表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

old

こたつ

作者: 百円

 頭がぼーっとする。どうやら、また、寝てしまったらしい。

 こたつはぽかぽかと、優しく体を包みこんで、眠気を誘う。宿題が出来ていなかろうが、見たいテレビ番組があろうが、例外なく、眠気を与えるのだ。それでいて、起きたあとにも心地よさを持続させる。そして、結局、そのまま二度寝する。

 それを繰り返し、とうとう四度寝をしようとしたのだが、流石に眠気はなく、眠ることも出来ないまま、寝転がっているのが、今の現状。


 んーあ。


 伸びをする。少し頭がスッキリした。

 起き上がろうとしても、体が重くて起き上がれない。体が、まだ寝ていようよお、と自分の心を引っ張ってくる。やっとのことで、起き上がり、乾いた喉を潤そうと、籠の中に一つだけ残っていたみかんに手を伸ばす。柔らかいみかんの皮は、結構薄くて、剥きにくい。やっと剥き終えたときには、みかんの皮の断片が机の上に形の統一感なく転がっていた。

 手の平の半分ほどの蜜柑は、口にいれると、程よく温くて、甘かった。何も入っていない乾いた口に、蜜柑の甘い果汁が染みこむ。おいしい、おいしい、と食べているうちに、あっという間に平らげてしまった。

 無意識の内に籠に手を伸ばすけど、何も得られない。こたつから出て、ほんの五歩程度歩けばダンボールに蜜柑が山程あるのだけれど、こたつから出たくない。

 そんな時。


「ただいま」


 聞き慣れた声が天使のように聞こえた。


「ゆーた、お帰り」


 私はにっこりと、満面の笑みで悠太を迎えた。悠太の鼻の頭は赤く染まっており、吐き出した息は白かった。脱ぎ捨てたマフラーやジャンバーは、少しだけ雪がついていて、部屋の温さに耐えられず、すぐに溶けた。


「ゆーた、みかん」


 私はおもむろに、からっぽの籠に視線を滑らせる。

 悠太は私の伝えたいことを察したのか、目を細めて、はあ、と溜め息をついた。


「俺、みかんじゃねえ」


 悠太は揚げ足取りをして、そのまま、こたつに身を滑らせる。


「ねーえ、ゆーたくん、みかん取ってきて?」

「いやだ」

「そー言わずにー」

「やだ」


 私は、むぅ、と頬を膨らませ、仕方なくこたつから出ることにした。悔しかったから、悠太のふくらはぎのところを少し痛いと感じる程度につねった。悠太のふくらはぎは、まだ冷たくて、私の手は温もりきっていた。


「いってえ」

「私のゆーこと聞かなかった代償」


 悠太は私を優しく睨む。そして、口を開いた。


「梅昆布茶」

「はあ?」

「梅昆布茶作ってきて。あと、風呂入れといて」

「……」

「それと、みかん。俺の分も」

「何ソレ」

「俺の大切な体の一部をつねった代償」


 私はべえっ、と舌を出した。


「ばーか」


 そういいながら、恋しいこたつから這い出て、自分の分とプラス一個を籠の中に入れた。

最近オチが緩いのばかりですみません。

そして若干季節外れですみません。

この生暖かい距離感は書いてて楽しいです。

ご意見ご感想がありましたら、お気軽にどうぞ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ