1 無能スキル『日本語』の俺はクラスを追放される
しばらくは高頻度で投稿して行きますのでよろしくお願いします。
「お前もうクラスから出ていけよ」
俺の従兄弟で、クラスのリーダでもあるダドリーがみんなの前で突然言ってきた。
「正直言ってお前のような無能はこのクラスふさわしくない。クラスの名誉を傷つける前に消えてくれ。みんなもそう思うよな?」
その瞬間、歓声が上がり、クラスのみんなが拍手をした。
ちょっと待ってくれ。
俺の魔法知識はこれからも、絶対にクラスにとって必要になるのに。
俺のスキルが無能だからって、それだけで俺を追放するのか??
ことの発端はたった10分前。俺のスキルが判明した時点に遡る。
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俺はヤマト15歳。王国最高峰の教育機関であるパルミティア魔法学院に通っている。
パルミティア魔法学院は1学年25クラスのマンモス校で、毎年多くの優秀な冒険者クラスを輩出している。
冒険者クラスとは魔法学院のクラスが一つのチームとなって魔物の討伐などを行う組織で、冒険者が子供の最も憧れる職業となった近頃は王国中からその動向が注目されている。
そして今日は最終試験の日。1年生のクラスが冒険者クラスとして冒険に出る実力があるかを見極める試験が行われる。
なかでも俺たちのクラスは王国での名家出身者や、小さい頃から才能を発揮している者が集結しており「奇跡のクラス」と呼ばれている。
試験合格後は即座にS級冒険者クラスになると目されていて、今年の最大注目クラスだった。
特にリーダーであるダドリーは大貴族の跡取りで、かなりのイケメン。
小さい頃から様々な才能に恵まれていたため、王国で知らない人はいないほどの有名人だ。
そして最終試験では同時に、スキルの授与も行われる。
スキルとは神から一人一つ与えられる特性で、優秀な冒険者になるには強いスキルの獲得が重要になってくる。
「奇跡のクラス」と呼ばれるだけはあり、クラスのみんなは次々とかなり上位のスキルを獲得していった。
なかでもリーダーのダドリーは伝説のスキルと言われる<勇者の加護>を獲得し大きな歓声が上がった。
そして最後は俺の番だ。
「あいつ没落したとはいえ、大貴族の出身だからきっと上位スキルなんだろうな」
「死んだ父親は超レアのスキルを持っていたらしいからな」
クラスメイトがひそひそと俺のスキルを予想する声が聞こえる。
緊張するが大丈夫。
きっと俺にはいいスキルが与えらるはず。
そう祈りながら神官の元にいく。
そして俺の頭上に手をかざしながら神官が言う
「そなたのスキルは、<日本語>だ」
そう告げる神官の声にその場は一瞬静まりかえった。
何故なら、それほどに俺のスキルは異常だったからだ。
一般的に言語系のスキルは一番の外れスキルだと言われている。
その言語を読み書きから会話まで自由に扱うことができるというものだが、戦闘には一切役に立たない。
冒険者を目指すものにとってほとんど意味のないスキルだ。
しかも、日本語。そんな言語は聞いたことがない。
誰も知らず誰も使っていない言語を扱う能力など、何の意味があるか全く想像できない。
恐らく史上最低レベルのヘボスキルであると、その場にいた全員が思っただろう。
「日本語ってなんだ???」
「言語系のスキルってことは間違いないだろうが、そんな言語聞いたこともないぞ??」
どこかから、そんな声が聞こえてきた。そしてそれは一気に笑い声へと変わる。
「わはははは!!」
「とんでもない無能スキルだな!!」
「クラスの恥さらしだ!!」
こうして俺が史上稀に見るハズレスキルの持ち主であることが判明した。
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「わかるだろ。お前はこのクラスに必要ない無能なんだよ。そんな聞いたこともない言語のスキルなんて、クラスの恥さらしだ。」
「ダドリー、そんなこと言わないでくれ。俺たちずっと一緒に暮らしている、従兄弟同士じゃないか」
俺とダドリーは父親が兄弟で、ともに大貴族の出身だ。10年前に俺の両親が死んでからは、俺はダドリーの家に引き取られ一緒に暮らしている。
といっても、俺は家族としてではなく、底辺の使用人として。給料もなく、なんとかご飯を食べさせてもらっている状態だが。
「従兄弟だと?お前をそんなふうに思ったことなんてない。我が家に寄生しないと生きていけない分際で!」
確かにダドリーの家で生活させてもらってはいるが、しっかりと使用人として働き、その対価として屋敷で生活しているのに。なぜそんな言われ方をしないといけないのだろうか。
ダドリーの侮辱的なセリフは腹立たしいが、そんなことよりも俺をクラスから追放だなんて暴挙を阻止しないといけない。
「俺がクラスで一番魔法知識があるのはみんな知っているだろ。スキルがダメでもみんなの役に立つことはできるはずだ。それにわざわざ人数を減らす必要もないだろ。」
一般的に人数が多いほどクラスとしての能力が上がるとされていて、クラスからメンバーと辞めさせるとことは滅多にない。
「いや、お前がいると俺たちの大切な取り分が減るじゃないか!!」
「え?」
「俺たちはこれからS級クラスとして莫大な収入を得ることになるんだ。なんでお前みたいな無能スキルに取り分を渡さなきゃいけないんだ。みんなもそう思うだろ?」
ダドリーがクラスのみんなに同意を求める。
「確かにそうだな」
「働かざるもの食うべからずってな」
「私もそう思う」
ダドリーの取り巻きであるドイル、ガーゴ、マリシアの3人が冷たい表情でそう言う
他のクラスメイトも多くが同意しているようである。
「ちょっと待ってよ。俺が抜けても20人が19人になるだけだよ? 取り分なんてほとんど変わらないじゃん」
「でも少しは少なくなるわけだからなぁ」
「タダ飯食うやつは許せねぇよ」
「お金は大切よ」
また取り巻きの3人がそう言う。やはり目はゴミでも見るように冷たい。
そしてリーダーのダドリーが口を開く。
「まあそう言うことだ。お前をクラスから追放する。俺らは最終試験に合格して冒険者として優雅に暮らしていくからな」
「で、でも、そもそもメンバーをクラスから追放することなんてできないはずだ!」
「ああ。だから俺に考えがある。ティア!!こっちにこい!」
「は、はい」
クラスメイトたちの一番後ろにいたティアが怯えながら前に出てきた。ティアは普段からダドリーたち4人の後ろにくっついて、何かと雑用をやらされている。
「こいつはお前と違って役に立つんだ。例えばこうやってな。スキル発動! <勇者の加護・聖剣>!!」
ダドリーは突然、さっき授けられたばかりのスキルを発動した。
次の瞬間ダドリーの手元から一面を包むほどの青い光りが放たれた。それは徐々に凝縮されていき、2m程の巨大な剣となってダドリーの手に握られた。
「ほう、俺にふさわしいスキルだな。さあ切れ味を確かめよう。」
ダドリーはそう言うと、巨大な剣を隣にいたティアに向かって振り下ろした。
「キャアーー」
ティアが血を流して倒れる。
俺はティアに駆け寄る。
「大丈夫か!?ダドリー、急になんてことをするんだ!」
「安心しろ致命傷にならない程度に抑えて切った」
「何が目的なんだよ!」
「目的か? それはこうだ」
ダドリーはニヤリと笑うと大声で叫んだ。
「助けてくれ!! ヤマトが突然クラスメイトを襲いだした!!」
「なに!?」
その大声を聞きつけて最終試験の関係者や教師たちが集まってきた
「何があったんですか?」
「ヤマトが自分のスキルがハズレだったことで自暴自棄になってクラスメイトを襲いだしたんです!」
さっきまでの邪悪な表情が嘘の様に、ダドリーが優等生そのものの態度で教師に俺がティアを襲ったと報告する。
「ち、違います。ダドリーが突然ティアを切ったんです!!」
「どっちが本当なんだ? 君達も見ていたんだろう。誰が彼女を襲ったんだい?」
教師がそう聞くと、クラスメイトたちはゆっくりと腕をあげ、そして指差した。
無実であるこの俺を。
「君がやったのか」
いつの間にか駆けつけていた校長が言った。
「い、いや僕じゃ、、、」
「ヤマト=ウェルベルシアよ。貴様の最終試験は不合格だ。そして貴様をこのクラスから追放する」
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