サクラ猫は思案する
私は猫だ。
野良猫で性別は男だが、なぜか付けられる名前は柔らかい名前が多い。
サクラとかお嬢とかだ。
何故だろか?
体は確かに小さい、他の猫達に比べて体は頭1つ分くらい小さいが体の大きさで判断されては困る。
私が裏路地を徘徊し始めて、既に二年が経とうとしているのだから私は立派なオス猫だ。
その筈なのに、今日も人間から餌をもらう際に色々な呼ばれ方をされた。
その中でも、やはりサクラと呼ばれることが多かった。
何故だろうか。
疑問を抱えながら、住処に戻る。
定位置のベンチに座り込み、辺りを見渡す。
そこは、小さな人間達の遊び場。
私がさっきまでいた、大きな建物がひしめき合うあそことは全然違う。
ここにある建物は、すべてが小さい。
ここで遊ぶ人間も、光を発する細い建物も小さい。
だから、その木はこの小さな遊び場には不釣り合いだ。
名前も分からない木、桃色の花をつける不思議な木。
そして、その木から落ちる桃色の花がその小さな公園を埋め尽くしている。
少し迷惑だが月明かりに舞うその花は綺麗だし、いい匂いがするから好きだ。
匂いを味わうために目を閉じる、花の匂いの乗った風に乗って毛並みが揺れる。
風が吹いている、夜空に舞った花弁が降り注ぐ。
頭から降り注ぐ匂いに酔っていると、一枚の花びらが私の鼻に乗った。
寄り目でその花びらを見つめたら、その花びらは先の割れたか形をしている。
それはまるで、私の耳の形みたいだ。
そう思い至った時、月光が私の頭の上から降り注ぎ私の影を映し出す。
私の右耳は、その花びらと同じ形をしている。
これは少し前、人間達にやられたものだ。
体を色々弄られたりして不愉快だったが、別に痛くもなかったから気に留めていなかった。
成程、人間達はこの耳を見て私をサクラと名付けたのか。
納得し、大きな木を見上げた。
人間達の感性は分からないが、この美しい花びらと同じ名前なら悪くはない。
そう思える程に今宵はいい夜だ。
サクラ舞う、いい夜だ。




