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20世紀シーン1 若山編
突然の言葉に、少し若山は驚いた。
「いえ、若山さんが、新庄さんとご同居されてこちらで生活をされている事や、君長さんからも色々伺いまして、つまり・・これは新庄タネさんと、君長さんが望んで居られる事です。若山さんに赤穂に戻りたいと言うご存念があれば、無理強いも無い事ですが・・」
若山は、首を縦に振るのだった。赤穂に戻っても、家も土地も無いからだ。それに妹も既にこの世に居ない現在、天涯孤独の身。そこへ戻る気持ちは無かった。本来なら赤紙が自分の所に来る事は無かった筈だが、戦争末期になって来ると召集兵と言う名目で、戦地に駆り出される中に自分は入ったのである。