ゲームスタートです。
「ではさっそくシナリオを始めていきましょうか。よろしくお願いします」
「あっはい。よろしくお願いします」
藤崎さんが頭を下げるのに合わせて俺も頭を下げる。
彼女が頭を上げる時に髪の毛をかき上げる姿に、一年上の先輩の色っぽさを感じる。
「今回はソロプレイになるので既存のシナリオを少しアレンジして行いますね。でもいk世界転生者という突飛なキャラは初めてなので、そもそもアレンジせざるを得ない気もしますが」
「すみません」
「大丈夫ですよ。そういうのもGMの腕の見せ所ですから」
彼女はその右腕を左手でポンッと叩く。それだけで可愛い。
「あとちなみにGMとはゲームマスターの略で、TRPGでは進行役ですね。ゲームによってはキーパーと呼ぶものもあります」
「わかりました」
「では始めていきましょうか。そうですねぇ。アナタは今現実世界にいます。何をしていますか?」
「何を、ですか?」
「そう、なんでもいいですよ。家で寝ていてもいいし、テレビを見ているでもいいです。学生さんなので学校で授業を受けているとかでもいいです」
「うーん、じゃあ授業が終わって帰る途中とか」
「下校途中ってことですね。じゃあ異世界転生の定番で、トラックにはねられるとかにしましょうか」
「そうですね。じゃあオタクって設定なので、その日は楽しみにしていた新作ゲームの発売日で、帰り道にゲームショップに寄り道して買って帰る途中でトラックにはねられるってことで」
「なんかどこかで聞いたような導入ですけど、まぁそんなのよくある話ですからね」
トラックにはねられて異世界に飛ばされるのがよくある話で済まされるってのが、なんとも言えないが妙に納得してしまうし自分で言い出したことなので何も言えない。
「楽しみにしていた新作ゲームを早くやりたいが為に急いで帰っていたアナタは、周りをよく見ていなかったんでしょうね、トラックにはねられます。死んだと思ったアナタでしたが、目を覚ますと見知らぬ場所にいました」
「あの、神様がスキルをくれたりはしないんですか?」
「そんなのはないですよ」
「えー、マジかぁ。チートスキルで無双とかしてみたかったのに」
「わかりましたよ。いいですよダイス振って。練習も兼ねてダイス振ってみましょう。運で振りましょうか。アナタの運は13なので、それに50を足した数、63になります。100面ダイスを振って63を下回ったら成功。何かスキルを上げますよ」
そう言って彼女がスマホでダイスを振るアプリを出してくれる。
俺は、その彼女のスマホを使うということに緊張してしまって、自分のスマホにアプリをダウンロードするとダイスを振った。
「はい、98ですね。ダメです」
「うわぁ。こんな感じかぁ」
「さっそくダイスの洗礼を受けましたねぇ」
「すみません、じゃあ進めて下さい」
「では進めますね。アナタは異世界の見知らなぬ土地にいます。何をしますか?」
「まわりには何かないんですか?」
「近くに町があります」
「じゃあそこへ向かいます。あっちょっと待って下さい。俺が倒れていた場所に何か落ちてないか探していいですか?」
「おっTRPGしてますね。そういう発言は初めてでは意外とでないものですよ」
「向いてるかもしれないですね、俺」
「じゃあそうですね、運か洞察力で振りましょうか」
「運の方が高いので、運で振ります」
「どうぞ」
「41です」
「成功ですね。じゃあどうしようかな。薬草を1つ拾ったことにしましょうか。使用することでHPを回復できます」
「よし! なんだか楽しくなってきました」
「それは良かったです。では町に向かいましょう」
そして俺たちのシナリオは始まった。