表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/54

【23話】うまくいった……はずだったのに

 

 唐突にキスをされた俺は前回と同じく、頭が真っ白になりそうになる。

 だが、今回はなんとか耐えた。

 

 この行為はリリンにとって、特別なことでもなんでもない。ただの挨拶。

 したがって、どきまぎする必要もない!

 

 でも、体は正直だった。

 頭で分かっていても、みるみるうちに顔が赤くなってしまう。

 

 女の子――しかもとっておきの美少女にキスされているという状況は変わらない。

 挨拶だから意識するな、なんて言われてもそいつは無理だった。

 

 しかもリリンは、

 

「おにーちゃん。大好きだよ」


 そんな言葉を耳元で囁き、俺の真っ赤な耳たぶに息をふきかけてきた。

 

 俺の顔は真っ赤に染まって、頭頂部から湯気が立ち始める。

 

 ぐにゃあ……。

 視界がくねくねと歪み始めてきてしまう。

 意識はもう、途切れる寸前だった。

 

 きっとこれも、俺をからかっているだけ。

 いや、絶対にそうだ。

 

 そんなことは分かっているのだが、とても耐えられない。

 小悪魔リリンに、完全敗北してしまった。

 

 あ、ダメだ――落ちる。

 

 ついに限界に達した意識が落ちそうなった、そのとき。

 

 バキン!!

 

 突如、物騒な音が聞こえてきた。

 それによって、俺の意識はなんとか保たれた。

 

 すごい音だったけど、なんだよ今のは……。窓ガラスでも割れたのか?

 

 窓を見てみるが、割れてないしヒビも入っていない。

 異常はなかった。

 

 顔を動かして、部屋をチェックしていく。

 そして、異常が起きていた箇所を見つけた。

 

 ドアノブの取っ手。

 レバーの部分が、根元からねじ曲がってなくなっている。

 

 そしてそれは、イレイスの手に握られていた。

 信じられないが、イレイスのやつは素手でドアノブをへし折ってしまったらしい。

 

「ちょっと! 何やってんのよメスゴリラ!」

「あなたこそ何てことを! やっぱりあなたと仲良くするなんて無理です! この淫乱メス豚クソビッチ!!」

「はぁあああ!? そんなの私だって同じなんだけど!!」


 俺の首から手を離したリリンが、イレイスへ詰め寄っていく。

 二人は激しい口論を交わしながら、部屋を出て行った。

 

 俺があいつらに初めて話しかけたときも、こんな風な終わり方だった気がする。


 しかし今日のことがあったことで、あのときとは状況が変わっているはず。


 姉妹は仲良くなっていくことをを決めた。

 もう以前のような、険悪な関係ではなくなったんだ!

 

「そうだよな。そうなったはず……だよな?」

 

 うまく自信を持てない。

 無残な姿となってしまったドアノブを見ながら、俺は首をかしげた。

 

 

 翌朝。

 朝食の席では、俺を挟んで姉妹が激しい口論を繰り広げていた。

 

「ミケルに馴れ馴れしくしないでよ! 根暗ぺったんゴリラ!」

「胸にばかり栄養が行っている残念おつむのあなたと違って、私は頭に栄養が行っているんです。分かったら金輪際口を開かないでくれますか? バカがうつってしまいますから」


 二人の間に流れる空気は殺伐としていて、いつ殺し合いが始まってもおかしくない。

 昨夜の、どこか楽しんでいるといった雰囲気はもうどこにもなかった。

 

 つまりは、完全に元の関係に戻ってしまった。

 

 せっかくうまく行きかけてたのに、どうしてこうなった……。

 

 また最初からやり直しだ。

 どうやら、俺の苦労はまだまだ続くらしい。

 

 両側から聞こえる激しい罵り合いに、俺は深いため息をついた。

読んでいただきありがとうございます!

これにて第一章は終わり、次話から第二章に入ります。


面白い、この先どうなるんだろう……、少しでもそう思った方は、↓にある☆☆☆☆☆から評価を入れてくれると嬉しいです!

ブックマーク登録もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ