第六話
青黒い夜空の下、青年と美女が歩いていた。
青年は、前を歩く美女ゆりも少し大きい。
かといって、美女が小さい訳ではない。
美女は、身長170センチ前後で、痩せている訳ではなく太っている訳でもない引き締まったバランスの良いボディーバランスをしている。
そして、何よりも目立つのはその髪だ。
煌めくその金髪は、後ろで纏められてもなを空気を泳いでいる。
更に、少し切れ長の青色の碧眼と相まって、誰もが魅入られてしまうような美しさだ。
しかし、後ろを歩く青年も惨敗してはいない。
青年は、美女と同じ金髪だが、眉目秀麗で一見して鍛えてあるだろう引き締まった身体をしている。
「エレンさんだっけ?
その人のテント知ってるの?」
青年は、前を歩く美女に声をかけた。
「多分な。」
美女は、素っ気なく言い返した。
「多分?」
青年は、明らかに美女が話をしたくなさそうにも関わらず、その事に気付いていないのか聞き返す。
「私だって、全てを把握している訳ではない。
だが、大体はわかる。」
美女は少し強めに青年に答えた。
ロンギヌス王国軍テント群はアンデルセン城の外壁の中、城の横に立てられ、各部隊ごとに並んでいる。
第一近衛騎士団副団長エレン・ローエンのテントはこの中でも一番城側に立てられていた。
美女はこれを知っていて、前に出たのだ。
青年――麻羅隼人は周囲を見回した。
前には、隼人も見てきたテントが並んでいる。
左右には、畑とその後ろに城壁。
後ろには、アンデルセン城。
テントはかなりの数が並んでおり、普通は誰が何処に居るのかなどわからない。
その為隼人は美女に質問したのであった。
隼人と美女は、一つのテントの前で歩みを止めた。
そのテントは、アンデルセン城の一番近くにある周りと比べて少し大きいテントだ。
中からは話し声がする。
気配を探ってみるとやはり三人の気配を感じ取れた。
美女は躊躇うことなくテントの扉を開けた。
「アテナ様!?」
1人の美少女が声をあげた。
「エレン。
もう状況は把握しているのか?」
隼人と共にいた美女――アテナ・ロンギヌスは声をあげた美少女に聞いた。
「はい。アテナ様」
アテナが聞くとエレンと呼ばれた美少女は明るく声を返した。
エレンと言われた美少女は、身長は少し低く、165センチぐらいであるが、黒髪のショートカットと整った可愛らしい顔つきと相まって美少女と言えるだろう。
「報告を頼む。」
アテナは、隼人と話しているときとは違って、威厳がある言い方で報告を求めた。
「はい。
まず、サンベルグ王国の工作員と思われる刺客が約30名程このアンデルセン城に潜入しています。
但し、この人数はあくまでも潜入時の予測人数である為、アテナ様や団長などが倒された人数は入っておりません。
目的は要人暗殺と門の破壊又は占拠と思われます。
団長は現在自室に戻り武器を取り、周囲の近衛騎士を起こし、指令を出してから戻ると言っていました。
現在サンベルグ王国軍には、特に変化は見られません。
又、死傷者の確認も未だ出来ていません。」
エレンは素早くそして聞こえやすくアテナに報告した。
「ご苦労。」
アテナは、先程から威厳のある言い方を崩さない。
バタン!
アテナとエレンの話が終わるのと同時に勢い良くテントの扉が開けられた。
エレンと他の男の騎士二人は剣を抜き、構える。
アテナは何もしない。
隼人は手に持っているパルチザンを構えるわけでもなく、ただ持っているだけだ。
ダッダッダッダッダ
静寂の中の足音は良く響く。
入って来たのは、長弓を携えたアルテミス・ロードスだった。
「やあ。アルミ」
静寂は崩された。
アテナの場違いな言葉によって。
構えていた、エレンと二人の男の騎士は剣を戻す。
「遅くなりました。アテナ様」
「報告を頼む。」
アテナはエレンと話しをしている時と同じように威厳のある言い方で報告を求めた。
「はい。
部下には班に分かれての刺客の討伐、又は捕獲にあたっています。
現在、刺客は10人程度ですので直に終わると思われます。
しかし、サンベルグ王国軍が動きました。
サンベルグ王国軍は攻城塔を全面に押し立てた攻撃をしています。
幸い門は落ちていませんが、指揮系統が寸断されている為、外壁での人員が足りなく苦戦しています。」
アルテミスはエレンと同じくすらすらと、しかしエレンとは違い厳しい表情で報告した。
「わかった。報告ご苦労です。
そこの貴方達。
1人は第二近衛騎士団団長のガーレン・ハンベルクに外壁の援軍に迅速に向かうように伝えてください。
もう1人は第一師団団長のザード・ハインザルグに第一師団は内壁の近くに列ばせておいてください。」
アテナは、エレンと同様にテントに居た2人の男の騎士に命令の伝達を命じた。
アテナに命令された騎士は素早く一礼してテントを出ると走って行った。
「エレンは第一近衛騎士団を指揮してください。
刺客の処理が終わり次第第二近衛騎士団の援軍にあたってください。
アルミと隼人は私と共にアンデルセン防衛軍将軍のガール・テーランドと話し合いをしに行きます。」
アテナは威厳の籠もった女性特有の少し高い声でこの場の全ての人間に命令を下した。
命令を下した後は返事を待たずに直ぐに歩き始める。
エレンは礼をしているがアテナは見ていない。
アテナが歩き始めた為、命令されて拒否権が多分無い隼人とアルテミスはアテナの後を追って早足で歩を進めた。
書き方などは、出来るだけ次第に良くしていきたいと思います。
感想お待ちしています。