2 家からも追放された俺は幼馴染に拾われる
「俺が追放??」
「そうじゃ。投獄されないだけでも幸せだと思いなさい。」
「そんな。クラスから追放されたらどうやって冒険者を目指せばいいんですか?」
「我が校には残念ながら退学処分というものがない。そのため貴様のような仲間を襲う最低な人間でも学校に在籍し続けることはできる。一人で勝手に修行でもしてれば良いじゃろう」
「一人でなんて。実質退学処分と同じじゃないですか!」
やりとりを聞いていたダドリーが笑い出した
「はははは!無能スキルで一人きりだなんで、ざまあないな。寄生野郎には丁度いい」
「わははははは」
他のクラスメイトたちも同調して笑い出す。
「さあ、お前はもうクラスの一員ではないんだ。さっさと出ていけ。」
「そうだそうだ。出ていけ」
「でーてーけ! でーてーけ!」
なんでこんな扱いを受けないといけないんだ。俺が何をしたっていうんだよ。
信じられないほどの絶望と屈辱を感じながら、俺はその場から立ち去った。
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「お、叔父さん。ただいま戻りました。」
絶望のなか、一人家に帰った俺を持ち受けていたのは、鬼の形相をした叔父だった。
「よく帰って来られたな。ウェルベルシア家の面汚しめ」
どうやら叔父にも今日の一件が伝わっているらしい。
「そ、それは俺がやったわけでは、、、」
「黙れ。ダドリーが嘘を言っていると言いたいのか?」
「いや、そういうつもりでは」
「10年間、お前を養ってやった恩をこんな仇で返すとは。さすがバカ兄貴の息子だな」
恩だなんて。こんなやつに恩を感じたことなどない。
10年前に両親が死んだとき、我が家には莫大な遺産があった。
しかし5歳の俺を引き取ることで、叔父はその遺産を横取りした。
そして俺を家族としてではなく使用人として扱い、庭の外れにあるボロ小屋で生活することを強制していたのだ。
幼く、何も持たない当時の俺はそれに従うことしかできなかった。
「お前のような恩しらずとは同じ空気を吸うことすら不快だ。この屋敷から出ていけ。」
「そんな。ここを追い出されては行くあてがありません」
「そんなこと私の知ったことではない」
「それに魔法管理も俺がやらなくては、、、」
一般的に貴族は魔法顧問を雇い、結界の管理などの対応行う。
しかし叔父は金にうるさく、魔法顧問を雇わず、全て俺にやらせていた。
俺は魔力はないが魔法知識だけは人一倍持っているので、そこらの高級な魔法顧問よりも遥かに高等な結界の管理を行っていた。
「お前の代わりなどいくらでもいる。お前はこの屋敷に必要ない存在なんだ。さっさと出ていかないか。」
それはダメだ。
あの結界の管理を他の魔術師がむやみにしたら大変なことになる。
いや、出てけと言われたのだからこの屋敷の心配などるする必要もないか。
あとでどうなっても知らないからな。
「わかりました。今までお世話になりました。」
そう言い残し、俺は屋敷を後にした「お前の代わりなどいくらでもいる。お前はこの屋敷に必要ない存在なんだ。さっさと出ていかないか。」
「いえ、このお屋敷には非常に特殊な結果を貼っているので他の魔法顧問に依頼すると危険です!」
「未練たらしくデタラメを言いおって。誰もお前のことなど信じないぞ。」
「いえ、嘘では、、、」
本当にこの屋敷の結界は特殊なものになっていて、俺以外のものが下手に触ると大変な事態になることは間違いない。
しかし俺のことをここまで侮辱してくるやつに、情けをかける必要もない気がしてきた。
代わりならいくらでもいるから出ていけと言われたのなら素直に従ってやろう。
俺がいなくなって、どんな事態になろうが知ったことではない。
「わかりました。出て行きます。今までお世話になりました。」
そう言い残し、俺は屋敷を後にした
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屋敷を追い出されてどうやって生きていけばいいだろうか。
使用人としての報酬も小遣いももらっていなかった俺は、今晩の宿に泊まる金も持っていない。
クラスメイトの家をあたってみたが、やはり誰も相手にしてくれなかった。
一晩中寝床を探し回って、身も心も疲れてしまった。
道に座り込み、今日はこのまま寝て夜を明かそうか、そう思った瞬間、後ろから声をかけられた。
「ヤマトお兄ちゃん?」
「え?」
「やっぱりヤマトお兄ちゃんだぁ!!」
声をかけてきたのは見知らぬ少女だった。
長い艶やかな髪をした、美少女だ。
「えっと。失礼ですけどどちら様ですか?」
「覚えてないなんてひどい!クリスタだよ!」
クリスタ?? この美少女がクリスタだと?
クリスタはまだ両親が生きていたころ隣の屋敷に住んでいた女の子の名だ。
当時は毎日遊ぶほど仲が良かったが、10年前両親が死んでからは全く会っていなかった。
言われてみれば昔の面影がある。当時から街でも有名な美少女ではあったが、いま目の前にいるクリスタは当時よりも遥かに美しくなっている。
そして
そしてなんと言っても
信じられないほどの巨乳になっていた。
「びっくりした。すっかり大人になってたから気づかなかったよ」
俺は目のやり場に困りながら言った。
「あれ?でも何で王都にいるんだ?」
10年前、俺とクリスタが住んでいたのは王都から離れた地方のエクリタルという都市だった。
「ちょっと前におじいちゃんが亡くなってね。」
「え?賢者のおじいさん亡くなったのか、、、」
クリスタは、かつて英雄と呼ばれた大賢者のおじいさんと二人で暮らしていた。そのおじいさんの死で身寄りがなくなったということだろうか。
「それでパルミティア魔法学院に入学して寮で生活することになったんだ」
そういうことだったのか。
大賢者の血を引くクリスタであればどこの学校でも大歓迎で入学を許可してくれるだろう。
「あれでも、何でわざわざ王都のパルミティア魔法学院まできたんだ?エクリタルなら他にも優秀な学校がたくさんあるだろう?」
エクリタルは魔法都市と呼ばれるほど魔法技術が発展していて。魔法教育においても王都に匹敵する力を持っている。
「えっと、それは、まあ何となくかな? はは」
クリスタが急に慌てだした。
何か言ってはいけないことを言ってしまっただろうか。
少し考えたが心当たりが全くなかったので気にしないことにした。
「そ、そういえば、ヤマトお兄ちゃんも同じ学校だよね?ぐ、偶然だね!!」
「あ、ああ。それなんだが、、、」
俺はクリスタに、クラスと屋敷を追放された経緯と話した。
「信じられない!お兄ちゃんは何も悪くないのに!最低な人たちね!」
「そう言ってくれるだけで嬉しいよ」
今日一日、俺に強烈な敵意を向けてくるやつばかりだったので、クリスタの言葉は本当に嬉しかった。
「私、入学するのやめる」
「え?」
「お兄ちゃんにそんなひどいことする人たちのところで勉強なんてしたくないもん」
「いやいや、クリスタには関係ないんだし。それに学校に生活の保証をしてもらってるんだろ?」
「それとこれとは関係ない!お兄ちゃんに何て言われても絶対に許さないんだから!」
「まあまあ」
クリスタの剣幕を見ると、俺が説得しても全く通じなそうに思えた。
「そうだ!お兄ちゃん!泊まるとろがないなら私のとこにおいでよ!」
「え?」
「私、入学準備のためにこの近くの宿に泊まってるんだ」
「それは非常にありがたいが、、、」
行くあてがなく困り果てていた俺にとってこれ以上の幸運はなかった。
「クリスタ一人で泊まってるのか?」
「もちろん」
クリスタはあっけらかんとした笑顔で答える。
「それは、いいのか?」
「え?何が?」
「い、いや何でもない」
幼馴染との再会。美少女。巨乳。二人きり。
これは大丈夫なのだろうか?
いや、親切心で寝床を提供してくれるんだ。
変な気を起こしてはいけない。
俺は自分にそう言い聞かせながら、クリスタの屋敷へと歩き出した。
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