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[十一]

第二話・・・・


浴衣姿の男女が夜の浜辺へやってくる・・・

花火が・・・

海の向こう遠くに見える・・・・


男を見ずに、海の・・・さらに遠くを女は見つめながら・・・・

女は言った・・・

『海の向こうってどんな感じ?』

男は・・・

『・・・夢が広がってる・・あの海の向こうに僕の夢がね・・・』

女は視線を落とすと・・・また・・顔を上げる・・・

『そうか!』

口調が明るい・・・でも・・・

瞳からポトリと涙がこぼれる・・・


『どうした?』

男がその涙に気づいてやさしく声をかける・・・


『なんでもない!』

女が明るい口調で言う。。。

『・・・言ってみろよ・・な!』

女は下を向くと・・・ゆっくりと顔を上げ・・・

『・・・・だって・・・・今なにか話したら・・・・私・・・・』








『・・・あなたを困らせるようなことしか言えなくなる・・・・!』








女はたくさんの涙を瞳にためながら・・・・


『・・・わたし・・・あなたの幸せを願っているから・・・!』








『・・・・・何も聞かずに行ってね・・・・!』







そう言うと微笑を浮かべる・・・・


男は女を力強く抱きしめると・・・・

女の瞳から涙が次々に溢れ出す・・・・・



ただ無言で抱きしめられ。。。。。。

静かに・・・

波の音だけが存在する世界。。。。。



抱きしめられ・・・・・



女は顔を上げると・・・・

波打ち際に走り出す・・・・



振り返る・・・・



『早くこっちに来て!』

女が明るく手招きをする

男がゆっくりと

女のほうに歩み寄ると・・・・



『ねえ。。。海に触れてみて。。。』

女と男は海に静かに触れる・・・・



『海の向こうにあなたが行ってしまっても・・・この海はあなたの海へと

繋がっているんだよね』

女は穏やかに・・・

『その海に触れてるってことは・・・・これって』





『お互い触れ合ってるってことだよね?』





そう言うと・・・


『姿が見えなくても・・・離れてしまっても・・私はこの海に触れるたびに・・・・あなたの心に触れられる気がするから・・・寂しくはないわ・・・・』


女の手を静かに男は握る・・・・


『あのね・・・・こうしてると・・・』







『・・・あなたの心がずっとそばにあり続けてるみたいで・・なんだか少し嬉しいの・・・!』







女は握られた手にそっと手を添えて・・・

男を・・・

見つめる・・・・


『だから・・・がんばってきなね・・・夢・・かなえなね・・・!』


女は・・・・微笑みながら涙した・・・・・





第三話・・・・・・



屋根の上・・・

少しばかり月が大きく見える・・・

女が一人・・・月を見つめている・・・


『危ないから戻ってこいよ!』

窓から顔を出した男が声をかける


女はゆっくりと月から視線を男に移すと・・・

『大丈夫よ!』

やんわりと微笑む


男は窓から・・・屋根の上へ上り・・・

女の隣へ腰掛ける・・

『こんな高いところこわくないのか?』

女は男を見ずに・・・

『月しか見てないから気にならないわ。。。』

そう応える・・


髪とロングスカートが風に静かに揺れている・・・・


ポツリと女はつぶやく・・・


『運命って・・・あるのかな・・・・』


『・・・ん?・・・・』


女は静かに男を見つめると・・・・





『君と私が永遠になる・・・運命ってあるのかな・・・・』





ただ無言で・・見つめあう・・・・

ただ・・・

時だけが・・・

過ぎて・・・・・・


先に女が視線を月に戻す。。。


『なんでもないわ!・・・忘れて!ごめん!・・』


そう震えた声で言う・・・


男は女の両肩をつかむとそっと唇をよせる・・・

女の身体から力が抜ける。。。。


唇を静かに離すと・・・



見つめたまま・・・



そのまま・・・・



『僕は・・一瞬が永遠だと思ってる・・』


女は男から視線をはずすことが・・・


『・・・一瞬一瞬が永遠だと思ってる・・・』


もう・・・・


『・・・この今の一瞬だって・・・』


できない・・・・





『・・・・僕にとっては君とのすべてが・・・永遠だ・・・・・』





男は女を見つめたまま・・

『この一瞬が・・・・僕の中では一生残っていく・・・永遠にね・・』


女をそっと抱きしめる・・・


・・・・・・・


・・・・・・


・・・・


・・・


・・


私は映画みながら泣いていた・・・

悲しいからではなくて・・・

ただ・・・


『どうした?』

海が静かに私に声をかけた

真っ暗な教室・・

まだ映画は続いてる・・


『なんでもない・・』

私はそう応えると・・・


『自分の映画、見て・・・今どんな気持ち?』

海がそう聞いてきた・・・

『悲しくなった?』

私は首を振ると・・・


『・・・なんか・・嬉しい・・・』


私は嬉かった・・・

夢が確かに現実になっていることが・・・

陸の夢が現実になっていることが・・・


でも・・・どうしてだろう・・・?

涙が・・・止まらない・・・・


海は私の頭にぽんと手をやると

優しく頭を撫でながら・・・・


『嬉しいか・・・よかったな・・』

そう優しく・・・・


『でもな・・・』

優しく・・・


『嬉しいときは・・・泣くんじゃなくて・・・』







『顔くちゃくちゃにして笑えよな!』








海はそう言うとニカッと微笑んだ

私もその海の笑顔につられて

ニカッと泣きながら微笑んだ・・・・



映画が終わって真っ暗な部屋が明るくなる・・・・

泣き笑いの私はたくさんの拍手に包まれて・・・・


私はただ幸せだった・・・・



[十二]へ続く・・・・


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