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20世紀シーン1 若山編
数ヵ月後、季節は初夏・・畑で草取りをしている所に、君長がやって来た。この日は、市場の休みであり、勢い良く伸びて行く雑草の処理に、タネと共に汗を流していたのであった。
「精が出るのうケイ君よ」
若山はケイ君と君長に呼ばれていた。
「ああ、こんにちは。君長さん」
「今日はな、ちょっと話を持って来た」
「話?何でしょうか?」
君長が、後から遅れて来るからと、タネと一緒に草取りを手伝いながら、楽しそうに二人で話して居た。タネが佐賀港に行く回数はこのところ1週間に一度程度で、我が子同様の若山との生活によって、元気になっていると、君長は嬉しそうに話すのだった。タネは出会った時は、80歳にも届きそうな年に見えたが、実際は70歳になったばかり。戦争と、大病と、様々な事が彼女を苦しめていたのである。