三日目
僕…主人公、
俺…主人公の友達です。
あしからず。
ぴちゃり、ぴちゃり、と耳元で水音がする。僕は、重たい瞼をゆっくりと開いた。
「――――ん、……ぁ、」
唸るようにして声を出すと視界に僕、否、ドッペルの心配そうな顔が入ってきた。
「起きました? 熱、測りましょうか。起き上がれますか?」
体温計を片手にそう尋ねられる。僕は、頷くと上半身を起き上がらせた。心配そうにドッペルが背中を支えてくれる。
「ありがと……」
体温計を脇に入れてぐらぐらする頭で今の状況を把握するため、いつもの置時計に目を向ける。
「昨日の昼過ぎに帰ってきてから倒れて、寝込んでたんですよ。今は、朝八時です」
「んぅ……喉かわいた」
「あっ、ちょっと待ってて下さいね」
ドッペルがバタバタとキッチンのほうまで歩いていった。ぼうっと壁を見ているとピーッ、と体温計が鳴る。すると、ドッペルがひょいっ、と水を片手に僕の脇から体温計を取った。
「むぅ、まだ八度ありますねえ。もうちょい、寝てて下さい。冷蔵庫の中、何にもなかったから……とりあえず、買い物行って来ますね。財布、もらっていきまーす」
「おっ、ちょっ、待て! ドッペ……ごほっ、ごほっ、」
ドッペルにもらった水を飲んでいた僕は、慌ててドッペルに叫ぶ。しかし、喉に入りかけていた水がどうにかなって、むせてしまった。そんな僕にはお構いなしにドッペルは僕の鞄から財布を抜き取って、ビニール傘を片手に家を出て行った。
「う、そだろ……」
いや、普通にヤバい。僕は、わたわたと慌てた。何が問題だって? だって、ドッペル、僕と同じ顔してんだよ!? もし、外で友達と会って、変なこと喋ってみろ。学校での僕の居場所がなくなるわっっ!!!
しかし……僕は、また襲ってくる睡魔に抵抗できずに居た。
***
「あれ、あいつ、何してんだろ?」
隣に居た友達の声で周りに居た生徒も注目する。
ヤバい、遅刻だ、と集団で走っているとクラスメイトの姿を見た。結構、仲がいい友達である。財布片手に長袖のパーカーにチノパンで彼は、コンビニに入っていった。
「サボリか? この時間でここにいる、ってことはそういうことだろ。つうか、早く行こうぜ。遅刻する!」
他の奴もそいつの言葉に反応して、慌てて駆け出す。しかし、俺は、そのまま、ジッと彼を見つめていた。
「ねえ、早く行こうよ。皆、行っちゃうよ?」
隣で困った顔をした委員長がそう尋ねてくる。俺は、ううん……と唸った後、委員長に手を振った。
「ごめん。委員長。ちょっと、あいつのこと、心配だから行ってくるわ。先生には……なんとなくで誤魔化しといてくれ」
「はぁ!? いいの? 先生にバレたら怒られるどころじゃなくなるかもよ?」
委員長の言葉にウッとなってしまうが、仕方があるまい。彼女いない歴=年齢の俺には友人が大事なのだ。それに、男に二言はない、ってな。
「分かった、じゃあね。あっ、後で連絡ちょうだい。何であそこに彼がいるのかも知りたいから」
俺よりも十センチほど背の低い委員長が手を伸ばして俺にでこピンをくらわして来た。まあ、さして威力はないが。
「はいよー」
適当に返事をしてから、コンビニへと進行方向を変えた。
***
「何か嫌な予感がする……」
そんな時、僕はふと、目を覚ましてぽつり、と布団の中でそんな言葉を呟いたのだった。
……三日目は微妙な感じで中断です。
ごめんなさい、