第五話
書き方を変えてみました。
間違いがあれば報告し下さると嬉しいです。
隼人は眠りから覚めた。
いや、正確には覚めてしまった。
隼人はアルテミスと話したテントの言われたとおりに簡易ベットで休眠していた。
しかし、折角の休眠は一つの気配によって邪魔された。
殺気は感じないが、経験からして相手は自分を殺そうとしていることがわかる。
気配はゆっくりと慎重に隼人へと近づいてくる。
隼人は、目を開けずに気配だけで刺客を察知して、相手が自分の3メートルまで来たときに、
『スッ』と自然体であたかも今起きたかのように起き上がり目を刺客へと向けた。
「!・・・・・・」
刺客は一瞬驚いたような表情をしたが、15センチ前後の長さの短剣を構えてこちらを窺っている。
隼人は、刺客を観察した。
刺客は、短剣を構えてこちらを窺っている。
体型から言って男だ。
隙の少ない構えからいってなかなかの腕の持ち主だろう事はわかる。
しかし、隼人はこの刺客をどうするのかを迷った。
刺客は、明らかに隼人を殺す気だ。
何故なら、刺客は殺気を出していない、構えからいっても急所を一突きで終わらせるという構えである。
刺客は、本物の暗殺者か工作員だと隼人は結論づけた。
つまり、話て解決なんて事にはならない。
そして、逃げようにも刺客はテントとベットの直線上にいるためテントの形からしてどうしても横を通らなければならない。
隼人が見たところ相手の間合いは3メートルだ。
多分隼人は逃げれない。
隼人は低血圧だ。
しかも、起きてから二十分は身体が怠くて本気の時の十分の一程度しか力を出せない。
今は起きてから大体10分間たったぐらいだ。
本当は、怠いのが無くなるまで待っていたかったが、刺客の動きは慎重でありながら早かった。
話による解決も逃げることも出来ない。
そうなれば残されたのは、“戦う”という選択肢のみである。
しかし、戦うとなれば相手は間合いに入った瞬間に殺しにくるだろう。
隼人の祖父は言っていた。
『相手が命を賭けた戦いをしているというのに自分が命を賭けない戦いを絶対にしてはいけない。』
隼人は無手である。
だからといって人を殺せないかと言われれば答えは否だ。
無手であろうと人は殺せる。
首を捻ったり、後頭部に強い打撃を加えたり、極端に言えば適当に上半身を蹴りまくれば殺せるかもしれない。
しかも隼人は祖父から手刀も教わり、鉄はきついがコンクリートなどの石、直径約60センチの木などなら斬ることが出来る。
つまり、隼人は刺客を殺す術を持っている。
隼人は二秒ほど観察して、覚悟を決めた。
隼人は一歩を踏み出し刺客の間合いに入った。
待っていましたと言わんばかりに刺客の構えた短剣が襲ってきた。
刺客は鋭い突きを隼人の心臓にめがけて放った。
隼人は、素早くかわして刺客の横にたった。
「!・・・・・・・」
刺客は驚愕している。
隼人は驚愕している刺客の横から手刀を後頭部に放った。
刺客は隼人が侮れない相手と考え、一端後方に下がり様子を見ようとした。
しかしそれは不可能だった。
隼人の無表情な顔を見た瞬間に刺客の意識は途切れた。
隼人の手刀が後頭部に直撃したのである。
隼人の手刀により刺客の後頭部には穴があいている。
後頭部の穴からは血が溢れ出て、穴からはシワシワの脳が少し見える。
しかし、隼人の手には血は着いていない。
隼人の手刀は速く、血を張り付かせないほどの速さだった。
隼人は、即死した刺客の死体から目をどけてテント内に武器が無いか探した。
隼人は、即死し刺客以外にも人間を殺したことがある。
12歳の頃、中国での祖父との修業の中で旅費が足りなくなった時だった。
祖父は厳格な性格であるが金銭面ではかなり疎いところがありその為日本に帰る旅費が気付いた時にはなかった。
祖父は、中国の知り合いがたくさん居たため、旅費を貸してもらえば良かったのだが、祖父は厳格な性格のため、友人からは金を借りたくないと言った為にアルバイトをする事になったときだった。
祖父には中国の軍関係者や警察関係者などの知り合いが多かった。
というか軍や警察の関係者以外に知り合いは殆ど居なかった為軍や警察の関係者に仕事を回して貰うことになった。
ということで、隼人と祖父は祖父の知り合いの元でアルバイトをする事になった。
祖父の知り合いは武警の少将であり、祖父の実力を知っていたためか、それとも信じていたためか、軽く2人に近頃行われるテロリストの駆逐作戦を説明した。
テロリストは約40名で一軒家を隠れ家にしているらしい、祖父の知り合いは隠れ家を包囲し、包囲し終わったら、包囲網をだんだん縮めていくそうだ。
そのため、祖父と隼人は正面から突撃して、相手の注意を引きつけることが仕事だった。
しかし、隼人はテロリストを殺した。
テロリストが銃を突きつけてきたためだ。
隼人と祖父は勿論銃など持っておらず、腰に差した刀のみが武器だった。
隼人は銃を突きつけられると素早くテロリストの前に動き、居合いの横一閃にてテロリストを殺した。
隼人に銃を突きつけてきたテロリストは背骨すら斬られ、臓物を溢れさせ絶命していた。
結局、隼人に殺されたテロリストの余りにも惨たらしい姿を見たテロリスト達は、降参し武警の祖父の知り合いに捕まった。
テントの中をよく見てみると、隼人が寝ていたのとは違う立派なベットの横にすごい数の武器を見つけた。
短剣、長剣、レイピア、長弓、短弓、大弓、槍、戟、ハルバート、パルチザン
まるで、我が家の倉庫並とはいかないが、かなりの種類だ。
隼人は、その中からパルチザンを持ってテントの外にでた。
パルチザンは、幅が広い三角形の穂先がある槍だ。
パルチザンは、突くことだけではなく、切り裂くこともできる。
隼人は、置いてある武器の中ではパルチザンを一番よく使っていたため、又、隼人は刀が一番使えるため同じ位の長さの長剣も考えたが、やはり、剣と刀は、斬り方が違うため、一対多の場合はパルチザンの方がいいと判断した為だった。
外に出た隼人が目にしたのは死体だった。
死体は、首を裂かれ血を垂れ流していた。
多分自分の寝ていたテントにきた刺客が殺した兵士だろう。
隼人は兵士を飛び越え周囲を見回した。
周囲には隼人が居たテントには劣るが小さいテントがいくつも並んでいた。
そして、左手に大きな城があった。
隼人は、兎に角誰かに話を聞くためパルチザン片手に走って先ほど確認した城に向かった。
アルテミスの話からすると自分の事を知っているのは多分少ない。
しかし、少なくともアルテミスならまともな話が出来るだろう。
だが、問題はそのアルテミスが今何処に居るのかという事だ。
アルテミスはアテナ王女もこの城に来ていると言っていた。
王女といえば、城だ。
隼人は、頭の中で考えながら城へと急いだ。
‡
アルテミス・ロードスはアテナの部屋で報告を行っていた。
「話をした処、その者は麻羅隼人と名乗りました。」
「麻羅隼人ですか・・・珍しい名ですね。」
アテナはアルテミスの報告に遠回しに質問をした。
「はい、私もそう思います。」
それに対してアルテミスも遠回しに“わからない”と答えた。
「その後、話したところ隼人はこの大陸の情勢や地理などが知らなかった為―――」
アルテミスは報告を続けた。
「―――以上で報告を終わります。」
アルテミスの報告は終わった。
「金髪には興味がありますが、今は戦時です。
その者は明日には放して構いません。」
アテナは処置を下した。
「怖れながらアテナ郷、戦時だからこそ不審者は尋問又は拷問するべきではありませんか?」
第二近衛騎士団副団長たるハーレイ・ガーンがアテナに尋ねた。
「ガーン副団長あなたはアルテミスの話を聞いていたのですか?」
アテナはただ淡々と話す。
「しかし!」
ガーンは身長200にもなる大男だ。
それが今眼下のアテナに講義した。
「アルテミスが大丈夫と言うなら大丈夫でしょう。」
アテナは、ガーンを軽く睨んだ。
「はぃ」
ガーンは渋々と退いた。
今は、このアテナの部屋に、
ロンギヌス王国第一、第二近衛騎士団団長、アルテミス・ロードス、ガーレン・ハイベルク
第二騎士団副団長ハーレイ・ガーン
そして、第一王女アテナ・ロンギヌス軍務郷がいた。
近衛騎士団はアテナに崖崩れの件を報告したのである。
「それでは、以上です。
皆、休んでください。」
アテナの言葉により、解散となった。
アルテミスは、ひとまず自分のテントに戻ろうとしたが、今テントには、隼人が居るのを思い出し、部下のエレンのテントに向かった。
アルテミスのテントは、城から少し離れた何処にある、ロンギヌス王国第一近衛騎士団のテント群の真ん中にあった。
それに比べて、エレンのテントはテント群の城側にある。
ちなみにアテナの部屋は、アンデルセン城の二階のロンギヌス王国将軍の部屋である。
アルテミスは城に来た時と同様に徒歩でエレンのテントに向かっていた。
しかし、アルテミスはこの日エレンのテントでは寝なかった。
‡
隼人は、先ほどの城―アンデルセン城へと急いだ。
刺客の事を伝えるには本当はアルテミスの方が良いのだがアルテミスは今何処にいるのかわからない為、アテナ王女なら、同盟国のフィンドランドは王族であるアテナ王女を手厚く扱うため城に居る可能性が高い。
しかもアテナ王女なら、アルテミスから自分の報告を聞いてるはずなので無碍にはしないだろう。
隼人は城へ向かっていたが思いがけない事態によって歩を止めた。
隼人が走っている前方300メートル先でアルテミスが五人の刺客と交戦していた。
隼人は一回止まったが、気づかれていないとわかると、瞬時に気配を消して走りながら交戦を観察した。
アルテミスは短剣で刺客達のコンビネーションをいなし、足を使ってかわしている。
しかし、多勢に無勢の為か防戦一方で刺客に攻撃を与えられずにいる。
隼人は、出来る限り気配を消して瞬時に刺客の大男をパルチザンの穂先で斜めに一閃で切り裂いた。
大男は右腕がもげ、腹から臓物を出しながら絶命した。
「「「「え!・・・・・・・」」」」
アルテミスや四人の刺客は、突如として現れた隼人と絶命している刺客の大男を見てキョトンとしていたが、それも一瞬で刺客は二方に分かれて隼人とアルテミスを襲ってきた。
隼人は、一人自分と同じくらいの刺客にパルチザンによる横一閃を放った。
刺客は隼人の一閃をかわそうとしたが、一閃を避ける事は出来ずに、左腕を切り裂かれた。
しかし、刺客達は右腕だけの刺客と無傷の刺客の大男が左右に分かれて隼人に挟撃した。
隼人は、それを見て、2人の刺客のタイミングを計り、今度は大振りで横一閃を放った。
刺客達は、隼人の大振りの横一閃により、腹を裂かれ腸と血を地面にこぼしながら死んだ。
隼人が刺客達との交戦を終え、アルテミスの方を見ると、刺客の喉から短剣を抜いているところだった。
「大丈夫ですか。アルテミス?」
「大丈夫だ。助かったよ。」
隼人の確認にアルテミスは少し頬を朱くして答えた。
「それより何故此処にいる?
テントに居てくれと頼んだはずだぞ。」
「すまない。」
アルテミスの問いに隼人は素直に謝った。
「しかし、私の所にも刺客がきて、あのテントは危ないと思ったので城に向かっていたんだ。」
「それはすまない。
そいつらの狙いは私やアテナ様だろう。」
「ああ、そうだろう。」
隼人の言葉にアルテミスは謝罪した。
「それと、これ借りてます。」
隼人はパルチザンを見せた。
「構わない。」
隼人は無断でしかも飾ってあったパルチザンだったので、結構勇気を出して、丁寧に言ってみたが意外とすんなりと許された。
「これからどうするんだ?」
「取り敢えずアテナ様の元に行こうと思う。」
「わかった。」
「隼人も行くのか?」
「当たり前だ。
そのほうが落ち着く。」
隼人とアルテミスは兎に角アテナ王女に指示を仰ぐべく、又守るためにアンデルセン城二階へと向かった。
‡
隼人とアルテミスがアンデルセン城の入り口に到着すると、其処には2体の屍があった。
「門番か?」
「そうだろうな。
兎に角急ごう!」
アルテミスは隼人を急かしてアンデルセン城の二階、ロンギヌス王国将軍室へと急いだ。
「こんな所にも!」
アルテミスが叫び、短剣の突きで瞬殺した。
階段を登る途中で刺客と出くわしたのだ。
場内に入ってからアルテミスは5人の刺客を殺している。
しかし隼人は城の道やアテナ王女の部屋がわからないためアルテミスの後方にいた為か、もしくはパルチザンという槍が武器を持っている為か交戦すらしていない。
アルテミスは階段の刺客を倒すと、すぐさま階段を駆け上がり、走り出す。
「此処だ!」
アルテミスは大きな扉の前で隼人に告げた。
そして開けた。
アルテミスと隼人が入ると、中には血のにおいが漂っていた。
「やぁ、アルミ」
部屋の中には、煌めく金髪を棚引かせスカイブルーのような青色の瞳の美女が手に長剣を持ちながらソファーに座っていた。
「アテナ様ご無事ですか?」
「ああ、大事無い。
それにしても遅かったな。」
「すいません。
此方も刺客に襲われまして。」
隼人はアテナ王女とアルテミスの話しに入る事ができなかった。
「まぁ、いい。
それよりも、髪を纏めてくれないか?」
「あ、はい」
アルテミスは、何処からか櫛とリボンを持ってきて髪を整え始めた。
「ん?お前が麻羅隼人か?
何故此処に居る?」
「はい、私が寝ていたテントにも刺客が来まして。」
「わかった。
隼人は戦えるのか?」
「ええ、まぁ。」
「ハッキリしないな。
まぁ、良い。
しかし、見てみると不思議だなロンギヌス王族以外の金髪は。」
「はい。」
アテナ王女の感想にアテナ王女の髪を纏め終わったアルテミスが答えた。
「ありがとう。アルミ。」
「あの、アテナ王女よろしいですか?」
「何だ?」
「アルミって何ですか?」
隼人がずっと気になっていた事を聞くとアテナ王女は苦笑し、アルテミスは頬を朱くして此方にやってきた。
「隼人、アルミはアルテミスの愛称だよ。」
アテナ王女は苦笑しながら隼人に答えた。
「え!アルテミス?」
「そうだ。」
隼人の驚きにはアルテミスが応えた。
「アテナ様これからは?」
アルテミスは明らかに話しをずらした。
「ああ、まず情報が必要だ。
アルミは部下に現状を報告させてくれ。」
「はい。しかしそれですとアテナ様1人になりますが?」
「構わない。
それに隼人もいる。」
「わかりました。
では失礼します。」
アテナ王女の命によってアルテミスは部屋を出て行った。
今アテナ王女の部屋に居るのは、隼人とアテナ王女だけだ。
『気まずい!』
隼人は心の中で叫んだ。
「隼人、どうした?
此方へ来い。」
そんな隼人の内心を察してかアテナ王女がアテナ王女の座っているソファーの前方にあるソファーを指さした。
「あ、はい。」
隼人はゆっくりと歩き指さされたソファーの横に立った。
「何をしている?
早く座れ。」
アテナ王女は少し怒り気味に命令した。
「はい!」
隼人は瞬時に座った。
ソファーは向かい合わせで置いてあるため、隼人とアテナ王女は見つめ合うようにして顔を上げている。
アテナ王女は初めに見た時とは違い髪を後ろで纏めていた。
無論、アルテミスがアテナ王女の髪を纏めている時には見たが、それは遠目で横からであって、やはり近くで正面から見ると変わってくる。
「何を見ている?」
アテナ王女が淡々と尋ねてきた。
隼人が気まずくて話せない訳ではなく、自分の顔や髪を見ているのに気付いた為だろう。
「いえ、アテナ王女は髪は纏める方が好きなんですか?」
隼人は誤魔化しながら聞いてみた。
「・・・・ああ、此方の方が動きやすいからな。」
アテナ王女はいきなりの質問に対して一瞬止まったが、すぐに立て直して答えた。
「そうですか。
アテナ王女は剣術が得意のようですけれども
何故、剣を学ぼうと思ったのですか?」
隼人はアルテミスから聞いて気になっていた事を聞いてみた。
「不躾だな」
アテナ王女は軽く言った。
「!、すいません。」
隼人は、アテナ王女は、王族であり軍務の最高地位である軍務郷であることを思い出し、非礼を詫びた。
「いや、構わない。
私は、兎に角強くなりたかった。
父の為にも、国民の為にも守りたいと思ったんだ。」
アテナ王女は微笑を挟みながら答えた。
「凄いですね。」
隼人は少し小さく感想を答えた。
別に、隼人は思ってもない事を言ったわけではない。
ただ、自分は自分の為だけ、良くて祖父の為だけに剣術を習い、鍛錬してきたので、祖父に言われたように誰かを守るための武術ではなく、隼人の武術は自分を守るためのの武術だからだ。
「どうした?」
アテナ王女は、隼人の事を怪訝に思ったのか尋ねてきた。
「いえ、何でもありません。
しかし、自分も大事にしてくださいね。」
隼人は微笑しながらアテナ王女の事を心配して本心から言った。
「わかっている。
私は、王族の軍務郷だからな。」
アテナ王女は顔色を変えることなく言ってきた。
「フッ、そうですね。」
隼人は、アテナ王女の言葉に一瞬笑ってしまったが、すぐに取り繕った言葉で相槌を打った。
「まぁ、いい。
それより、その話し方は止めろ気持ち悪い。」
アテナ王女は少し表情を緩めながら命令してきた。
そう、頬に少し朱くなっているが、命令形の言葉だ。
「わかった。」
隼人はアルテミスにも同じような事を言われたので、言葉を変えて答えた。
「ん!?・・・・」
隼人が言葉を変えて話すとアテナは明らかに驚きを表情に出し、沈黙した。
「何か?アテナ王女。」
隼人は、アテナ王女の表情に対して疑問に思い、尋ねた。
「・・・・いや、アテナで構わない。」
アテナは、嬉しそうに笑いながら言った。
「わかった。アテ『バン!』」
隼人は、アテナに対して
『わかった。アテナ。』
と言ったが、見事に扉を開く音で消されてしまった。
扉を開き、入って来たのは全身真っ黒の刺客たちだった。
刺客の真っ黒な服は如何にも動きやすく軽そうで防御力が低いように見えるが、隼人は、先の戦闘であの中には少し細かい鎖帷子により守られているため、生半可な斬撃では切り裂くことは出来ない。
隼人は素早く立ち上がり扉の方を見た。
刺客は見えるだけでも5人居る。
刺客は部屋に侵入すると此方に向かってきた。
3人は隼人の方へ、2人はアテナの方へと刺客は分かれている。
隼人は、素早く一歩を踏み出し刺客三人の横に突くと大振りの横一閃をもって終わらせた。
刺客三人は隼人の一閃によって腹から下と、上に分かれて床に血と腸などの臓物を撒き散らしながら死んでいった。
隼人は、次の2人に向かうためアテナの方を振り向いた。
先程までの刺客の動きならば、まだ刺客はアテナソファーの何処には行っていないはずである。
しかし、隼人が見たのは床に倒れ伏す1人の刺客と、アテナがもう1人の刺客に長剣を突き刺す瞬間だった。
アテナに長剣を突き刺された刺客は見事に心臓を一突きされている。
倒れ伏している刺客も同様のようだ。
アテナはそれらの刺客を刺した血が垂れている剣を一振りし血を切り、躊躇いもなく刺客の服で拭いた。
「やるな。隼人」
長剣の血を拭っていたアテナは扉の近くで警戒している隼人に声をかけた。
「そんな事は・・・・
アテナこそ凄いね。」
隼人は否定しようとしたが、それは明らかに嘘であるため話を逸らした。
「いや、私はまだまだだよ。
それより、この部屋臭くないか?」
アテナは謙遜しつつ、隼人も気になっていた事を指摘した。
そう、この部屋では現在五人の刺客の亡骸がある。
しかも、隼人に至っては刺客の腹から上下に分けてしまった為、又、隼人が入った時もそうだが、何分換気が悪い為に血と臓物の悪臭が部屋の中に満ちている。
「そうだね。
兎に角部屋を出ようか?」
隼人は、先程からこの部屋から出たかったので、早速言い出した。
「わかった。」
アテナは、扉を見ながら同意した。
隼人とアテナは、ロンギヌス王国将軍用の血と臓物の異臭に満ちた空間からいち早く扉を開けて廊下に出た。
「スゥー、ハァー」
隼人は大きく深呼吸し肺の中に空気を取り入れた。
廊下は、窓が壁にいくつか空いているためアテナの部屋より遥かに空気が澄んでいる。
隣を見てみるとアテナも隼人程大きくではないが、女性らしく小さく何回か深呼吸をして肺に空気を取り入れていた。
「此処の空気は澄んでいて気持ちいい。。
何か特別な植物でもいるの?」
隼人は、山の中でアレスと居たときに気付いた事を聞いてみた。
「・・・・そうか?
特別な植物など居ないが。」
アテナは何かを考えた後答えた。
「ああ、とても澄んでいる。
それに――」
隼人は話を一端切り、アテナに向かっていた体を窓の向こう側の光景に向かって方向転換した。
隼人が方向転換したことにより、隼人の話を聞いていたアテナも窓の外に体を向ける。
「――この夜空は神秘的ですらある。」
隼人は空を見上げながら笑いながら話した。
「そうかもしれない。」
アテナは隼人と同様に空を見上げながら呟いた。
「まぁ、それは兎も角廊下なんかに王女様がいて良いのかい?」
隼人は少し嫌みを込めてアテナに聞いた。
「そうだな。
どうやら狙われている中に私も入っているようだ。
それなら此処に居てわざわざ見つかってはしょうがない。
アルミの居場所はエレンの所だろう。
行くぞ隼人。」
アテナは隼人の嫌みを気にすることなく隼人に結論を言い渡した。
「わかった。」
隼人はもう命令口調には慣れた為、軽く答えてアテナの後に続いた。