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男の娘が魔女になって大変な目に遭う話  作者: クエクト1030
1章 魔女社会というもの
6/13

6話「お勉強と"教育”な一日」

 どかーーん!!



「きゃあああ!!」


「うわああ!?」



 今は、魔法薬学の授業中。



「おい!?次に入れるのは冷粉花(れいふんか)だぞ!別の素材をぶち込んだ馬鹿は誰だ!?」

「先生言ったよな、手順を間違えると爆発するって!!」



 爆発が、起きていた。



「いひーん、ごめんなさいぃ、でも気になってぇ……」


「馬鹿!アホ!」

「全く……お前らはやるなよ?」


「「……」」


「……お、おい?聞いてるか?」

「あ、馬鹿やめろ!!実験室を修復するの誰だと思って──」



 先生の注意を聞くものは少なく。

 残った生存者は悪い目つきをして。

 正解以外の素材を、魔女釜に放り込んだ。


 どどががーーんん!!


 ……二度目の爆発は、音の数が増えていた。



☆☆☆



「あはははは!楽しかったねミコちゃん!」


「勘弁してくださいよ、爆発に巻き込まれるところだったじゃないですか……」



 翌日、校長先生の助言をこなすべく僕はリーベさん……あぁいや、リーベ先輩と一緒に魔法薬学を受けて、今はその教室──だった場所を後にした。

 教室は損壊、生徒は散開、僕は散々。


 幸い魔女釜は貰えたのでセーフかもしれない。いやアウトか。


 かく言うリーベ先輩も授業の爆発犯の一人だった。

 二度目の爆発では目を輝かせながら、嬉々として素材を投入していたぞこの人。


 しかも、今回の授業で用意された正解の素材、それ以外の全てを投入していた。

 爆発の規模では一番大きかったかもしれない。



「大丈夫だよ。ミコちゃんは私が、必ず守るからね!」


「リーベ先輩……」



 言う立場が逆じゃなかろうか。

 防御魔法とかそういうアレなんだろうけど、確かに爆発から守ってくれていたけどさ。



「あー、また先輩って付けてる。リーベでいいのに〜」


「先輩なんですから、先輩って付けますよ。アン先輩もフレスノ先輩も、リーベ先輩って呼んでるじゃないですか」


「二人にも先輩呼びはやめてって言ってるんだよ?」


「じゃあ私も先輩って呼んでもいいですよね」


「ダメー!」



 膨れながらぽかぽかと叩いてくる。



「そんな事言われても……それにリーベ先輩は位階だってすごい魔女だったじゃないですか。目上の人ってだけじゃなくて実力も高いなら、そりゃ誰だって敬うと思いますよ?」



 魔女には「位階」という格付けが存在する。

 資格の二級一級みたいなものって言えば分かりやすいかな。漢検一級とか。


 位階は「朝日」「黎明」「真昼」「黄昏」「夜」の五つで分かれていて、夜に近づく程、魔法にそれだけ精通していることを意味しているみたい。


 僕の位階は「朝日」で、これは魔女として登録されたら誰でも一番最初に与えられる位階の事。


 対して、リーベ先輩は「黄昏」の位階だった。どれくらいすごいかと言えば、一つの国の、国内におけるトップアスリートくらい、とアン先輩が言ってた。国家試験の一番難しい奴とかなのかな?それより難しいのかな。



「やだやだ!せめて派閥の皆んなからは名前で呼ばれたい!」


「あぁもう、揺すらないで!駄々をこねないでくださいよ、みんな見てますよ!」



 ……嘘ぉ、誰も見てない。

 というか他にもトチ狂ったような格好してたり様子を呈している人が多すぎる。初授業の先生といい、ここではこれが普通なの?



「ほら、次の授業行きましょう。今日一日は隣で教えたくれるって言ったじゃないですか。ちゃんと教えてもらいますからね」


「ぶーぶー」


「教えてもらいますからね!」


「つーん。」



 そっぽを向かれてしまう。

 初めて会った時はお姉さんって感じだったけど、少し接して理解した。

 この人、けっこう子供っぽい。



「次の授業は……魔法の基礎ですか」


「つーん。」


「……ほら、行きますよリーベさん」


「む。まぁ……ちょっとは許してあげよう。ふふん」




 ちょろいのか、ちょろくないのか。




☆☆☆




「──魔法とは、魔力に命令を与える『術式』を組み合わせて作るものです。例えば──」


「そこ間違えてるよ、《流す》じゃなくて《流れる》だね。書き方一つで魔力が詰まって暴発することもあるから気をつけてね」


「うわほんとだ、ありがとうございます」



 魔法の授業は講義だった。


 先生が黒板に書いたり、あるいは魔法でスクリーンのように映像を出して説明しつつ、配られた問題を解く。またあるいは教科書の頁をぺらぺらと捲る。


 と、言ってしまえば何だが普通の授業って感じだった。


 普通の授業と違うところを挙げるとすれば、隣に美人なリーベ先輩がいる事だろう。

 授業内容ではなく。


 隣で覗き込んで教えてくれる。とても、すごく嬉しい。

 しかも間違いにすぐに気がついたらすぐに教えてくれるし、理解出来ない事があったら分かりやすく説明してくれる。


 問題としてはやっぱりリーベ先輩が美少女なことだろう。

 うん、つまり微妙に集中が出来ない。



「どうしたのー?私の方見て〜」


「あ、いや……何でも、ないです。」



 リーベ先輩、肘をつくのはいいけど谷間が見えています。麗若い乙女がはしたないですよ。



「──さて、ではそろそろ実習に移りましょう。皆さんの机に二種類の水晶が置かれてしますね?そこに手を翳して、魔力を流し込んでください」


「ふむふむ……おぉ?色が変わって……わぁ、カラフル〜」



 机の上には別々の形をしている水晶が置かれていた。


 指示された正六角形の水晶に触れると、中心からそれぞれの頂点にかけて、赤、緑、橙、青、灰、紫色に変化する。



「赤は火を、緑は風を。オレンジは物、青は水、灰は音、紫は力を意味します。そして、その色が水晶の頂点にさしかかる加減によって基本属性への適正が分かります」


「ミコちゃんは普通な感じだね、よくあるバランスの適正してるよ」



 水晶の中では紫色が頂点まで差し掛かっていた。どうやら僕の適正は力属性というものがとても高いらしい。



「属性には相反する属性があり──火と水、風と音、物と力が対照的で──」



 何でも、この基本属性は正六角形の対角線上で、片方が高いと片方が低い法則があるとのこと。

 これは魔女でも人間でも動物でも、生物はみんな共通しているみたい。



「ちなみに私は水属性が一番得意!」


「へぇ、そうなん……え、初めて会った時にやたら水の量が多かったのって」


「得意属性の魔法だったからね。ふふっ」



 そうだったのか……溺れかけるっておかしいもんね。となるとあの炎は不得意な中で出したわけなのか。



「ではもう一つの水晶にも同じようにしてください」


「どれどれ。今度は……なんか同じような色ばかりじゃないですか?」


「おぉ、すごいよミコちゃん!」



 二つ目の水晶は正四角形……向き的には菱形をしていた。

 魔力を流すと、明るいベージュ色、少し薄い黄色、殆ど黒の紫色、赤黒の四種類の色が映った。



「もし反応した場合、それは上級属性と呼ばれる扱いの難しい属性への適正を示しています。上級属性は必ずしも全員が持っているわけでは──」


「時計回りに光、命、闇、滅の属性だよ。すごいねミコちゃん、フルの比率で待ってるんだ、いいなー!」


「え、えへへへ。それ程でも?」



 才能がある感じがして嬉しい!


 上級属性はさっき言ったみたいに、生物が皆持ってるってわけではないみたい。対応する属性が高い場合はもう片方が低くなければならないみたいだけど、別に一つの属性が低いからって自動で片方が高くなる事はない……


 要するに、全部0の人もいれば、基本属性と同じように全部持ってる人もいるという事。

 僕は全部持ってる人だったらしい。



「では説明も終わりましたので、魔力を水晶に全力で流して破壊してください」


「……へ?」



 え、この教師、教材を破壊しろって言ってるんだけど。

 この学園、物壊してばっかだな!!



「その水晶、使い切りな上に量産出来るんだよね。だからこうやって朝日の魔女(ひよこ)ちゃん達の魔力操作の練習に、ついでで使われるの」


「使い終わったらサンドバッグって事ですか……」



 ちょっとかわいそう。まぁ壊すけどさ。

 思いっきり魔力を流し込むと、水晶は二つともパリン、と音を立てて砕け散る。



「あれ、消えてく」


「魔力で出来てるからね、壊したら空間に還るんだ」



 割れた破片は跡形もなくスッと消えていった。


 割った瞬間になってから破片どうしよう、って思ったけど杞憂だったらしい。

 普通に危なかった。これ自然に還らなかったらすごい危険じゃん。



「皆さんよく出来ました。」

「では今回の授業はここまでになります」


「あれ、魔法は?」



 魔法の授業って聞いてたんだけど、説明と水晶二つ壊しただけで終わったような。



「せんせー!魔法教えてくれんじゃないんですかー!」


「実習するとは言いましたが、魔法の実習とは行っていません。」

「それに魔力操作の基礎もなってない素人が使って、爆発でもしたら危険ですからね」


「「ぶー、ぶー!」」



 他の生徒たちはブーイングを飛ばす。

 その中で僕の脳裏には先程の授業が過ぎる。




 どどががーーんん!!




 と。


 あゝ、先生。

 その判断は、あまりにも正しいです────




☆☆☆




「むふふ、授業で魔法を使えなかったミコちゃんには私たちが教えてあげましょう」



 今日の授業はこれだけで、僕たちは圏域外派のロビーに集まっていた。



「フー……攻撃魔法だ。」


「まずは日常に役立つ魔法から覚えようね〜」


「つまらん。」


「ミコちゃん、ムネメ先輩の言う事は間に受けなくていいですからね……!」


「は、はい」



 ムネメ先輩はタバコを咥えて不満そうな顔をするけど、皆さんはそれを無視して櫛と水の入った桶とブラジャーを持ってくる。


 ……うん、何でブラジャー?



「今回覚えてもらう魔法は三つ!《髪の毛を乾かす魔法》、《髪の毛をセットする魔法》、そして《ブラジャーのホックを一発で付ける魔法》!」


「こ、この前言ってたやつですか」



 前者二つはいいとして三つ目マジですか。



「まずは髪の毛の魔法から覚えようね〜!」


「髪の毛は……女の子の命、です」


「はい……」



 といっても、覚えるのは結構簡単だった。

 水で濡らしたら、火属性で《暖める》《水分を飛ばす》といった命令を与えるだけで良かった。


 魔法は組み合わせるものって言ってたからなんか難しそうに思ったけど、これくらいなら簡単だぞ。


 セットする魔法も同じ感じ。こっちは髪の毛の性質を利用してるっぽいから、焦がさないように《熱を発生させる》命令の加減を調整するのが少し難しかった。



「じゃあ最後、髪の毛と同じくらいの大切な〜!」


「ブラのホックを一発でつける魔法ですよ!」


「わ、わぁ〜」



 嬉しいけど嬉しくないような魔法の順番が回って来る。



「じゃあ今つけてるの外そっか」


「……こ、ここでですか?」


「私たちも見本見せるからねぇ、おあいこって事で許してね?」



 そう言うとムネメ先輩以外がおもむろに服を脱ぎ出す。



「ひやぁあああ!?」



 思わず生娘みたいな悲鳴が出る。

 へえぇ、僕の喉ってこんな高い声出ちゃうんだ。そっかぁ……。



「お、女の子同士ですから……大丈夫ですよ、私もちょっと恥ずかしいけど」


「アンは恥ずかしがり屋さんですよね~」


「あれ〜、フレスノちゃんまた大きくなった〜?」


「それ程でも〜?あ、やーん先輩、手付きえっち〜」



 は、はわわわ。思わず手で目を覆ってしまう。

 眼福だけどこっちが恥ずかしい。治ってくれ下半身。無理難題を押し付けて申し訳ないが、治ってくれ。


 嗚呼、リーベ先輩の胸はとても大きい……僕の頭に乗っていた時の重量感は凄まじかった。しかも垂れてもいない。これは魔女の変容という万能神秘の力か、あるいは魔法か。


 フレスノ先輩の胸もリーベ先輩と比較すれば確かにサイズでは劣るけど、綺麗かつ片手に丁度収まるか収まらないか──僕の手は小さいからきっとはみ出すであろう。


 アン先輩は控えめ、でも確かに存在する膨らみがアン先輩自体の小柄さと合わさって可愛さを引き立たせている。


 ……うん、僕の脳みそはもうダメです。私、今すぐ僕を殺してくれ。

 『自傷行為は善くないよ』

 そうですか──



「ごめんねーミコちゃん、嫌かもしれないけどサイズによってちょっと感覚が違うから色んな人のを参考にしないといけないの。我慢してねー」


「フッ。さっさと脱げ、ミコ」

「お前もアンと同じくらいだろう、気にすることはない。魔女の変容で望めばそのうちでかくなる」


「あうう」


「はーいぬきぬぎ〜」



 上半身をひん剥かれる。

 恥ずかしさが極まって涙まで出てくる。

 ふえん。もうお婿に行けない。



「あれ……ブラ付けてないの!?」


「うぇ……」



 あぁ、そういえば面倒だからつけて無かったような気がする。

 キャミソール着てればいいかなって……キャミソールも恥ずかしいんだけどね……ハハハ。



「あ、しかもこのキャミソール、カップないやつじゃん!」


「あるのと無いので色々あるんですかー……」



 涙を拭きながらコメントを返す。頭がいっぱいで言い訳とかそんなものは思いつかない。



「こーらー!」

「いくら魔女で胸が小さくても、ブラは付けなきゃダメだよ!」


「ま、全くですねっ。それに小さくても、どれだけ小さくとも女の子には可愛いブラジャーを付ける権利があるんですよっ!それを、それを放棄しちゃダメです……!!」


「あ、アン?落ち着いて?」



 何でこんなに怒られるんだ。

 別に揺れる程もないんだからいいじゃないか。

 下着なんて汗を吸収出来ればそれでいいじゃん。



「これは教育が必要だね」


「教育教育教育……」


「アン?大丈夫?お、落ち着いてね?」



 その後僕は。

 いや、ムネメさんを除いた全員は。


 上半身裸のまま、ブラジャーを含めた下着の大切さと、魔法に頼らないブラの付け方、そして魔法の習得までをみっちりレクチャーされた。


 リーベ先輩も怖かったけど、アン先輩が一番怖かった。

 一番小柄で普段はおどおどしているのに、迫力が桁違いだった。

 この迫力は、もしかしたらアン先輩は夜の魔女なのかもしれない。


 途中からはもう興奮とかそれどころの話ではなくて、疲れと恐怖の時間だった。



「ついでに可愛いのを渡された……」



 その後僕は部屋に戻って、前回貰った下着の可愛さを一段階アップグレードした一式を見つめていた。部屋に戻る前に持って行きなさいと渡されたもの。



「……」



 何となく貰った下着を身に着ける。


 部屋に備えられてる姿見の前で、くるんと一回転。



「……」



 悪くない気持ちと、どんどん女の子になる自分への様々な気持ちで。




 また涙が出てきた。

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