表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/54

【25話】転入生の正体


 俺のことを『ミケ』と呼び、いきなり飛びついてくるヤツ。

 そういうことをする人間に、俺は一人しか心当たりがなかった。


「シオン……!」

「令嬢教育の一環で、王都にいる叔父さんの家に預けられることになってね。それでこの学園に転入してきたんだ! まさかミケに会えるなんて思わなかったよ!!」


 大興奮で語るシオンに、待て待て待て、と声を上げる。

 俺はまだ大事なことを聞いていない。

 

「お前が着てるのって、女子の制服だよな?」

「うん、そうだよ」

「そうだよ……じゃねぇよ! 男のお前がそれを着ているのはおかしいだろ!」

「実はね僕、女の子なんだ」

「…………は?」


 頭から白い湯気が上がる。

 開いた口が塞がらない。

 

 突然の告白に、頭の理解がまったく追いついていなかった。

 

「僕は小さい時から、お人形遊びよりも外で駆けっこするのが好な子どもだったのさ。でも、女の子なんだから危ないことは()めなさい、ってことあるごとに注意されちゃってね。それが嫌で、外では男を名乗るようにしていたんだよ」

「でもギルドカードには、『男』って……」

「ギルドへの情報登録は、すべて自己申告でしょ? 証明書もなにもいらないからさ、ごまかすのは簡単だったよ。この学園の入学手続きは伯父さんがやったから、こっちはごまかせなかったんだけどね」


 あはは、と無邪気な笑い声が上がる。

 その笑い方はシオンそのもの。赤い髪もオレンジの瞳もフローラルの香りも、全部が全部、目の前のこいつがシオンだということを証明していた。

 

 しかし、胸のふくらみ。

 これはシオンにはなかったものだ。

 

 俺の視線は吸い寄せられるようにして、そこをじっと見てしまう。

 

 それに気づいてか、シオンが「あー、これね」と声を上げた。

 

「冒険者をしているときは、コルセットで抑えつけているんだ。リリンよりは小っちゃいけど、イレイスよりは大きいはずだよ。確かめてみる?」

「ばっ、バカ野郎!」


 顔を真っ赤にして注意すると、シオンは楽しそうに笑った。

 ただでさえ頭が混乱しているというのに、シャレにならない冗談を言うのは()めて欲しい。

 

「それで思い出したけど、ミケがいるってことはあの二人もこの学園にいるんだよね。後で挨拶しに行かないと」

「その必要はありませんよ。オス猫改め、オスメス猫……!」

「公衆の面前でなにしてんのよ! いいから早く離れなさい!」


 伸びてきた四本の腕が、シオンの体を俺から強引に引き剥がした。

 それは、イレイスとリリンの両腕だった。

 

「怪しいとは思ってたけど、やっぱりあんた女だったのね!」

「去勢できない以上、体を切り刻むしかありませんね」

「うんうん! 今日も二人は元気みたいだね!」


 まったくもって噛み合っていない会話をしていると、どこからか「会長!」とシオンを呼ぶ声が上がった。

 

「呼ばれちゃったから僕は行くね! それじゃまた!」


 ひらひらと手を振りながら、シオンは走り去っていった。

 

「ちょっとこれどういうことよミケル!?」

「詳しい説明を要求します」


 詰め寄ってくる姉妹は顔をしかめていて、怒っているのが丸わかり。

 

 そんな二人に対し俺は、

 

「いや、俺も分かんねぇよ」


 ありのままを答えた。

 説明して欲しいのは俺の方だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ