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運命の出会い



曇天の空から降る雨が辺り一面に降り注ぎ、周りの木々や草木に打ち付けられる。


そんな中、まだ6歳の少年はその場から動く事が出来ず、地面に膝をつき雨の降る空に視線を向けていた。



「……………」


その視線の先に何があるのかは分からない。

ただただ無言で視線を空に向ける。

いや、言葉など出てくるはずがない。

その先に答えなどあるはずがないのだから。


「………このまま雨に打たれていたら死ねるのかな………」


ぽつりと言葉が口から溢れる。

もはや救いなど存在しないと理解していた。

だからこそ力なく絶望の言葉が漏れたのである。


「……もう…どうにでもなればいい……早く楽になりたい……」


そう言葉を漏らしながら僕は雨に濡れた地面に力なく倒れる。

もはや着ている衣服が汚れる事すらどうでもよかった。


「…………」


薄らと開けていた瞼をゆっくりと閉じる。

このまま誰にも知られず死にゆく人生なのだと理解した。

だったらそれでもいい。

苦しいのは嫌だ。

辛い事はもういらない。

だから……

早く僕を死の世界に連れていってくれ。

そう願わずにはいられなかった。



「お母さん!!こっち!!早く!!!」


そんな時、母親を呼ぶ女の子の必死な声が僕の耳元に突然届いてきた。

その声と同時に草木を掻き分けてこちらに近づいて来る二人分の足音が聴こえてくる。


その音は次第に大きくなり、数秒後にはその音の主二人が草木の間から姿を現した。


一人は僕と同い年ぐらいの女の子、もう一人はその母親であろう大人の女性。

二人は僕の前にしゃがみ、雨に濡れた僕の身体をゆっくりと起こす。


「大丈夫!?あぁ、こんなに濡れて。身体も凄く冷たいわ」


心配そうに冷え切った僕を優しく抱きしめる。

冷え切った身体がじんわりと暖かく包まれる感覚。

その暖かさは凍っていた僕の心すらゆっくりと氷解させていく。


「お母さん!早く家に連れていかなきゃ!!風邪ひいちゃうよ!!」


「そうね。ユイ、帰るわよ」


そう返事をした母親は、そのまま僕を抱き抱えながら二人の住む自宅へと足を向ける。

薄らと見えた母親の表情は心の底から心配している事が伺えた。


一体何が起こったのか理解が追いつかない。

分からない事だらけだ。

だがその思考も精神的、身体的疲労で僕の意識はプツリと糸が切れる音と共に切断された。



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