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プロローグ:昏き海の記憶

本作を開いていただき、ありがとうございます!

この物語は、劇場版ポケットモンスター『七夜の願い星 ジラーチ』をベースにした、「もう一つの可能性(if)」を描いた二次創作小説です。

本作の主な「if(独自解釈・加筆)」要素

もしもバトラーが、過去に「カイオーガ(メタ・カイオーガ)」の創造にも関わり、その罪に苦しんでいたとしたら?になります。

原作映画の持つ温かさはそのままに、より人間とポケモン、そして大自然の「命の繋がり」を深く掘り下げて描きました。

季節外れの少し遅れた願い星ですが、ファウンスの美しい自然と、彼らの決意の物語をどうぞ最後までお楽しみください!

その怪物は、人間の「傲慢」から生まれた。

 かつてアクア団とマグマ団が各地でしのぎを削り、世界の覇権を狙っていた時代。その影で、組織を追放された一人の天才科学者がいた。男の名はバトラー。

 彼は自らの頭脳と力を世界に見せつけるため、禁忌の領域へと手を伸ばした。大地の超古代ポケモン『グラードン』、あるいは海の超古代ポケモン『カイオーガ』。その二大巨頭の化石から抽出した不完全な遺伝子を用いて、生命をゼロから復元・創造するシステムを構築したのだ。

 だが、科学の力だけで神の領域に達することはできなかった。

 数年前、ある海底研究所で行われた最初の復元実験。

 カプセルの中で形を成したのは、豊かな海を支配する美しい神格などでは決してなかった。

 それは、ただ限界を知らない飢餓感に突き動かされ、周囲の水を腐らせ、あらゆる生命を泥の触手で飲み込んで肥大化していく――泥と執念の塊。公式には『メタ・カイオーガ』と呼ばれることになる、命のバグだった。

「オォォォォ……!」

 言葉を持たないその怪物は暴走し、実験施設を破壊。そのまま近くの美しい港町を襲った。

 男が目にしたのは、自身が生み出したおぞましい泥の津波が、人々の悲鳴とポケモンたちの歌声を一瞬にして黒く塗り潰していく光景だった。

『バトラー! これがあんたのやりたかったことなの!?』

 助手であり、最愛の女性であるダイアンの悲痛な叫びが、今も耳の奥にこびりついて離れない。

 己の知識欲と、世界を見返してやりたいというちっぽけなプライドが、どれほど冒涜的で救いのない悲劇を引き起こしたか。怪物の放つ異臭と、人々の絶望に直面したとき、バトラーの傲慢は跡形もなく打ち砕かれた。

 メタ・カイオーガは、その地に満ちていたエネルギーを急激に吸い尽くしたことで、自重に耐えかねるように急激な機能停止(休眠状態)に陥り、再び重い化石となって昏い海の底へと沈んでいった。

 だが、犯した罪が消えるわけではない。

 バトラーは名誉もプライドもすべてを捨て、逃げるように自然豊かな秘境『ファウンス』の地へと流れ着いた。

 皮肉なことに、その美しき大自然の片隅には、かつて自分が生み出した泥水が流れ込み、黒く枯れ果ててしまった「大地の傷跡」が、今も痛々しく残されていた。

 そしてその傷跡を冷たい目で見下ろす、一匹の野生の『フライゴン』の姿があった。フライゴンはこの地を荒らした人間を、決して許してはいなかった。

「俺は、なんというものを作ってしまったんだ……」

 フライゴンの鋭い視線を浴び、泥にまみれ、枯れ木を抱きしめながら、男は毎夜涙を流した。

 失われた自然は二度と戻らない。自分が汚した海も、大地も。

 しかし、男の絶望を知ってか知らずか、夜空には千年に一度、わずか七日間だけ輝くという『千年彗星』が、静かにその不吉な、あるいは奇跡的な尾を引き始めていた。

ここまでご一読ありがとうございます。

これから何章かに分けて投稿していく予定です。

最後までお付き合いよろしくお願いします。

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