第三話
目を開けるとそこには土があった、土と言っては語弊がある、つまり地面があった。
そして麻羅隼人は立ち上がった。
「なんだ此処?」
隼人が自分の周囲を見回すと、まず見つかったのは家のような物だった。家といっても、もはや戦国時代の農民の家のような建物だった。
しかも、その建物の屋根には穴があき、更に壁も所々に穴があいていた。
そのような建物がいくつかが集まっていた、いわゆる村と言う奴だ。
しかし、ただの村ではない。
その理由は
まず、自分の敷地にこんな村は無いこと。
二つ目に、この村には人が一人もいない。気配を探ってみても誰もいない。
三つ目に、建物には、焼け崩れたものもあり、更に家の扉は、血が固まったら出来る黒い色で染まっていた。
見渡して、考えてた結果、答えは意味不明だった。
その為、隼人はまず考えるのを一時停止して、この村を調べてみることにした。
まず手始めに、ある建物に近づいた。
家と思われる建物は屋根に所々穴があいていたが、他の建物よりは損傷が少なかったからだ。
建物に入ってみると、中には、ほとんど何もなくあるのは一つの竈があるのみだった。
隼人は、この村には何もないと思い村をでた。
村を出るとまず森があった。
どうやら村は森の中にあるらしい。しかも、みた感じ森はかなり深いのがわかった。
隼人は、村に戻るか、森に入るか迷った。
村に居てもあまりこの状況を打開できるとは思えない。
しかし隼人は祖父との訓練で、深い森に入ったとき、地図を持っていても遭難しそうになったのを覚えている。
その為か、迷ったが、やはり此処が何処かを確かめるためには森の中にはいるしかないと思い、隼人は森の中に入った。
森の中は、薄暗かったが、廃村が近いためか、あまり動物の気配がなかった。
村はかなりおかしかったが、森の植物は、至って普通で、自分も見たことがある木や花、キノコなどかあった。
更に川も澄んでおり、見たことのないキレイな花もあった。
隼人は、それらの植物を観察しながら進んでいた。
二時間程歩くと、頭上から水滴が落ちてきた。
どうやら雨が降っているようだ。
雨は、あまり強くなかったが、今、自分が何処にいるのか分からない状況で、風邪でもひいたら最悪だったため隼人は、とりあえず木の下を通り、雨を避けながら歩いていると、ちょうど良く森の中に洞窟を見つけた。
「ハァハァハァハァ。」
最初から思っていたが、この森は山の中らしい、そうでなければ、自分がこれしきの運動で息を乱すことはない。
隼人は息を整えながら洞窟に入った。
洞窟は、かなり広い。しかも今になって気づいたいたが、何かの気配を感じる。
小動物のような小さな気配だが、妙だ。
何故なら、気配が動かないのである。今の時期、洞窟で冬眠をする必要はない。
隼人は、妙な気配を確かめるために奥まで進んだ。
洞窟は奥に進むにつれて広がっていった。
しかし分岐などは無かった為、安心しつ進むことができた。
「・・・・・・・・・・・・・」
隼人は遂に一番奥らしき処に来た。
しかし、其処にいたものがあまりにもあり得なくて隼人は驚愕して固まってしまった。
洞窟の奥、其処には、大きな黒い翼、黒い爪、黒い角、そして銀の瞳を宿した。伝説上に出てくるドラゴンのような生き物が足をたたんで地面に座ってこちらを見ていた。
よく見てみると、ドラゴンらしき生き物の翼には、矢が数本刺さっていた。
隼人は、冷静にドラゴンを観察してみたものの、はっきり言って、もう勘弁してほしかった。
「グゥー」
ドラゴンがうなるような声を上げた。
隼人は、驚いたが逃げたりはしなかった。
「グゥー」
又ドラゴンが鳴いた。
隼人は、黙ってドラゴンに向き合った。
銀色の瞳は、殺意どころか敵意も宿っておらず、逆に、助けをこうかのような瞳をしていると気づいたためである。
「助けてほしいのか?」言葉が通じるとは思えないが、隼人は優しく声をかけた。
「グゥー。」
声に反応してか、ドラゴンは、鳴いた。
ドラゴンの翼の矢を抜くときなどには抵抗されたて怪我をしそうになったが、かなりおとなしいドラゴンだった。
ドラゴンを隼人はアレスと呼ぶことにした。
最初は、アレスも名を呼んでも反応がなかったが、しだいに自分が呼ばれているときがついたのか、見つけたときの怪我が治り、動けるようになってからは、名前を呼んだら反応するようになった。
更に矢が刺さっていた翼が治って飛んでいる時にでも、名前を呼べば来てくれるようになった。
どうやらいつも、隼人の範囲を飛んでいるらしい。
朝は、アレスと食事を、
昼はアレスと水浴びを、
夜はアレスと一緒に洞窟で寝るという日々が続いた。
ある日、隼人はアレスが空を飛んでいる時間帯が暇になるため、久しぶりに此処を調べてみることにした。今、自分が居る場所は山の頂上辺りであることは見当がついている。
しかし、山にドラゴンが居るということ自体がおかしいので今まで敢えて降りたりはしなかった。
だが、今日は体調が良く、天気も良い為、山を降りてみようと思っていた。
森の中は、いつもと変わらず薄暗かったがあまり動物が居なかった。
森を出ると、崖があった。
仕方が無く迂回して山を降りようとしたときだった。
大地が鳴いた。
地面が揺れた。
「地震か!」
隼人は叫んだ。
崖のそばは危険である。その為隼人は走ろうとした、しかし遅かった。
崖は崩れた。
隼人の平衡感覚は崩れて、次の衝撃の後、意識がシャットダウンした。