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【31話】バイスの隠し玉


 バイスの顔から余裕が消える。


「……嘘だろ」

 

 俺の実力を図る目的で放ったフレイムエッジと違い、ヤツは【タイダルフレア】で勝負を決めに来ていた。

 絶対の自信を持っていたはず。

 それを簡単に対処されたとあっては、動揺せざるを得ないのだろう。

 

「ふ……ふざけるなよクソガキ!」


 大声で吠えたバイスは、攻撃魔法を続けざまに放ってくる。

 

 火属性と土属性。

 水属性と風属性。

 風属性と土属性。

 

 色々な組み合わせの二属性魔法攻撃が俺を襲ってきた。

 それはどれも見たことのない魔法で【タイダルフレア】と同様、高い威力を持っていた。

 

 しかしそれらの魔法を食らっても、俺がダメージを負うことはなかった。

 まったくの無傷だ。

 

 強力な魔法をどれだけ放っても、かすり傷ひとつつけられない。

 そんな状況に置かれているバイスの表情に、大きな焦りが浮かんだ。

 

「これ以上やっても無駄だ。お前の攻撃は俺に届かない」

「黙りやがれ! 俺様はまだ本気を出してねぇんだよ!」


 遠まわしに、降参しろ、と言ってみたのだがバイスはそれを拒否した。

 これだけの実力差を見せつけれもなお、まだやる気みたいだ。

 

 ただの強がりか? それともまだ、強力な隠し玉を持っているのか?

 

 相手はSSランク冒険者だ。最後まで気を抜けない。

 

 警戒しながらバイスの行動に注目していると、ヤツの口元が大きく吊り上がった。

 どうやら、後者だったようだ。

 

「俺様の奥義をくらいやがれ!」

 

 赤、青、緑、茶――異なる四色の光がバイスの体を包み込む。

 

「火、水、風、土――四属性同時攻撃! 威力も四倍だ! この魔法を使うのはお前が初めてだぜ、ミケル! 光栄に思いながら地獄に落ちるんだな!! 【オールエレメンツ】」

 

 バイスが放ったのは、巨大な虹色の球体。

 美しくも不気味な光を放つ色合いは、異質としか言いようがない。

 大きさは俺の身長を軽く超え、三メートルほどもあった。

 

 奥義と呼ぶに相応しい見た目をしている。

 四倍の威力と言っていた通り、その破壊力もバイスの魔法の中で最大になっているはず。

 

 ここは安全に避けるべきか? ――なんて考えは、一瞬たりとも浮かばなかった。

 

 SSランク冒険者の奥義と真正面からぶつかり、制して、完璧な勝利を得たい。

 そんな気持ちが心の奥底から湧いている。強者と戦いたい、という俺の生まれついての本能だった。

 

「勝負といこうぜ……!」

 

 唇の端が自然と上がる。

 

 左足を踏み込んだ俺は、虹色の球体を右腕で力いっぱいに殴りつけた。

 

 接触した瞬間、虹色の球体は大きな音を立てて爆発。

 四つの属性魔法が俺の体を襲う。

 

 爆発によって煙が立ち上がった。

 

「どうだ! 俺の勝ちだ! ハハハハハ!!」

「…………さすがに無傷とはいかないか」

「ハハハ――は?」


 大笑いしていたバイスの声が止まった。

 そして、煙が晴れた。

 

 そこにいるのは、右の手首を左でさすっている俺。

 球体を殴った拍子に、少しだけ痛めてしまった。

 

 しかし、それ以外の傷はなかった。

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