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[十三]

その日の夜・・・・



私は

ただ・・・


真っ暗な部屋の中・・・

転がっていた・・・・


何も

考えず・・・


考えられず・・・


ただ・・・・


真っ暗な部屋の中に

僅かな光と音が・・・・


携帯がなってる・・・・


私は携帯を無視した・・・・


そのうち切れるだろう・・・・


でも・・・・


延々に鳴り止まず・・・


携帯の着信音がリフレインしている。。。。


私はゆっくりと・・・身体を起こすと・・・


机の上の・・・携帯電話に・・・手を伸ばす・・・


机の上・・・陸の写真・・・


笑顔の陸が目に入り・・・


また・・・


涙が・・


あふれ出す・・・・


『・・・もしもし・・・・』

私がそういうと・・・


『よッ!生きてるか?』

海だった。。。。


『・・・私・・・』

海と明るく話しのできる・・・そんな気分じゃない・・・!

電話を切ろう・・・そう思っていると・・


『今、大学にいるからよ、こっち出て来れないかな?っていうか来いよ!

いつまでも待ってるからよ!じゃ!』

海がそう言って・・・先に電話を切ってしまった・・・


勝手にかけてきて・・・なんだろう・・・?


どこにも行きたくなかった・・・

生きる気力が・・・もう・・・なかった・・・


いいや・・・無視しておこう・・・


そう思った・・・


でも・・・・!


たぶんあいつはずっと待ってる・・・・


ちょっとだけ・・・顔をだして・・・すぐ・・・帰ってこよう・・・


わたしは出かける準備を始めた。。。。。



家の外へ出ると・・・・

今夜はなんだか風が妙に冷たく感じる・・・


あいつ・・・なんだろう・・・?


冷たい風に当たって

やっと海のことを考え始めることができた・・・・


町を久しぶりに歩く・・

身体がふわふわと浮いている感覚・・・

自分の身体じゃないような違和感・・・・


この一週間ほとんど

なにも

食べてなかった・・・


少し痩せたのかな・・・・


食べることを・・・

生きることを・・・

身体が拒否し続けていた・・・


無意識の中で

拒否し続けていた・・・・


目に映りゆくもの

すべてが・・・

今までとは違う・・・・

そんな気がして・・・

心に届かない・・・


何も・・・届かない・・・・


ぼんやりと・・・

歩く・・・


にぎやかな繁華街を歩ながら・・

自分ひとりだけのような気がした・・・


自分だけ・・・・

別世界に一人いる・・・・


もう

ここには・・・

存在していない・・・ような気がして・・・・


わたしはどこにいるんだろう・・・・


今・・・どこにいるんだろう・・・?


ここはこの間まで私が暮らしていた町なの・・?


本当にわたし・・・ここに・・ずっと・・・いたのかな・・・


ここではない・・・どこかへ・・・いたんじゃないのかな・・・


ここではない・・・・どこか・・・・



ぼんやりと

ゆっくりと・・・

大学の門をくぐると・・・・


『よっ!』

海がいつもの笑顔で立っていた。。。。。


海は私の顔を見ると・・・

『わぁ!なんかひでー顔してるぞ!どうしたぁ?』

そうニコニコしながら言った。。。


わたしは・・

『・・なんでもない・・・今日は帰るから・・じゃあ・・』

そう言うと・・・海に背を向けた。。。


わたしが歩き出すと・・・

私の腕をつかんで・・

『おい。。。』


振り返ると・・・真顔の海がいて・・・


『・・・沙織から聞いたぞ・・・!』


海は微笑まずにそういった・・・

わたしは・・・視線をそらすと・・・・


『・・・そういうことだから・・なにも・・聞かないでくれるかな・・?』


もう・・・何も話したくなかった・・・・

これ以上陸のことを・・・・


海が強い口調で・・・


『なんだよそれ!』


今までと違う・・・


『ちゃんと言えよ!』


口調で・・・


『言わなけりゃわからないだろ!!』


・・・・


『何かしてやりたくてもな・・わかんねんだよ!ちゃんと言えよ!』


叫ぶ・・・


『それともな・・・・お前は・・・俺のこと・・・』





『・・・何にも信用してないから・・何も言えないのかよ!・・』






そうじゃない・・・・!

そうじゃないけど・・・・






『吐き出せよ!気持ち吐き出さないと・・・お前は・・・そのまま変われないんだよ!』





変わる?

どういうこと?

変われない?

どういうこと?

変わらなくてはいけないの?



私は何も変えたくない・・・!

陸が見せてくれる夢を

一緒に見て・・・

ずっと一緒で・・


ずっと・・・ずっと・・・一緒で・・・


でも・・・もう・・・その夢が見れないんだよ!!!


変わっていく・・・

変えたくないのに・・・変わってく・・・!


お願い・・・そのままがいい・・・私はそのままでいたい・・・!





『変わりたくない!ずっと陸と一緒にいたい・・!なのに・・夢が・・・

もう夢が見れないの!!!』


私は・・・泣きながら叫んでいた・・・


『陸と見てた・・・夢がね・・・もう・・・見れないの・・!』


陸が見せていてくれた夢が・・・


もう陸がそばに・・・


いないんだよ・・・!


わたし・・陸のそばに行きたい・・・!


陸のそばに行きたい・・・!!!






  


    『わたし・・・!陸のそばに行きたいの・・・!!!!!!』








私はそのまま・・・その場に泣き崩れた・・・


海はそのまま・・・


『もう・・・目覚ませよ・・・』


『・・・どこにもいないんだよ・・!あいつは!』


『・・・全部!幻なんだよ・・!』


『・・・死んだ人間は・・・何にもできないんだよ!』


『全部・・・お前が勝手に見てた夢なんだよ!』









『全部!全部!お前が勝手に見てた・・夢なんだよ・・!』







私は・・・・・





私は・・・立ち上がると・・・

『・・・さよなら・・・・』

海を見ずに走り出した・・・・


海が私を呼び止める声がする・・・・

でも・・・

私は

振り返らず・・・


わかってる・・・


夢だって・・・


陸がいないことぐらい・・・


幻だってことも


みんな・・・

わかってる・・・


でも・・・・


考えたくなかった・・・!


陸がもういないなんて

考えたくなかった・・・!


だから・・・そう信じてた!


信じてればね・・・それだけで陸を感じられて・・ただ幸せだったから・・・


夢からとっくに覚めていたの・・・


陸がもういないということを

はっきり理解していたの・・・


でも・・・

私は・・・

幸せな夢を・・

無理やり・・・・見続けていたの・・・


陸・・・・もう・・・あなたがいないって・・

どこにもいないって・・・・



なんで夢覚めちゃったの・・・?


私の夢・・・もう・・・覚めちゃったの・・?



私は・・・走りながら・・・ただ走りながら・・・・


気がつくと・・・


桜の木の丘の上で・・・・


もう・・・


夢が見れないことは

わかってた・・・・


でも・・・


仰向けに寝転がると・・・


夜空は

もう・・・

広がってて・・・・


私はゆっくりと・・・

自分を

抱きしめると・・・


静かに目を閉じた・・・・



[十四]へ続く・・・・

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