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[三]

ずっと・・・

何度も夢を見ながら・・・

わたしは

考えていた・・・


陸がくれる

この贈り物のお返しが

わたしには出来ないのかな・・・って。。。


わたしには

何が

出来るんだろう・・・・



陸が本当に

見せてくれている

夢かどうかは

わからないけれど・・・・


そう信じていたかった・・・


陸がわたしに

夢を見せてくれているって

信じたかった・・・・


ただ・・・・


信じていたかった。。。。。


わたしはこの夢を

ひとつ残らず

取っておきたくて・・・・


詩や小説を書き出し・・・

夢の中で見た情景に近い場所を

探して

写真を撮る・・・

そんなことを始めていた・・・


それを

ホームページを作って

公開して・・・・


なんとなく・・・・・


陸が見せてくれている

夢のことを

一人でも多くの人に

知ってもらいたかった


本当は・・・


陸の代わりに映画監督になって・・・

この夢たちをたくさんの人に

見せてあげれればいいのだけれど・・・・

そう簡単にはなれないから・・・・


でも・・・


それでも

わたしは

なんだか少しだけ

陸のために

何かが出来ることが

嬉しくて

嬉しくて

たまらなかった。。。。


わたしは近くの大学に何とか合格すると・・・


車で写真を撮りに一人旅に出かけたり

詩や小説を書いたり

夢を形にすることに夢中になっていた。。。。


そんな日々の中・・・

大学内の広場に

あの丘の上の桜の木のような

木陰のある場所があって・・・

わたしは

そこでよく

書き物をしてるんだけど・・・


『菜生〜♪』

聞き覚えのある声・・・

『無理よ』

わたしは顔を上げず応える

『えぇぇ・・・・・・・!』

甘えるようなこの声・・・幼馴染の沙織だ


沙織とは小中高・・・大学まで一緒で

何も言わなくてもわかりあえる不思議な存在

いい子なんだけど・・・

ひとつだけ困っていることがある・・・


『まだ何も言ってないじゃない〜』

『言わなくてもわかる・・・無理よ』

わたしがさらりと答えると・・

『今度の土曜日だけ・・お願い!一生のお願い!』

そう言うと沙織はわたしを拝み始める・・


一生のお願い・・・

この間もそんなこと言ってたような・・・?

一生のお願いっていっぱいあるんだな・・・

と思いつつ・・・


『あんたが来れば来るって言ってる奴がいるのよ!!!お願いきてよ!!!』

やっぱり・・・

コンパの誘いか・・・

『・・んー・・・・・』

なんて返事をしようか考えていると・・・


『わぁ・・・・・!これ綺麗!!!』

わたしの写真を手に取り

沙織は隣に座り込んだ

『すごいよね〜菜生は才能あるわ〜』

にこにこしながら写真を眺めている

『ありがとう』

『詩とか小説もよくあんなにいろいろ浮かぶよね!天才だわ〜』

普通の人がいうとに

汚らしく聞こえることもある言葉・・・・

沙織が言うとすべてが

美しく聞こえる・・・

沙織の良いところ

まっすぐな心・・・・


『・・あのね・・・』

なんとなく話してみたくて・・・

沙織に夢のことを

わたしは話し始めた・・・


ただ静かに聞く沙織・・・


次第に・・・

瞳が・・・・・・・

輝きだして・・・・・・・


『そこに行こう!連れてって!!!』

ニコニコしながらわたしに沙織は言った

『でも・・午後講義まだあるし・・・』

わたしがそう言うと・・・

『もう!今日はわたし!講義なんてきいてられないよ〜!!早く行こう!!!』

わたしの話など聞いていない

『すっごい!楽しみ!!!!』


沙織の中ではあの丘に行くことがすでに決定しているようで・・・

わたしは沙織の気持ちに引きずられながら・・

あの桜の木の丘に向かっていた。。。


丘へ向かう階段を上りながら・・


『その場所で陸と菜生が夢を見れたんなら・・・わたしにも見れる可能性はあるわよね!』

『でも・・・あの場所のせいなのかわからないし・・・』

沙織が足早に階段を上っていく・・

『見れなくてもいいわよ!そしたら・・・』

振り返り・・・・

『菜生の夢は陸が見せてくれてるって証明になるでしょ???』

軽やかに微笑む・・・


丘の頂上・・・

一人ぼっちの桜が

静かに

静かに

揺れる場所・・・・


わたしと沙織は・・・・


仰向けになって・・・・


寝転がると・・・・


沙織だけが目を閉じる・・・・


『何にも浮かばないわね・・・』

しばらくして沙織が声をかけてきた


『そう?』

わたしは空をぼんやりと眺めていた


『何にも浮かばない!』

沙織が目を開けてわたしを見た

『やっぱり・・見れないのかな・・??』

沙織がわたしに問いかける


ここで見る夢は・・・

普通に見る夢とは

あきらかにちがくて


そのすべてに・・・・


圧倒的な色彩感を感じて・・・・


ひとつのシーンの中の色彩は

いくつもの色の粒子が

折り重なって・・・

一枚の薄いベールになって・・・


それが幾重にも

重なり合って・・・出来ている

そんな気がして・・


赤とか黒とか・・・

そんな決められた名前で

表現したくはないし

表現できない・・・・


そんな色合いの夢だったから・・・・


できることなら

沙織にも見せてあげたかった。。。。。


『ちょっと待ってて・・・』

わたしは目を閉じてみる・・・・


静かに

静かに・・・


夢が来るのを

じっと

待つ・・・・・・


風が静かに頬をなでる・・・


そして・・・・・・・





・・・・・・・・緑深い大樹の中にわたしは抱かれていた・・・・・・・・


水田を一望する丘の上の大樹・・・・

どこからか祭りばやしが聞こえてくる・・

その枝葉の中に少年と少女がいる・・・・


透明な空に・・・生き生きとした木樹・・・


『もう。。この村には来ないかもしれないって・・父ちゃんが言ってた・・』

少年がポツリと呟いた


少女が声もなく泣き出す

拭っても

拭っても

拭いきれない涙・・・・


少年は少女をただ見つめていた・・・


少女から視線を

木々の隙間から見える

空にうつす・・・・


『でも!心配すんな!また戻ってくるから!!!』

涙がこぼれないように

思い切り

空を見上げて・・・・


『いっぱい働いて帰ってくるから!心配すんな!!』


空を見上げて・・・・・・・


『だから!泣くな!!!もう逢えないわけじゃないんだから!』


少女に視線を戻す・・・・


『・・・な!・・・・・・』


にかっと・・・泣いているのを隠し切れない笑顔で・・・


少女がこくりと頷く。。


『悲しいのは・・もう逢えないと思うから悲しいんだ・・・』





『また逢えるんだから・・悲しむのはもう止めような・・・!』






少年の瞳からポロリと涙がこぼれた・・・・


風が水田を渡り

木々を渡り・・・・


二人の涙を拭っていく・・・


少女は頷くと・・・


少年の涙に

そっと

くちづけた・・・・






目を静かに開けると・・・・


『見てきたんだね!!!』

満面の笑みの沙織がいて・・

わたしは身体を起こしながら頷くと・・・

『菜生!すごく!幸せそうだったよ!!!』

薄紫色の大空を背に

『なんかすごく今!いい顔してる!!!』

沙織が微笑んで・・・

微笑みながら・・・・・


『陸がこの夢・・・きっと見せてくれたんだよね!!!』



そう言った・・・



沙織は力強く

空を見上げると・・・・


『おーい!陸!!同じ幼馴染の私に見せないなんて不公平じゃないですか〜?』

わたしはその言い方が・・・


おかしくて

おかしくて・・・・・


でも・・・


ほんのり嬉しくて・・・・


涙がじんわりと溢れてた。。。。


『あ!それと!菜生コンパ行くけど!浮気じゃないからね〜!』


沙織がこっちを見てにっかと笑った



[四]へ続く

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