[十二]
文化祭が終わって・・・私はいつもと同じ日々の中にいた・・
今までとなにも変わらない日々・・
休日には写真を撮りに一人出かけ・・
詩や小説を書く日々・・・
ただ・・・陸のためにある日々・・・
そんな日々がずっと続くと思ってた・・・
わたしは久しぶりに
桜の丘の上に立っていた。。。
冬がそこまで来ている・・・・
冷たい北風がほんのりとした陽だまりの温かさを
拭っていく・・・・
桜の木の下に静かに腰掛ける・・・
陸とよく見ていた
町の景色・・・
久しぶりに見る景色・・・
私はそのまま横たわると・・・
自分を抱きしめるように
両腕を抱きしめて・・・・
目を閉じる・・・・
久しぶりにここに来たよ。。
逢いに来たよ。。。
陸。。。
あなたの夢を叶えて
私は・・・逢いに来たんだよ・・・・
陸への想いで・・・胸が・・・・いっぱいになる・・・
目を閉じる・・・・
閉じる・・・・
閉じる・・
閉じる・
・・・・・・・!
どうして!
何も見えないの・・・?!
いつもなら夢が・・・
夢が広がっていた・・・
なのに・・・何も・・
もう・・・なにも・・・・
見えない・・・・
嘘でしょ?
もう一度
深く・・深く・・・・目を閉じる・・・
・・・・・
・・・
・・
・・・・・・・・・!
何も見えない・・・・!
呼吸を整える・・・深く息をする・・・
懸命に。。。陸を思い浮かべる・・・
でも・・・・
何も見えない・・・・!
目を開くと・・
涙が溢れてきた・・・
何度も
何度も
目を閉じる・・・・
何も浮かばない!
やだよ・・・こんなのやだよ・・・!
陸・・・何処に行っちゃったの・・・?
陸・・・いつもみたいに夢を見せてよ・・・!
陸・・陸!!!!!!
私は泣きながら
そのまま・・・・
泣きつかれて・・・・
桜の木の下で眠ってしまった。。。。
私は
その日・・・・
初めて桜の木の下で
夢を見ることなく
眠った。。。。
それは・・・
わたしにとって・・・
どんな夢より・・・
悲しい夢・・・・・
そんな夢を見ているような気がして。。。。。
その日から・・・・
私は大学を一週間ほど休んでいる。。。。
ただ悲しくて・・・
もう・・・
陸がいないと思うと
悲しくて・・・・
部屋の中でパジャマのまま転がっていた。。。
泣きはらした目は
もう・・・
なにかを見る力もなくて・・・・
ただ・・・
視線を転がしているだけ・・・
私はぽっかりとあいた心の中で
どうすれば・・陸にまた逢えるのか・・・
陸を感じることができるのか・・・
そう考えながら・・・・
悲しいこと・・・
自分の・・・
悲しい結末を・・・
繰り返し想像していた・・・・
部屋のドアが開いた。。。
気配を感じたけど
私はそのまま・・身体を起こさず・・・そのまま・・・
『こんにちわ☆見舞いに来たよ☆』
沙織の声が背後からした・・・
私は急病ということになっていて。。。
沙織がお見舞いに来てくれた。。。。
わたしは
ゆっくりと
身体を
起こす・・・・・
『調子悪そうだね・・・・大丈夫かい?』
沙織に視線を向けると・・
沙織はふんわりと微笑んでいて・・・・
なんだか・・・
その温かさに・・・・
涙が・・・
溢れ出した・・・・・
『どうしたの・・・?なんかあったの・・・?』
ただ・・・・
涙だけが・・・
溢れてくる・・・
言葉の代わりに・・・・
涙だけが・・・・
溢れ出る・・・・
沙織は黙って・・・・
私の涙が
通り過ぎるのを・・・・
ひたすらに・・・・
待っててくれて・・・
そのおかげで
私は・・・・
ゆっくりと
泣くことが・・・できた・・・・・
やっと私が声を出すことができたのは・・・・
空が夜へと向かい始めた頃だった・・・・・
『あのね・・・』
穏やかな瞳で沙織が待っていてくれる・・・・
ゆっくりと
『わたしね・・・・』
ゆっくりと
『夢をね・・・』
語り始める・・・
『・・・もう・・・夢を・・・見れなくなっちゃったの・・・・』
どうしてだろうね・・・・
夢が
もう・・・・
見れないなんて・・・ね・・・・・
陸がずっと
近くにいるような
気がして・・・・
陸の姿が見えなくてもね
なんだか・・・
寂しくなかったのにね・・・・
急に
どっかに
消えてしまったみたいで・・・
寂しくてたまらない・・・
悲しくてたまらない・・・・
どうすれば。。。。
どうすれば。。。。
陸が。。。。。
戻ってきて
くれるのかな・・・・?
どうすれば。。。
逢えるのかな。。。。
逢いたいよ。。。。
また。。。
逢いたいよ。。。。
ずっと
一緒に
いたい。。。
ずっと
近くにいるって
感じてたい。。。。
心の
そばに
いたい。。。。
同じものを
少しでも
長く
見ていたい・・・・
あの人の
ために
なにかが
できる
自分でいたい・・・・・
わたしは
もう・・・・
必要ないの・・・・?
陸にとって必要ではないの?
陸・・・どこに行っちゃったの?
陸・・・あなたに会えるなら・・・・
わたし・・・・あなたのそばの・・
その世界に・・・・・
・・・その世界に・・・!
『・・・わたしは・・その世界に行きたいの・・・・!』
沙織の瞳から涙が溢れ出した・・・・
『菜生・・・私がいるから・・・私ならそばにいるから・・
お願いだからそんなこと言わないでよ・・・・!』
沙織ごめんね・・・・
泣かせて・・・ごめん・・・・
でも・・・嘘じゃない・・・・
私の本当の気持ち・・・・
私は・・・陸のそばに・・・ただ・・いられるなら・・・・
生死は関係ないの・・・・
どこでも
どんな場所でも・・・・
ただ・・・・
そばにいたいだけなの・・・・
心を寄り添わせたいだけなの・・・・
そう思いながら私は・・・
『ごめんね!もう!言わないから!許してね☆』
私は沙織に微笑んだ・・・・
沙織に嘘をついていることが・・・つらくて・・・
沙織の優しい気持ちが痛くて・・・・
ただ
痛くて・・・・
痛くて・・・痛くて・・・
たまらなかった。。。。。。
[十三]へ続く・・・
 




