詩 絵本を読む
「何の本を読んでいるの?」
彼に聞かれ、私はゆっくりと顔をあげる。
「絵本。今、親にも人気があるんだよ」
「そうなのか? どれどれ」
彼が覗き込んできたので、私は「近い、近い」と真っ赤になる。
彼の石鹸のような爽やかな香り。
私、匂いは大丈夫かしらと思いながら、彼が絵本を見るのを黙っている。
「図書館で借りたのか?」
「そう。一緒に行く?」
わたしは嬉しくなって、聞いてみる。
本好きなのは小さい頃からで、図書館はお城みたいな、豪華で色んな種類のあるドレスを着た淑女みたいなものだった。
「いや、いいや。それより音読してくれる?」
「え、私が?」
「そう。そのほうがいい」
彼が隣の席を陣取り、私の声を待つ。
周りには人がいるので、音読するのは恥ずかしかった。
私、自分の声に自信があまりないのだ。
しかし、彼が待っているので、とりあえず絵本を最初に戻す。
「恥ずかしいから、小声でもいい?」
「駄目。俺に聞こえるように読んで」
「えー」
とか言いながら、もうやけになって、腹に力を込める。
からかわれたら、からかわれただ。
私はこほんと咳をすると、読み始める。
緊張しているので、つっかかったりするのだが、彼は気にならないのか、目を瞑って聞いてくれている。
それにほっとして、文を読んでいく。
自分ではおすすめの絵本なのだが、彼にはどうだろうか。
「…終わり」
読み終え、絵本を閉じる。
彼はゆっくりと目を開くと、微笑んでくる。
「うん、面白い話だった。幼稚園生に戻ったみたいな」
「そう。良かった」
「また読んでくれるか?」
「えー。今度はあなたが読んでよ」
そう言うと、彼は喉をさそる。
「俺の声、狼みたいにがらがらなんだよ」
「そう? そうは思わないけれど」
「そうか。ありがとうな」
「うん」
私はそう言うと、立ち上がる。
「やっぱり図書館に行こう? 読み終わったし」
「よし。一緒に行くか」
彼が立ち上がったので、2人はカバンを持って教室を後にする。
次は何の本にしようかなと、楽しみだった。




