談に乗ってくれて、話や意見を素直に聞いてくれ受け入れてくれる。顔を合わせたことがないが、ただの話し相手として接してくれるのりさんには頭が上がらない。
「基本的に、最初のデートでホテルには誘わんもんやろ? その後輩ちょっと焦りすぎちゃうか?」
「のりさん。そもそもデートではないです」
そこはきちんと訂正する。
「ああ、そうか。ごめんごめん。でもまあ女の子的にはデート気分やったんかもしれへんな。それで功を焦ったともいえそうやけど、その子はイケイケな性格なん?」
……功を焦った? この場合の功って何だ? 金か?
「いえ、どちらかというと控えめで、今回の話も急だったものですから、少し驚いています」
「はあ、そら友達の影響の可能性があるな。誰かが唆したか、あるいはかおるちゃんの相談に適当に答えて、順番ってもんを教えへんかったか、というところやな。ってか何で自分敬語やねん。タメでええってゆうてるやろ」
「いえいえ、のりさんは尊敬する先輩なので」
のりさんを見下す奴は俺が成敗してやる。
さいですか、とつぶやいた後に
「その子が実は君のこと好きって線はないんか。つまりお父さん云々(うんぬん)はあくまで口実や。いっちーを誘い出すダシにすぎん。どうや」
と聞かれた。
これには自信をもって答えられる。
「甘い、甘いですよのりさん。俺の顔はそんなレベルではないです。実際に見たことがないのりさんには分からないかもしれませんが」
「働いてた時は指導も電話越しやったからなあ。自分ホンマにそんな不細工なん?」
「ではのりさん、自分の思う一番不細工な顔を想像してください」
「したで」
「その顔を10回包丁で突き刺してください」
「死んでまうがな!」
「さらにその顔をハンマーで――」
「まだあんの!? もうええ! もうええわ!」
のりさんの息が荒い。ふっ俺の勝ちだ。
「ま、まあ、それやったらマジで美人局の可能性はあったかも。普通お父さんとホテルいかへんし」
「でしょ? 俺は弄ばれるだけの男なんですよ」
ふふっとのりさんが笑う。
「いつかきちんと内面を見てくれる女性が出てくると思うで。僕は好きやで、君のお人好しな性格」
……本当にそんな人がいるんだろうか。




