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「アルテミス、何を話し合いしに行くの?」


隼人は右隣を歩く弓を携えたアルテミス・ロードスに尋ねた。

勿論、左手にはパルチザンが握られている。


「部下の前だから話し合いと言っていたが、話し合いでは無いな。」


「じゃあ何?」


「命令だ。」


アルテミスは少し声を潜め、しかしキッパリと答えた。


今隼人達は、一度入ったアンデルセン城の階段を登っている。

アテナが唯一アンデルセン城防衛軍将軍の部屋を知っている為、隼人とアルテミスがアテナから数歩後ろに付いて階段を登っている。

アテナによるとアンデルセン城防衛軍将軍の部屋は三階にあるらしい。


「命令って?」


隼人は大体何が起こるのかがわかっている為、顔が少しひきつっている。

しかし、予想以外の言葉を聞くために隼人は尋ねる。


「文字通りの意味で命令だ。」


アルテミスは見事に隼人の期待を裏切った。

多分、アテナはアンデルセン城防衛軍将軍にも先程のテントの時と同様に命令を下すのだろう。


隼人とアルテミスが話している間に足は動き、気付けば既に三階に到着していた。


「あれだ。」


アテナは、指を指した。

アテナが指を指した方には一つの部屋があった。

部屋はアテナの部屋の扉すら見劣る装飾と巨大さを誇っている。


アテナはその扉を素早くノックを二回すると、開けた。


中には、一人の生者と二人の死者がいた。

生者は、死者を見下ろしていた目をアテナに向けた。

その目は、一般的な茶色の瞳だったが、強い光が籠もった目だった。


「貴殿は?」


アテナの後ろから出てきたアルテミスは簡潔に尋ねた。


「私はアンデルセン城防衛軍副将軍のクラウディア・テーランドです。

アテナ様。」


生者――クラウディアはアルテミスではなく、アテナに自己紹介をした。


「転がっているのは誰だ。」


アテナの声はまるで先程の部下に命令を下した時のように威厳の籠もった声だ。


「私の父、アンデルセン城防衛軍将軍のガール・テーランドとサンベルグの刺客と思われる者です。」


クラウディアは淡々と答える。


「わかりました。

今から貴方は私の指揮下に入りなさい。」


それは命令だった。

更に、それは決定事項でもあった。


「・・・・フッ、わかりました。」


クラウディアは、アテナの命令に一瞬戸惑い、アテナの顔を見つめていたが、アテナが本気で言っていると判断したのか、一瞬笑い、命令を承諾した。


「現状はわかっていますか?」


アテナはクラウディアに尋ねる。


「大体は。」


クラウディアは素早く答える。


「ならば、部隊を率いて外壁の援軍に向かってください。」


「はい。」


アテナは命令を下し、クラウディアは命令を承諾した。

最早、クラウディアはアテナの部下と化していた。

話に入れずに呆然としていた隼人とアルテミスは命令に応じたクラウディアが部屋から素早く走り去って行くのを静かに見ていた。


「隼人。」


「はい!」


呆然としている隼人にアテナの声がかけられた。


「私とアルミはこれから防衛軍の援護に向かう。

これからは先程までとは違い‘自分’を守る戦いではなくなるだろう。

何せ援護だからな。

お前は、好きにしろ。

だが、アンデルセン城から出るなら――」


アテナはクルリと回り窓を指した。


「――あちらから出るんだぞ。

私達が行くのは戦場だ。」


アテナの声は部下に命令を下す時とは違い、優しい声音であった。

隼人は戸惑った。

逃げても良い。

裏を返せばこれは付いてきても良いということだった。


「行くぞ。アルミ」


隼人が戸惑って居る中アテナはアルテミスに一声かけると扉を開けて出て行った。


隼人は考えた。

崖崩れに遭った自分を無償で助けてくれたアテナやアルテミスには感謝している。

しかし、自分はそれだけでは人を殺せない。

隼人は、これまで自分を殺そうとする者しか殺したことは無い。

それは、理由が無いからだ。

隼人は、自分が死なない為に相手を殺してきた。

禍根を出来るだけ絶つ為に殺した。

それだけだ。

隼人は、自分以外の人がどうなろうと知ったことではないと考えている訳ではないが、理由も無しに何かを殺そうとする事は出来なかった。

命を背負えないのだ。


『背負えない命を殺すということはただの無意味で愚かな殺生だ。』

隼人は祖父にそう教えられた。

実際に自分もそう思う。

しかし、祖父は‘自分’ではなく‘護りたい者’の為に戦えと遺書に書いていた。

隼人はアテナやアルテミスとの長い1日を思い返していた。

短くてはすみません。

次は、長くしたいと思っています。

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