[五]
次の日・・・・
途中で帰ってしまった私を心配して
沙織が家にきてくれた・・・・・
『なんかここ来るの久しぶりだわぁ〜』
沙織は部屋をきょろきょろと見渡すと・・
机の上に置いてあった写真立てを手に取り・・・
『やっぱり・・陸のことほんと好きなんだね・・・』
そう呟いた
私は応えずに入れたばかりのハーブティーを口に含む
『でも・・・』
沙織が
『海も素敵な人だと思うけどね・・・』
私の顔を覗き込みながらそう言った
『そうは思うなら、沙織が付き合えばいいじゃない?』
私がそう返すと
『そうしたいけど・・・・菜生じゃないとだめなんだって』
思いもかけず真剣な沙織の表情に・・・
わたしはドキリとした。。
『沙織・・・もしかして・・・好きなの?』
沙織がやっとティーカップに手を伸ばすと・・
『いや・・ちょと気になるくらい・・あいつ見かけいいから・・』
一口飲むと・・
『あ!!性格もめちゃくちゃいいのよ!』
そう付け加える。。。
『どうしたの?』
わたしは沙織に聞いた
あのね・・・
沙織は語り始めた・・
わたしと海は同じ学部で・・・
講義も似たようなのばっかりとってるから
それで仲良くなったの
あいつあんな感じだから
派手そうで
モテそうで
軽そうじゃない?
『軽そうじゃなくて、軽いッ!』
私がすかさずそういうと・・
沙織は微笑みながら
『私も思った!・・・ていうか思ってた・・』
でも・・違ったんだよね・・・
ナンパなんか一つもしないし
まぁ・・・女の子には誰にでも優しいんだけど・・
すごく紳士的でさ・・・
だから!
菜生にいきなりキスしたって聞いて
実はすっごい驚いた!!!
『私はあいつが紳士的だってことのほうが驚くけど・・・』
私はそんなことを言うとハーブティーを口に含む
海さ・・・
たまたま私が大学のコンピュータールームで
菜生のHP見てたら・・・・
何見てるんだよ?って声かけてきたのね
『友達のサイト見てるの』
って返事したら。。
見せろ!って・・・
それで・・・
一通りサイト見終わったら
その後ね
顔上げて・・・・
『なんか・・こいつ・・ずっと泣いてる感じするよな・・・』
って言ってね・・・
『すげぇ・・こいつの顔、クシャクシャになるくらい笑わせてやりたい!
こいつがそんな風に笑ったら、すげえ嬉しくなると思う!』
って言った後・・・・
『俺が!』
って!にかっって笑うのよ!
その笑顔見たら・・・なんかいいなって思った。。。。
沙織が私に視線を合わせた・・・穏やかな瞳・・・
『そうか!沙織がんばれ!!!』
私がそういうと・・
『がんばったてだめよ!』
沙織は微笑みながら
『がんばったて、人の心を変えることなんてできないわ』
穏やかな瞳のまま・・
『心は誰のものでもない。。その人だけのものだもの。。。』
私の瞳を・・・
『私の心は誰も変えることはできないし、海の心だって誰も変えることはできない』
見つめたまま・・・
『だから、がんばらないよ〜!』
『わたしは私のまま好きでいるわ☆』
沙織はふんわりと微笑んだ
『だから!私に悪いなんて!思わないこと!!!』
沙織は立ち上がると
机においてある
陸の・・・
陸の笑顔の写真を手に取り
『ほんとは・・・陸のこともう忘れてほしくて・・・・コンパに誘ったりしてたの。。。』
眺めると
『菜生の作るものが寂しくてさ・・・悲しくてさ・・見てられなかったんだ・・』
しっかりと見つめ・・・
『できれば。。。海とうまくいってほしいって今も思ってる・・・』
陸にも微笑みかける・・・・
『でもさ・・』
陸の写真を私に手渡すと・・
『この間の菜生みたら・・・なんだか幸せそうで・・嬉しかった・・!』
・・・・・・ 沙織の抜けるような笑顔 ・・・・・・
写真の中の笑顔の陸と私は目が合う・・
わたしは
この。。。。
微笑まずにはいられない
笑顔が・・・
たまらなく好きなんだ。。。。。。。
『心は菜生のものなんだから!誰にも遠慮なく!陸のこと想いなね!』
私は頷くと
『それと!もし・・・海が私のこと好きになったら遠慮なくかっさらうから・・・・そういうことで☆』
『了解☆』
私が陸から顔を上げると
沙織は穏やかな瞳のままで・・
静かに入ってくる風が
気持ちがよくて・・・
『あ!でも・・・よく考えると・・・私!菜生が好きな海のことが好きなのかもしれない!だから!海に嫌われないようにね!』
沙織のそんな言葉に・・
『なんだそりゃ☆』
『んー・・・言った本人もよくわかりませ〜ん・・・』
おどけた沙織の様子に・・・・
笑いながら涙がなんだか溢れそうになっていた・・。
[六]へ続く