表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

41/54

【39話】不安


 ローブの男は見るからに怪しい。

 変なヤツに絡まれてしまった。


「聖属性魔法を使えるあなたは特別な存在だ。我が神に捧げるに相応しき、選ばれし者なのですよ」

「……ソフィア。ここを離れよう」

「さぁ、我が神のために血を捧げていただきましょうか。【アビスソード】」

 

 ローブの男は水の剣を生成。

 両手に握ったそれで、ソフィアへ斬りかかった。

 

「させるかよ!」


 【身体機能極限解放(オーバードライブ)】を発動した俺は、ソフィアの前に立って右腕を振り上げた。

 振り下ろされた水の剣を受け止める。

 

「ソフィア! ここから逃げろ!」

「で、でも先輩を置いてなんて……!」


 ソフィアは及び腰で、ガタガタと体を震わせていた。

 いきなりこんなことになって、怖くて怖くてたまらないはずだ。今すぐ逃げだしたいだろう。

 

 それでも、俺のために勇気を振り絞ってくれてるんだな。


 勇気ある美少女に向けて、俺は小さく微笑んだ。


「ありがとう。でも、俺なら大丈夫だ。こんな気持ち悪いやつに負けはしないからよ」

「…………先輩。絶対無事に帰ってきてください! 約束ですからね!」


 ソフィアが走り去っていく。

 瞳には大粒の涙を浮かべていた。

 

 これでソフィアは大丈夫なはず。あとは……!

 

 ローブの男を睨むと、相手もまた俺を睨み返してきた。

 

「邪魔をしないでいただきたい! 我が神に、あの少女の血を捧げなければならないのです!」

「てめぇの神だと? そんなもん知るかよ! ソフィアは絶対に殺させねぇぞ!」

「あくまで引く気はないと……。ならば、仕方ありません。無駄な血は流したくはなかったのですが、邪魔をするというのならあなたには死んでいただきましょう」

「やってみろ。できるもんならな……!」


 右腕に力を入れた俺はそれを振り払い、受け止めていた水の剣を弾く。

 

 【身体機能極限解放(オーバードライブ)】を発動中の俺の腕力は、相当なものになっている。

 受けから攻めの姿勢に転じれば、こうすることくらいは容易かった。

 

「なんという力!?」

 

 俺の右腕が生んだ衝撃に、ローブの男は耐えきれなかった。

 弾かれた水の剣が両手から飛んでいく。

 

「お前には聞きたいことがある」


 ローブの男の襟首を強引に掴んだ俺は、近くの壁に強く押し付けた。

 

「どうしてソフィアを狙った!」

「我が神に血を捧げるためです」

「さっきもそんなこと言ってたが、それはどういう意味だ! お前は何者だ!」

「……あなたに答える必要性を感じませんね」

「そうか……それなら力づくでも聞き出してやる!」


 右手を振り上げる。

 

 しかしローブの男は、殴られることを恐れていなかった。

 気味の悪い笑みを浮かべている。

 

「そんなことをしても無駄です」


 歯を食いしばったローブの男は、ガクンと体を震わせた。

 口元から大量の血が滴り落ちる。

 

 ローブの男は舌を噛んで自殺してしまった。

 

「クソッ……!」


 なんの情報も引き出すことはできなかった。

 顔に苛立ちを浮かべた俺は、ローブの男を掴んでいた左手を突き放す。

 

「そこまでして情報を守ろうとしたってことは、たぶんこいつは個人じゃない。なにか大きな組織に属しているのかもしれないな」


 もしそうだとすれば、これで終わりではないはずだ。必ず次がある。

 

 この男はソフィアを狙っていた。

 組織にはなにか、ソフィアを狙う必要があるのだろうか?

 

 情報を引き出せなかったことを、俺はまた悔やんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ