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[六]

大学内のカフェテラス


私はアイスカフェオレを飲みながら

ひとり

地図を広げて

明日写真撮影に行く予定地までの

ルートを確認していた


あと二週間で夏休み・・・・・

カフェテラスはその話題で

穏やかにざわめいている



こんな感じかな??

だいたいのルートの確認ができて・・・・


『なにやってるの?』

ふいに

沙織の声がして顔を上げる

沙織は隣の席に座り込むと

地図をまじまじとみつめて・・・・・

『夏休みどっか旅行でもするの?』

聞いてきた

『あ!これは明日撮影に行くところのルートチェック』

沙織が目を丸くする

『明日って!・・次の日講義ないの???』

『んー・・・午後から講義だから夜通し走って・・・日帰りね・・・』



どうしても・・・・

朝日のあがる前の

一瞬の夜の景色を撮りたくて・・・・


どこまでも広がる・・・


草原の地平線・・・・


蒼い空・・・・

高くに追いやられた


白く光る下限の月・・・・


地上から

空へと

ゆっくりと

伸び上がるように

染め上げられていく・・・・


薄赤紫色の日の光・・・・・・


キーンと静けさの張り詰めた

そんな景色が撮りたくて・・・・・



『だいたい・・・・ここから・・・片道350kmあるから・・

往復15・6時間・・・それと・・・撮影で2時間としても・・

十分帰ってこられるわ☆』

そう応えると・・・・

『私も一緒に行ってもいい??行きたい!!!!』

沙織が瞳を輝かせていた

『いいわよ☆』

『じゃあ!明日ちょっと用事があるから・・それ済ませてから

だから・・・駅に6時でどう?』

『OK!迎えに行くわ』

沙織は嬉しそうに微笑んだ



次の日の夕方6時・・・・

駅に着くと・・・・・


『じゃあ!行こうか!』

声をかけて来たのは・・・・

海だった・・・・


『ん?』


思考が止まる・・・・


『・・・・???????!』


動き出す・・・・


『・・・!なんであんたがいるの???』


海は笑いながら

『沙織から昨日、菜生が明日撮影行くから一緒について行ってくれって

メールが来たぞ』


・・・・沙織!!!!!・・・・・


『でっ!沙織は?!』

私の携帯が鳴る・・・・


なんとなく嫌な予感・・・・


『あ!菜生??』


甘ったれたような声・・・

こういうときは・・・・


『ごめん!やっぱり今日いけなくなった☆』


やっぱり・・・・。


『っていうか、どうして海が・・・』


私の言葉を聞かずに

『ま!許して☆じゃ!』


切りやがった・・・・!!!!!


すぐかけなおすと

『この電話は電波の届かない場所にあるか・・』

沙織の代わりにお決まりの文句が

丁寧に私の気持ちに応えてくれた・・・


あ〜!!沙織!!!

今度会ったら!!!!

と、

ひとり心の中で葛藤を続けていると・・・


『じゃあ!行こうか!』

海がもう勝手に助手席に乗っていた

『何で乗ってるのよッ!』

『んー・・・俺も写真撮るのにカメラ持ってきたし、

沙織にも頼まれたし・・・それに・・』

ニカッと海は笑う


『菜生もいることだしな!』


・・・だめだ・・・

なに言ってもたぶん通じない・・・・。


私は

『またヘンなことしないって約束して!もしヘンなことしたら・・・』

『したら・・・??』

『このハンドルすぐに思いっきりその場で2回転させるからねッ!』

海は笑いながら

『わかったから行こうぜ!』

そう言うので

私はやっとアクセルを踏むことにした。。。




夜のドライブ・・・


夜風が気持ちよくて

街の明かりと車のライトが

いつもと違う

街の姿を浮き上がらせる・・・・


きらびやかで

にぎやかで・・・・


にぎやか過ぎて・・・・


夜の寂しさを際立たせる。。。。。


一人で走っていると

その寂しさが時折

心地よく感じることがある。。。。。


でも・・・今日は隣に・・・


招かれざる客・・・海がいる


『もしかして不機嫌???』

海がちらちらとこっちを見ているのがわかる


『別に』

『そうか!ならいい!』


うん!と言いたい・・・

言いたいけど・・・・


沙織が言ってた

海はいい奴!

その気持ちはわかるんだけど・・・

どうしても素直になれない。。。

どうしてだろう・・・?


『俺・・・ひとりで車とかバイク飛ばすの好きなんだ』

ふと

海の声が耳に入ってきた



『ひとりで走ってるとさ。ふだん人間っていかに視野が

狭いんだろうって思うときがある。。。。』



私はただ耳を傾ける。。。。。。


『フロントガラスの向こうの・・空とか、自然とか、

街並みとかが、バーンと大きく目に入ってくるだろ?

目の前のものが大きくさ』


『あの感覚が好きなんだよな・・・』








『すべてが。。。。。広がっていく感じがするんだよ!』







海は前を真っ直ぐ見据えたまま・・・・・・




『普段ほんのちょっとものしか見えてないのにさ』




そのまま・・・・・・




『車とかバイク運転してるといきなり世界が広がる

感じがして・・・て変か?』





私は海を見ずに・・・・・・




『私もなんとなくその感覚わかるよ』




そのまま・・・・・・




『特に夜から朝に移り変わるときにより感じるね・・・・』










    『・・・・・パッて世界が開ける感じがするッ!・・・・』









私は初めて・・・素直に海に笑顔を返していた・・・・




[七]へ続く

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