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[二]

あんな感覚の

夢が

どうして見えたのか・・

私には

わからない。。。。


でも・・・・


あれ以来

私は悲しくなると

静かに

目を閉じるようになった。。。


目を閉じ・・・・


夢が来るのを待つ・・・・




季節が春から夏に移り変わり・・・


ちょっと遅い昼ごはんを食べていると・・

『そういえば・・・陸くん初盆ね・・』

母のそんな言葉がふと耳に入ってきた

私は・・・母の言葉の軽さが気になって・・・


『ごちそうさまでした!ちょっといってくるわ☆』

そう言いながら立ち上がる。。。。

『どこへ行くの??』

『ちょっと昼寝してくるわ』

『ちょっと菜生。。。もう来年は受験なんだから・・少しは・・・』

母の声・・

聞こえないふりをして・・・・

自転車に乗り込む・・・・

『ちょっと菜生・・・』

母が玄関先まで私を追ってきた・・・

私はペダルを力いっぱいこぎだす


青い空に・・・

どこか懐かしい感じのする雲が浮かんでいる


風は少しだけ心地よくて・・・


夢を見ながら

ふと

思う・・・・

こんな風に

毎日過ごしていてはいけないって・・・


わかってる・・・・


でも・・・・・


公園の入り口の細い外灯に自転車の鍵をつなぐと・・・・


樹と土の香る階段を駆け上り・・・

丘の上・・・


桜の樹の木陰に寝そべる


セミの声・・・・

草の匂い・・・・


優しく両腕を抱きしめ・・・

目を閉じる・・・・


こうすると・・・・


陸にふんわりと抱きしめられているような感覚・・・



実際は

陸とは一度も

キスも・・・

抱きしめあうこともなかった・・


あの頃は

あやふやに好きだった・・・・


そして・・・

姿を目にすることがなくなって・・・


陸を・・・


わたしは

しっかりと

好きなことに

気づいた・・・・・・・



ここで夢を

自分を抱きしめながら見ると・・・・

陸と一緒に

時を過ごしている錯覚がおきて・・・

それだけで・・・

幸せだった。。。。。。



でも・・・・・


悲しみは

まるで

波のよう・・・・・・



引いても・・・・

また

ひたひたと寄せてくる・・・・・


今の私にとって・・・・


陸の死というより・・

陸を感じることができなくなる

自分が怖くて・・・・

そんな日が

確かに

やってくるのではないかと

思うことが

悲しくて・・・・・・



私にとって

陸の死は

別れではなかった・・・


だって

目を閉じれば・・・

ほら・・・・


また・・・・・



頬をつたう涙を拭うように・・・

風が動く・・・・


そして・・・・・


目の前に・・・・・



・・・・・薄墨色の空と海と・・白い石の家々に明りが灯る・・・・・・


イタリアのシチリア・・・なのだろうか・・・・


丘の上から星が輝きだした空と

白い家々からのぞく灯を


男と女が寄り添いながら眺めている・・・・


『・・・明日が・・来なければいいのに・・・』

女が願うように言った

『・・・・・・・・・』

男は無言のまま女の言葉に耳を傾ける・・・

『・・・・今日は街の灯があかるいね・・・』

『・・きっと・・・みんな・・明日が来るのが怖いんだわ・・・』

女が男に向き直り・・激しく・・・

『・・・ね・・今なら・・・間に合うわ・・・!一緒に行きましょう・・!』

男は何も言わず首をふる・・・・

女の瞳から涙が溢れる・・・

声が溢れる・・・・

それを

すべて

抱きとめるように・・・・

胸の中へ男は女を抱き寄せる・・・・・

やっと・・・男は・・口を開く・・・・


『この戦いが終わったら・・・僕はまた帰ってくるよ・・・・』

囁くように・・・

『・・僕の帰る場所は・・・・』

強く抱きしめながら・・・・

『・・ここしかないんだ・・・・』



『・・・・君のそばしかないんだよ・・・・』





女がしがみつく

男にしがみつき激しく泣き続ける・・・

男は女の髪を・・優しくなでる・・・・

息をひとつ呑むと。。。。

『でも・・・もし僕が・・・戻らなかったら・・・』




『誰かのそばで・・生きてくれ・・・』


女の泣き声がやむ・・・・



『・・・君が幸せになれる場所で・・・生きてくれ・・』



女のしがみついていた指が緩む・・



『・・・君の幸せが・・・僕の幸せだから・・・・』





女が顔を上げる・・・・

そして・・・

『・・・・それは・・私が・・・考えることよ・・』

瞳を見つめ・・・

『・・・あなたは考える必要は・・・ないわ・・』

ゆっくりと・・・・・

『あなたが・・・どんな結論を・・だしても・・・』

ゆっくりと・・

『私は変わらない・・・・』


そして・・・・・


『・・・・私の帰る場所は・・・・・』


微笑む・・・・・・











     『・・・・・あなたの隣しかないから・・・・・』










涙が一粒・・・頬をつたう・・・・


二人静かに・・・唇が重なる・・・・・




わたしは

静かに目を開くと・・・・

夕暮れの空・・・・


陸の姿は見えないけれど・・・・

確かにいたんだよね・・・



・・・ここに・・・いたんだよね・・・・


陸とまた時を過ごせたと思うと・・

わたしは

ただ

嬉しくなる・・・・・・


陸がそばにいると

感じるだけで

嬉しくなる・・・・・・


また・・・・

逢いに来るから・・・

一緒に

見ようね・・・・


いっぱい夢

見ようね・・・・・


少しだけ心地よく吹く

夏風を感じながら・・・

しばらく・・・

夕暮れに染まるこの街の灯の

一つ一つを

眺めていた・・・・・


[三]へ続く・・・


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