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好き×大好き×好き  作者: 九条 現
プロローグ
6/7

夢との狭間

輝は考えていた。

この状況をどう打破するべきかを。

後ろには何かいる。

振り返って確認するか。

ここから逃げたっていいだろう。

しかし、輝はどちらもしないとみえる。

長い沈黙が続いた。

..................

..................

..................

俺は決心した。

逃げよう。ここから。

ここにいたって、仕方が無い。

............足が動かない。

動け。動け。

動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け!!!!

『動けーーーーーーー!!!!』

俺は心の中で叫ぶ。

暗闇の中、俺は虚空に叫ぶ。

誰に聞いて欲しいわけでもない。

ただ、自分に言い聞かせる。

しかし、俺の足は動いてはくれない。

背中にはまだ、冷たい感覚が残っている。

動け。俺の足。

切り捨ててやろうか、とも思う。

なにに恐れている、新羅輝!!

お前には恐れるものはないだろう。

お前は打ち勝った。孤独に打ち勝ったのだぞ。

それなのに、まだ恐れることがあるのか!!

俺は............

足が一歩動いた。

そして、また一歩。さらに一歩。足が動き出したのだ。

よし、もうここにはいなくていいんだ。

風が吹き、植物たちが歓喜の踊りを踊り出す。

よかった。俺は、あの恐怖から逃げられたんだ。

輝は家の前までくることができた。

これも意思の強さの現れなのだろうか。

家に入ると、さっきまでの背中にあった寒さは、嘘のようになくなっていた。

俺はホッ、と一息ついた。

あんなにまで追い詰められるなんて、思ってなかった。

むしろ、また同じことが起きるかもしれないという、恐怖も少しあった。

しかし、今は気にしないでおこう。

だが、本当に俺だけなのだろうか?

高崎や小春にもなんとなく聞いてみることにしよう。

直接聞くのも野暮だしな。

そんなことを考えつつ、ウトウトしていた輝は居間で寝てしまった。

翌日、彼はいつも通りの日常を過ごしていた。

昨日の恐怖が嘘のように......

「なあ、小春。」

「なぁに?あっちゃん。」

「なんかさ、俺最近冷え性になったみたいで、背中当たりとかよく寒くなるんだけど、小春は大丈夫か?」

「うん。なんともないよ?あっちゃんが冷え性?なんだか、めずらしいね。あんまり、風邪とか引かないから。」

「んー、まあそうだな。」

「こないだ倒れてから、本調子に戻ってないんじゃない?」

「そうかもしれねぇ。休んではいるんだけどな。」

「そっか。じゃあ......」

「ん?」

『夜道の背後は気をつけてね。』

「............え?」

「なに?夜は寒いでしょ。気をつけなきゃ。」

「おっ......おう。」

一瞬、小春の目が生気を帯びていなかったような......

マンガでいうと病んでいるような目だったが......

気のせいだろうか。

今は笑顔でいるし。気にすることはないだろう。

その夜......

特に変わったことはなかった。

外はすこし風が強く吹いている程度だ。

いつもと変わらない、ごく平凡な日常の風景だ。

テレビをみて笑って、風呂でくつろいだり、勉強をしたり......

しかし、そんな日常も忽然と恐怖に変わることもある。

ピンポーン

インターホンが鳴った。

時間は7時を少し過ぎたあたりだった。

ドアの穴から外を見ると、小春が立っていた。

こんな時間になんの用が......

と思いつつドアを開けようとしたが、俺は開けられなかった。

というより、開けられない。開けてはいけない。

今、小春は手になにを持っていた............

............包丁だ。

しかも、刃渡りが少し長いものだ。

なぜ、あんなものを?

料理の途中で来たのかもしれないな。

......そんな悠長な考えは通じない。

当たり前だ。

そんな料理の途中だからと言って、包丁は持ってこない。

なら、料理をしに来たのだろう。

......うちにだって包丁はある。

あぁ、うちのは使いにくいのか。

だからか。

......俺は毎日包丁を研いでいるぞ。

なぜだ。

なぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだ。

俺が何をした。

昨日に続き、今度は小春にも......

ピンポーン

インターホンがまた鳴った。

コンコン

ドアも叩かれる。

ピンポーンピンポーン

コンコンコンコン

ピンポーンピンポーン

コンコンコンコンコンコン

ピンポーンピンポーンピンポーン

ドンドンドンドン

ピンポーンピンポーンピンポーン

ドンドンドンドンドンドン!!!!

ドアの向こうで何者かが暴れている。

小春が......狂っている。

ピンポーン

インターホンは鳴り続ける。

ドンドンドンドン

ドアも叩かれ続ける。

俺は何もしてない。

何も......何もしていない!!

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

俺は飛び起きた。

額からは汗が滝のように流れてくる。

どうやら夢だったようだ。

俺は立ち上がり、風呂場へ向かった。

風呂から上がり、さっぱりしたが、先ほどの夢が気になった。

何故、小春が......

まさか、あの背中に感じる寒さは小春......なのか?

しかし、小春にしてもなぜそんなことを?

小春ではない。

しかし、確証があるわけではない。

幼馴染を疑うなんてどうかしてるだろう。

しかし、あんな夢を見てしまってはどうもできない。

ふと携帯を見るとメールが来ていた。

高崎からのようだ。

どうやら、おやじさんがまた話をしたいらしい。

この前の件についてだろうか?

しかし、何の用だろうか?

ピンポーン

インターホンが鳴った。

俺はビクッ、としたが

輝さーん、宅急便でーす

と声が聞こえたので安心した。

両親からのようだ。

また異国の食品など入れているのだろう。

荷物を開けると、そこにはいつもの景色が待っていた。

異国の缶詰の詰め合わせだった。

どれもうまそうだからいいのだが。

今、両親はスペインにいるようだ。

先月はオランダにいたようだ。

そう手紙に綴られていた。

仕事は順調のようで、早ければ11月に一度日本に帰ってこれるようだ。

両親がなんの仕事をしているかはよく知らない。

というより、あまり興味がない。

そんなことを言っては失礼だと思うが。

......眠くなってきた。

今度はいい夢をみよう......

俺はそのままソファで横になり、目を閉じた............


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