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好き×大好き×好き  作者: 九条 現
プロローグ
4/7

背後にある恐怖

支度が終わった俺は、朝食も取らずに学校へ向かった。

やはり、体調が悪い。やはり、学校へ行かず休むべきなのか。

否、断じてそんなことはありえない。

「だって......俺は......」

と言葉をいいかけ、俺は道端に倒れた。

そういえば、小春と学校に行くんじゃなかったっけ。

なんだ......遠くから小春の声が聞こえる......

大丈夫だ......待ってろ......

......俺は気を失った............

物音が耳に触り、俺は永い暗闇の中から目を覚ました。

目を開けると、小春が俺の横で椅子に座りながらウトウトと寝ていた。

「寝顔......可愛いな......」

俺は小春の顔をじっと見ていた。

すると、視線に気付いたのかただただ起きただけなのか、小春が目を覚ました。

眠い目を擦りつつ、俺が起きたことを知り、

「あっちゃん......あっちゃーん!!」

と、飛びついてきた。

俺はそれを受け止め、軽く抱きしめてやった。

「もう......起きないかと思った......声かけても全然反応ないし......」

小春は少し涙目だった。

「ごめんな、心配かけて。」

「本当だよっ!もう、あっちゃんのバカっ!」

と、嬉し泣きしながら小春はそっぽを向いてしまった。

随分、可愛らしくなったな。そんなこと思いつつ、俺はクスリと笑った。

すると、小春は立ち上がり

「じゃあ、先生呼んで来るから待っててね。」

「おう。」

そういって、彼女は部屋を出て行った。

いままで、寝てた奴がいうことではないが、保健室のベッドは少しかたいな。

よく、こんなとこで長時間寝てたな。

時計を見ると夕方の五時を少しすぎたところだった。

外は夕陽が沈みかけていて、オレンジとブラックがコントラストとなり、美しい風景を煌めかせていた。

小春が先生を呼んできたようだ。

廊下から声がする。

ガラガラ、と戸が開き小春と共に養護教諭が入ってきた。

「輝くん、大丈夫?頭を打ってたみたいだけど、痛まない?」

「はっ、はい。大丈夫です。すいません迷惑をかけてしまって。」

「いいのよ。私の仕事なんだから。それにしても、どうしたの?道端でいきなり倒れるなんて。少し疲れてるんじゃないかしら?」

「そうかもしれません。帰って休むことにします。」

「そうね。明日からは休みだし、ゆっくりしなさいね。」

「はい。ありがとうございました。」

「いいえ。お大事にね。」

保健室を出て、下駄箱へ向かう。

小春がちょこちょことついてくる。

なんだ......この寒い感じは......

小春は隣にいる。しかし、俺の背中にぴったりとなにかが張り付いているような......

後ろをバッ、と振り返るがそこには誰もいない。

小春にどうしたの、と聞かれたがなんでもないと答えた。

なんなんだ......夢と同じ感覚じゃないか......

帰り道、俺は何かを忘れていた。

「あっ。」

高崎に呼ばれていたではないか。急いで電話をした。

「高崎か!今、どこだ?」

「家だよ。」

「悪い。今日の用事、忘れちまって。」

「いいって。倒れたんだろ?父さんも明日でも大丈夫だって。今日はゆっくり休みなさい、だとさ。」

「本当にすまない。おやじさんには、本当に申し訳なかった、と伝えておいてくれ。」

「オッケー。じゃ、お大事にな。」

「ああ、また明日。」

といって、電話を切った。

今日はやけに風が強い。朝はそんなんでもなかったのに......

次の日、俺は高崎の家にいた。

「昨日は大丈夫だったかね?」

「はい、お陰様で今日は快調です。本当にすいませんでした。」

「いやいや、気にせんでええ。儂も鬼ではない。無理はさせんとよ。」

この人は、高崎の父、高崎玄寺郎(たかさき げんじろう)

国内と国外に百数社ある企業のお偉いさんだ。

おやじさんとは、高崎と同じ位の付き合いである。

優しく接してくれるため、俺はおやじさんに高崎と同じ位感謝している。

「それで、おやじさん。何の用事ですか?」

「あぁ、そうだったな。時に輝くん。君は、執事の仕事に興味はないかね?」

「執事......ですか?」

「うむ。うちの執事が足りなくてのぅ。君に頼みたいのだよ。給料もだす。どうかね?」

「しかし、おやじさん。俺なんかがいいんですかね。」

「君だから頼みたいことなんだよ。息子とは仲が良いだろう?いいじゃないか。少し仕事が大変かもしれんが、どうだい?」

「おやじさんがそうおっしゃるのなら......」

「そうかそうか、ありがとう。恩に着るよ。」

「感謝してるのは、こっちの方ですよ。それくらいの恩返しはしないと俺も嫌ですから。」

「はっは。それじゃあ、来週からでもいいかな?」

「はい、大丈夫です。よろしくお願いします。」

「うむ。よろしく頼むよ。本当にありがとう、輝くん。」

俺はおやじさんに挨拶をして、高崎の家を後にした。

自宅までの帰り道、俺は学校の時と同じ感覚に見舞われた。

後ろになにかいる......

しかし、振り返るのが怖い。

勇気を振り絞り、

「だっ、誰かいるのか......?」

当たり前だが、返事はかえってこない。

俺は足早と家路へと着いた。


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