【15話】姉妹と冒険者ギルドへ
俺と出かけたいなら早く飯を食え。喧嘩している場合じゃないぞ――殺し合い寸前の場を収めるため、俺はそんな手段を使った。
本当は連れてきたくはなかったが、ミラクルを起こすためにはそうするしかなかった。
まぁ、俺の目的を伝えれば帰るだろ。
これからモンスターを狩りに行く、と伝えて、じゃあ私も! という答えは返ってこないはず。
せっかくの休日に、わざわざ危険な場所へは行きたくないに決まっている。
「着いたぞ。ここが俺の目的地だ」
「なによここ」
「……初めて見る場所ですね」
「ここは冒険者ギルドだ」
依頼を受けてモンスターを狩る、冒険者という職業。
休日はその冒険者をしていることを、俺は二人に伝えた。
これで帰ってくれるはず――そう思ったのだが、
「中々面白そうじゃない。私も連れて行きなさい」
「ミケくんの戦っている姿、近くで見てみたいです」
予想は外れてしまう。
二人ともついてくる気満々だった。
「お前らは知らないだろうけどな、モンスターってのはかなり危険な生き物なんだぞ」
「モンスターくらい知ってるわよ。でも問題ないわ。私、めちゃくちゃ強いもの。ま、こっちはどうか知らないけどね」
誇らしげに胸を張るリリンの視線はイレイスへ。
またまた喧嘩を吹っ掛けている。
「学園の編入時に受けた評価試験。あのときの成績は私の方が上だったはずですが?」
「あ、あのときはたまたま調子が悪かったのよ……!」
「見苦しい言い訳ですね」
ここでも喧嘩する気か。……というかこいつら、マジで帰りそうにないな。
大人しく帰ってくれるのを期待していたのだが無理そうだ。
こうなったら仕方ない。簡単な依頼をこなすところを二人に見せよう。そうすれば満足するだろ。
眉を寄せながら、俺は冒険者ギルドの中へ入った。
二人も後についてくる。
ギルド内は武装した人間でいっぱいになっていて、活気に溢れている。
これが冒険者ギルドの日常。
今日もいつもと変わらず盛況のようだ。
「この人たち、みんな冒険者なの?」
「そうだ。大勢いるだろう」
「ミケくん。あれは何ですか?」
「あれはクエストボードだ。あそこに貼られている依頼をカウンターにいる受付嬢に渡すことで、依頼を受けられる」
「ていうかみんなこっち見てるけど、なんでよ?」
ギルド内に広がるのは「おい、ミケルが来たぞ」「あれが例のSSランク……」とかそんな声。
SSランク冒険者の俺はどうやったって注目されてしまう。これもいつものことだ。
「……さぁ、なんでだろうな。お前たち二人がかわいいからじゃないか?」
はっはっは、と苦笑い。
冒険者の最高峰であるSSランクということを話したら、面倒なことになる気がする。
簡単な依頼じゃなくてもっと難しいのにしろ、とか言われそうだ。
だから二人には、俺がSSランク冒険者ということははなるべく隠しておきたかった。
「かわいいって……! ふ、ふん! あんただってその、まぁまぁカッコイイし……」
「ミケくん……! 嬉しいです」
よく分からないが二人は照れている。
よし、今のうちにクエストボードから簡単な依頼を取ってこよう。
赤くなっている二人を置き去りにクエストボードへ向かっていこうとする、その直前。
「ミケおはよう!」
笑顔でこっちへ向かってきたのは、どこからどうみても女の子な男――シオンだった。




