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20世紀シーン1 若山編
「いえ・・戦地に比べたら、こんな作業は苦にもなりません」
若山に少し笑顔が戻っていた。君長は、若山に午前8時頃になると遅めの朝食を一緒にとる事が多く、色んな話をしてくれた。君長の甥も戦士し、長崎の原爆で多く知人を失ったと、強い調子で戦争責任者である軍部と、また勝利を決しているのに関わらず、長崎、広島に原爆と言う恐ろしい爆弾を投下した米国に深い憤りをまくしたてた。若山が、殆ど生還者が居ないとされていたニューギニア奥地からの帰還兵だった事も合わせて、自分達の世代が、これからは若い者を育てにゃならんと力説するのだった。
若山は、タネとの生活に、貧しいながらも、三度三度の食事が与えられる事、この日本に戻ってやっと平和な生活が出来る安堵と共に、どんどん彼の寡黙な性分もあるが、周囲に次第に受け入れられて行くのであった。