修行開始!!
お待たせしました
何も無い空間。上も下も純白の霧で覆われた空間でリオ達は目を覚ました。
「あれ…ここ…どこ?」
「さあ…分からね」
「一体…何だったでござるか?」
「最悪の目覚めだね」
「……どこかな?」
それぞれの一言で起き上がる。
改めて周りを見るが何も無い。生物の気配どころか草木一本無い。
「本当に何も無いね」
ライズが頭をかきながら困ったように言う。
「ここが修行場所なのかしら?」
「どうやらそのようでござるな。ライズ殿」
十蔵がライズに注意を込めて言う。
「ああ、気付いてる」
十蔵とライズが何か察知したのを感じた3人も自然と表情に真剣さを帯びさせる。
少しすると、リオ達を円形に囲むように獣の群れが現れた。
漆黒の人間のような形。
頭に一角。手足に狼のような鉤爪。そして翼と尻尾。
見た目から悪魔といって適格であろう。
「レイヴマン、てござるか。中々の化け物か群れで現れるとは」
「悠長に眺めてる暇は無いみたいだね」
一匹のレイヴマンが手を上げ、勢いよく振り下ろす。その瞬間、
『ギオオオオオッ!!!』
一斉にレイヴマンが襲い掛かる。
上、正面、右、左、斜め、後ろから迫る化け物。
「守りの岩壁」
美紀が岩の壁で全方位を囲みレイヴマンの強襲を防ぐ。が、鉤爪を使い壁を削る。
「長く…もたない。あと30秒くらい」
「まずいわね…。皆!壁が崩れる瞬間に一斉に散らばるわよ!あたしは北。ライズは東。十蔵は西。ウェドは南。美紀は、あたし達が離れた瞬間に壁を張り直して体制を立て替えて応戦して!分かった!?」
「了解!!」
「承知した!!」
「オーケイ!!」
「分かった」
そして壁が崩れた瞬間、
それぞれが指示された方角へ飛んだ。
~~~~~~~~~~~
「ふ~ん。結構来ちゃうのね?」
リオの周りには約10体のレイヴマンが爪を構えてリオを睨んでいた。
「これも修行よね。本気、出すわよ!!」
二次解放し体に暴風を纏わせる。
「来なさいよ!バッラバラにしてやるわよ!!」
『ホントウ二ソウナルカシラ?』
「……えっ?」
声の方を向くと、そこには、リオの形をした黒い影が立っていた。
「ああああああたしっ!?嘘!?何あんた気持ち悪!?」
「キモチワルイトハシツレイネ。アタシハアナタ。リオ・ハーマスヨ?アナタノ、カゲ」
「カゲ…?あたしの?」
「ソウ。アナタノカゲ。アナタトマッタクオナジチカラヲモツカゲ。コレガシュギョウヨ。シンディノシジデネ」
「自分自身と戦って越えろってことね。上等よ」
リオはニヤリと笑って改めてカゲに立ち向かう。
「あ。てことはさ、あたし以外の奴等も同じ状況ってわけ?」
「エエ、ミンナジブンノカゲトタタカッテルワヨ」
今の自分を越えろと言うシンディの修行らしい。
「ふーん、じゃあそろそろいくわよ?」
「ドウゾ」
シンディの作り出した異空間で、リオ達の修行が始まった。
~~~~~~~~~~~
「おーいばあさん」
「あら、どうしたの煉?」
眠りから覚めた煉がシンディの部屋に入ってきた。
「リオ達見てねえか?探してんだけど、どこに行ったんだか…」
「さあね~?」
シンディは嘘をついて誤魔化す。そして悪戯っぽく笑い、
「まあ、あと3時間くらいしたら帰ってくるんじゃない?皆一緒に」
シンディから何か察したのか煉が目を細める。
「どうしてそんな数字が出てくんだ?……まさかばあさん、あいつらに何かしたのか?」
「人聞き悪いわねえ。あたしは相談にのってあげただけよ。まったく」
「本当かよ?実際は…」
『ガオオオオオ!!!』
『ギュイイイイ!!!』
『ゴアアアアア!!!』
煉が先を言おうとした瞬間に、複数の獣の咆哮が響き渡る。咆哮を聞いた煉は窓に近づき外を見る。
そこには、複数の頭を持つ蛇の怪物。双頭の龍。
蝙蝠の翼をもつ怪物等の群れが学園の近くまで来ていた。
「おいおい、また魔龍かよ。しかも群れだし、面倒くせえ野郎共だな」
「まずいわねえ。また生徒達を避難させなきゃ。煉、あいつらに校舎の土を踏ませるんじゃないわよ」
シンプルな指示を出してシンディは部屋を出ていった。
「ま、調度いい機会だな。バーストの力、存分に試させてもらうぜ」
煉は窓からダイブして魔龍の群れへと突っ込んだ。
途中、体を回転させてキチンとポーズを決めて着地する。
誰も見ていないが。
適当に数えて約10体。
どれもこの前の魔龍並にでかい。
能力も未知数。一瞬足りとも油断できない状況だが、煉は落ち着いていた。
普段なら身構えているが、普通に立っているだけだ。
それが魔龍達の癪に触り、怒り心頭にしてしまうが、煉はおくさずに一言。
「いちいち怒んなよ。カルシウム足りてねえんじゃねーのか?黒蜥蜴共」
さらに挑発。言葉は分からないだろうが、魔龍達は黒で覆われた顔を赤く怒りで染めた。
牙、爪、尾。それぞれの武器を使い煉に襲い掛かる。全方位から迫る武器は正確に煉をとらえようとしたが、
「あめえよ蜥蜴共」
ドスのきいた声と共に複数の破砕音が響く。
煉は足を振り上げ魔龍の攻撃を全て砕いた。
牙をへし折り、爪を砕き、尾を切断した。
「お~。バースト使わなくても結構行けるなこれ。いい感じだ」
今のたった一度の攻防。
それだけで力の差は歴然だった。
煉から距離をとった魔龍達は口からそれぞれのブレスを放った。
高温の炎。強酸の液。強烈な吹雪。
集中放火のごときブレス。常人なら欠片も残らない攻撃だが、
「少しは頭を使った方だな。でも、威力が足らねえな」
余裕の声が魔龍達の耳に届く。生きてるはずがない。だが聞こえる声。
ブレスを当てた場所には、ドーム状の炎が煉をブレスから守っていた。
「火城郭。強度が上がってんなあ。便利便利。さあて、今度はこっちからいくぜ」
煉は炎を解き、真正面の複数の頭を持つ蛇、ヒュドラの蛇腹に炎を纏った右正拳を打ち込む。
ヒュドラの体は殴り飛ばされ近くの岩壁にめり込む。
続いて双頭の龍、アンヒィスバエナの脇腹に、
「紅蓮乱脚、裂!!」
腰の回転を乗せた回し蹴りをいれる。
「飛!!」
隙を与えずみぞおちに飛び蹴りを叩き込む。
煉の蹴りはアンヒィスバエナの腹部に深く刺さる。
やがて口から大量の息を吐き出してアンヒィスバエナはその場に倒れ込む。
煉を取り囲む魔龍達の表情がみるみる暗くなっていく。体格でも、力でも勝っているはず。だが、目の前の人間が、巨大な龍を素手で倒したのだ。それを見て怯えない者は皆無に等しいだれう。
仕掛けてこない魔龍達にしびれを切らした煉は右腕を水平に伸ばす。
「ちゃっちゃと済まさせてもらうぜ」
すると、右腕に炎がほとばしる。意思を持つかのように、渦を巻きながら、煉の右腕を包み込む。
そして、
「バースト!!」
その一言を放つと同時に、煉の右腕に巻き付いていた炎が、みるみる形を作っていき、
真紅の刃を持つ一振りの刀を出現させる。
「さあて、こいよ蜥蜴共。一匹残らず叩っ斬ってやるからよお!!」
その言葉による勢い、波動で魔龍達を一歩退かせた。ただの言葉だけで。
しかし、魔龍達は退きしたものの、逃げはしない。
目を尖らせ、鋭く煉を睨みつける。そして、魔龍達は驚くべき行動をとる。
一体の魔龍が、他の魔龍を補食したのだ。
ナイフのような牙を相手の首に突き立て喉笛を噛み千切り、血肉、骨全てを食い尽くした。
そしてさらに他の魔龍も同様に補食する。
「何やってんだこいつら?共食いか…?」
理解が出来ない煉は、ただ目の前の光景を見る事しか出来なかった。
やがて、全ての魔龍を食い尽くした一体の魔龍。
爪、牙を血で染めたその顔は恐ろしく不気味であった。
煉がいつでも動けるように構えた瞬間、
突然魔龍の体が激しく隆起する。体内で何かが暴れるように盛り上がり、何かが皮膚を突き破って現れる。
それは、3対の漆黒の翼だった。その他にも、腕の肘から下が裂け、肘から二本の腕を生やした。
首の付け根から元会った首以外に二つの首が生える。体のサイズも増し、もはや原型をとどめていない化物と化した。
『ギュイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!』
耳をつんざくような咆哮が辺りに響き渡る。
煉は咄嗟に耳を塞いだ。
風圧、音圧、衝撃波が煉の体にぶち当たる。
飛ばされそうになるのを何とかこらえる。
「んの野郎…合体するなんて面倒くせえな!!」
煉は魔龍に毒を吐きながら接近する。撹乱するようにステップを踏み、足下をくぐって後ろに回り込む。
そして、尻尾に刀を振り下ろす。刀は何の抵抗も無く魔龍の尻尾を切断する。
宙を舞う巨大な尾。
だが魔龍はまるで堪えてない様子だ。平然とした表情でいた。
その答えはすぐに分かった。
魔龍の切断面から、まるで蜥蜴の再生のように新しい尻尾が生えてきたのだ。
「再生能力か。だったら…」
煉は魔龍の後ろから正面へと移動し、刀を逆手にして左腕に持ちかえる。
そして空いた右腕に炎を集中させる。炎はゆらゆらと燃え、辺りに陽炎を発生させるほどの熱量であった。「木っ端微塵すりゃあ再生は使えねえよな。そらっ!!」
煉は右腕の炎を無数の粒子にして撃ち出す。
炎の粒子は魔龍を全方位から取り囲む。
まるで夜空の星のように光る炎は美しい輝きを放つ。「星炎火爆!」
煉が指を鳴らす。
その瞬間、炎の粒子が一斉に爆発した。
しかもその爆発がまた新たな爆発を呼び、それがまた爆発を呼ぶ。
約1分の爆発が続いた。
「起爆性の炎の粒子で対象を囲み爆発させることで連鎖的に爆発を生む。いわゆる粉塵爆発っつーやつだよ」得意気に説明する煉。
未だ砂煙と粉塵が舞い散り魔龍の姿が見えない魔龍に対して説明しているようだ。
すると、煉が突然説明を止めて魔龍がいた場所を睨む。
途端に響く唸り声。
嫌な予感しかしない状況。
それに応えるように魔龍が翼を羽ばたかせて現れた。6枚の翼を器用に操り、上空から煉を見下ろしていた。
「あれくらって生きてんのかよ………どうしよ?」
考え中の煉に構わずに魔龍が三つの首からブレスを放つ。
火炎、強酸、突風のブレスが一斉に煉へと襲い掛かる。
「なっ!?……おっ……よっ……」
刀を使いブレスを切り裂いたり飛んでかわしたり等煉はこれまで会ったことのない面倒くさい敵に、
「てめえ三つ首の龍とかふざけんなよ!!そんなんは昔の日本の特撮で出演してんだよ!!元祖のキ●グギ●ラさんと監督に謝れ!!」
キレてさらにどこかずれたツッコミを繰り出す。
そんな煉のツッコミを華麗にスルーして容赦無くブレスの雨を浴びせ続ける。
「このままじゃ………あっ」
かわし続けていると、小石に躓いて、盛大にバランスを崩しこける。
そこに降り注ぐブレスの雨。直撃すれば、下手すれば死ぬ。
「やっべ」
回避は間に合わない。
煉にブレスが直撃する瞬間、
そのブレスは、何かによって掻き消された。
正体不明の謎の力を感じた煉は、まず驚きで顔を染める。
「何であいつらが?」
煉が分からないでいる後ろでは、5人の男女がニヤニヤして立っていた。
全員バースト修得したとのことで、
次回は大暴れ