第八話 孤児院の子供達
アイルに連れられてやってきた孤児院は、かなりボロボロだった。
所々石壁が崩れており、手入れなんて殆どされていないのだろう。穴が開いててそこから風が入ってきそうだ。
…今はまだ暖かいからいいけど、冬はキツそうだぞ、これ。
そう言えば、今の季節ってどうなってんだろ。俺の携帯は十月の半ばになってるが、この暖かさはどう考えても夏に近い。後で聞いてみるか。
「皆、入るっすよー。」
俺がそんな事を考えている内に、アイルが扉をノックして声を掛けると、中から返事が聞こえてきた。
「アイルおねーちゃん、おかえりー!」
「ねーちゃん!」
開かれた扉から数人の子供達が出てくる。子供っつっても見た目はどの子も小中学生くらいで、そこまで小さくはないけど。
何かの動物の耳が生えた子もいれば、俺と同じ人間の子もいる。ここは人間も獣人も関係なく一緒にいるらしい。
やっぱ、険悪なのは元々の住人と急にやってきたあの男達だけなんだろうな。
「今日はお肉、持ってきたっすよ。」
「お肉!?」
「皆、準備をお願いっす。」
「「はーい!!」」
アイルがホーンラビットの肉を子供達に渡すと、嬉しそうに別の場所へと駆けていく。どこ行くんだろうと考えつつも、俺とアイルは中に入ろうとしたところで、一人の子供と目が合った。
「…アイル、この人、誰?」
「ああ、この人はシュン。森で出会った旅人で、ラージルの町に行く途中っす。」
「よそ者の人間…。アイル、変なことされてない?暴力は?」
おい、聞こえてんぞ。あからさまに表情を歪めたところで、改善する訳じゃないから大して意味がない。こちらを怪しむ様な視線でジロリと見るが、俺は気にしないフリをする。
正直、気にはなるが突っかかってもしょうがないだろう。
「大丈夫っすよ、カイル。シュンはアイツ等とは違う。それに、かなりのお人好しっす。」
「…別にお人好しのつもりはねえけど。」
「まあ、そう言うことにしとくっすよ。ほら、先にお肉の準備するっす。」
「……分かった。」
すれ違い様にキッと睨まれたが、知らん振りして俺はアイルの後に続いて中へと入る。
外の外観から予想はしてたが、やはり中もボロボロだった。激しい損傷はないものの、外の夕日の光が壁の穴から差し込んでいるし、床板も所々剥がれていて、地面が見えている。
外観がまあまあ大きいから二階もあるのかと思ったら、ただ天井が高いだけだった。上の方には小窓がいくつかあって、朝になったら勝手に陽が差しそうだな。
そして内装だが、まず大きな長椅子が右側に並べられてる。毛布の様な薄い布がかかってるから、あれが多分寝床なのだろう。
左側には椅子とテーブルが幾つかあるから、食事はそっちで取るっぽい。他に扉はなく、どうやら部屋はここだけらしいな。
…キッチンねえけど、どうやって肉を食べるんだ?
「ねぇちゃ、おなか、った。」
「ああ、リオン。もうちょっと待ってるっすよ。もう直ぐ用意出来るから。」
「……あれ?」
アイルの服を引っ張りながら話しかけてきたのは三、四歳くらいの男の子。頭にレトリバーみたいなペタっとしてる感じの犬っぽい耳がついてる。
「てっきり、全員十歳は超えてるのかと思ったけど、こんなちっこい子もいたのか。」
「あー、他の子はそうなんすけどね。リオンは特別っす。」
「特別?」
俺が聞き返すと、アイルの表情が沈んだ。そっと目を伏せ、リオンと呼ばれた小さな子供を見つめる。
「…この子の父親は、二年前に魔物に殺されたっす。その直ぐに母親も後を追う様に…。だから、この中の誰よりも幼いっす。」
「魔物に、って…。」
「どんな魔物かは分からないっすけど、遺体の傷跡から見て、恐らくは爪の鋭い獣系の魔物だろうって。生態系が変わってから、アタシ等の手に負えない魔物が増えてるっす。今までいなかった魔物に対抗する力が無いアタシ等じゃ、出会わない事を祈って町の外に出かけるしかないんすよ。」
そう言って悲痛な表情のアイルは、リオンの頭を優しく撫でる。撫でられた本人は、どう言う話なのかよく分からなかったようで、気持ち良さそうに笑っていた。
「えっと、リオン…だっけ?」
「うん。にちゃ、だぁれ?」
「俺はシュン。ちょっとだけお邪魔するな。」
「はぁい。」
目線が合うように屈んで挨拶すると、ニコリと笑って握手を求めてきた。ちょっと戸惑いながらもその手を握ると、物凄く柔らかい。小さい子の手って、こんな柔らかいのか…。
そして何よりも。
「えへへー。」
ふにゃりと笑うその表情。可愛すぎるだろ、これ…。今まで、小さい子といえばひたすら怖がられてた記憶しかない。こんな風に笑いかけられた事なんて、初めてだ。
「えっと、リオンは何歳なんだ?」
「んと、えと、みつ…!」
そう言いながらも、手の形が四になってる。難しかったのか、三本の指が立てられないらしい。
「おー、そっかぁ。ちゃんと言えて偉いな。じゃあ、教えてくれたお礼に、俺のとっておきをやろう。」
「とて、き?」
舌足らずなところがもう駄目だ。俺には兄弟もいねえし、小さな子供と接する事はまずありえない。
まさか、こんなにも癒されるもんだとは知らなかったな。
俺は緩みそうになる表情を何とか隠し、鞄をガサゴソと漁ってお目当ての物を引っ張り出した。
「ほら、手、出しな。」
「てて。あい。」
言い方がちょっとあれだったけど、リオンは素直に両手を差し出した。手を器の形にして、手に持っている瓶の蓋を開ける。カラカラと音を鳴らし、それはリオンの掌に落っこちた。
「金平糖だ。これなら小さいし、食べられるだろ。」
「こんぺ?ほしさま、みたい!きれ!」
「そーそー、お星様。甘いぞー。食べてみ?」
「…ほしさま、たべる?」
不思議そうに首を傾げる様が、これまた可愛い。やっぱ、癒しって大事だなぁ…。
「あ、んま…!」
「お星様、甘いだろー。も一個いるか?」
「ん!」
あっという間に食べ終わったようで、再び掌を俺に差し出した。今度はちゃんと最初から器の形で。
俺は瓶からまた一個落として、リオンが嬉しそうに食べる。あー、子供っていいなぁ…なんて考えてたら、後ろから服を引っ張られた。
「うおっ…!何だ?」
振り返ると、そこには外に出て行ったはずの子供が何人もいて、ジッと俺の方を見ている。どうかしたのかと口を開きかけたら、服を引っ張った一番近くにいた子が、バッと手を上げた。
「あ、アタシ、イルマ!十一歳です!」
いきなりの自己紹介に、思わず目がパチパチと瞬きをする。意味が分からず、とりあえず俺も挨拶し返した方がいいかと少女の顔を見ると、その目線は俺の手元へと注がれていた。
次の瞬間、俺は直ぐに納得した。
「俺はシュン。イルマ、宜しくな。」
そう言って瓶を少女の目の前に持っていけば、嬉しそうな満面の笑みで両手を差し出してきた。
俺はリオンにあげたように、少女の掌へと金平糖を二つ出す。
「あ、ありがとう、シュンにーちゃん!」
「はい!俺、ユウト!十一歳!」
「ぼ、僕はトオルです…!十二歳!」
次々と手を挙げては名前と年齢を言って自己紹介してくる。俺も一人一人に挨拶を繰り返し、皆の掌に金平糖を二つずつ渡していく。
どうやら、ここには全員で八人いるらしい。皆幸せそうに金平糖を食べている。はー、マジ癒されるわ。
しかし、最後の一人になったカイルだけは、俺をチラチラと見るだけで何も言ってこない。
甘いもんは好きじゃねえのか?
「シュン。良いんすか、そんな貴重な物を。お菓子なんて、ここじゃ絶対に手に入らない代物っす。」
「あー、まあ、ちょっとだけだしな。まだあるし。アイルもいる?」
「……欲しいっす。」
「ほい、どーぞ。そう言えば、アイルって幾つなんだ?」
「アタシは十八っすよ。」
「俺は十六。年上だったのか。」
敬語とか使った方がいいか?なんて聞いてみたが、アイルは首を横に振って今のままでいいと言った。
その方が俺も楽だし、助かるな。
「んー、甘い…!これがお菓子…!」
「この町じゃ無理でも、ラージルの町に行った時は食べられなかったのか?」
「元々、この町じゃ甘味は果物とかで、お菓子なんて売ってないっす。砂糖や蜂蜜を使ったお菓子は結構高いんすよ。それに、お金があったとしても、お菓子を買うくらいならもっとお腹に溜まるものを買うっすから。」
なるほど…、そりゃそうか。食糧難の現状で金のかかる物なんか買わないよな。
「あー、幸せっす…。」
俺も甘いもんは好きだが、ここまで幸せそうな顔で食べたことはない。よほど美味しいんだろうな。
「ありがとっす、シュン。こんな美味しいお菓子、初めて食べたっす。」
「まあ、喜んでもらえたんなら良かったよ。それより、肉はどうしたんだ?」
「準備はもう終わったっすよ。」
「え?もう?」
そんな時間経ってないと思ったけど、どうやら全部終わらせてたらしい。アイル達に連れられて孤児院の中から外に出て、裏側の方へと向かう。
「お、おぉ…。」
そこには古い家にありそうな石造りの大きな竈があった。屋根も無く完全に野ざらしだが、大丈夫なのか、これ。雨降ったりしたら使い物にならないんじゃ?
「今焼いてるところっすから、もう少ししたら出来るっすよ。」
「あれ?肉、全部焼いたのか?」
「そりゃ、配らないといけないっすから。」
「どこに配るんだ?」
まあ、確かに二頭分をこの孤児院だけで消費するわけじゃねえよな。村の皆に分けるって言ってたし、ここだけな訳ないか。
「アタシが持ってきた食料は、まず孤児院で一番最初に配るっす。その後、子供や妊婦、病人へと優先的に配って、最終的には他の皆に順番になるっす。」
「へー、そうなのか。」
「シュンが売ったお肉も、他の住人に少しずつ配ると思うっすよ。売ると、毎回売買した人数分のお金がとられるから、交換やお裾分けって形でやってるはず。」
…道理で、一回分のミカジメ料が大して高くないわけだ。売る人間一人に対して全員分とってんのか。それも毎回。
さすがにちょっと高いんじゃねえか…。
「でも、何で焼いちゃうんだ?生のままの方が貰う方も嬉しいんじゃねえの?」
既に調理済みを渡されると、直ぐに食べなきゃいけない。どうせなら自分の好きなタイミングで食べられる方が良さそうだけど…。
「生のままだと、お裾分けだって言っても本当は売ったんじゃないかって疑われて、家まで押し掛けて来るんすよ。最近はそれでも持ってこうとするけど、ただ焼いただけの肉はそこから好きなように調理もできないから、生のままよりも持ってかれる可能性が下がるっす。」
アイル達も色々と工夫してんだな。肉だけの旨味ってのは、舌の肥えた奴等には物足りないそうだ。
正直、昨日初めて食べたホーンラビットの肉ならそのままでも美味いだろうな、とは思う。
まあ、勿論ちゃんと味が付いてる方がいいけど。
「中までしっかり焼けば、そこから調理すると肉が焦げるから無理っす。アタシ等はこれだけでも十分ご馳走っすから、全然平気。」
もくもくと上がる煙が、風に乗って夕陽の方へと流れる。そろそろ完全に陽が暮れそうだ。
「それじゃ、皆で宜しくっす。」
「はーい、アイルねーちゃん!」
「行ってきまーす!」
ボーっと空を眺めていたら、肉の用意が出来たらしい。五人の子供達が、焼けた肉を器へと詰め込み、鞄に入れて走り出した。
どうやら年長組が配りにいくらしい。ここに残るのはまだ三歳のリオンと十一歳のイルマ、そしてカイルだ。
カイルだけは自己紹介という名の金平糖配りに参加しなかったから、年齢が分かんねえんだよな。見た目的には中学生くらいだと思ってたけど、実はもっと下?
「カイル、アタシとシュンは家に帰るっす。後は頼むっすよ。」
「……分かった。おい、シュン。もしもアイルに何かしたら許さないからな。」
孤児院の中から俺とアイル、カイルの三人が出てきた。やはり俺のことをジロリと睨んでくる。
「大丈夫っすよ、カイル。心配症っすね、本当。」
「…皆にお菓子配ったのだって、何か裏があるかも知れねえじゃん。そう簡単に、他所の人間なんか信用できねえよ…。」
アイルの事が本気で心配なんだろうな。不安そうな目でアイルの服を掴み、アイルは苦笑いしつつもカイルの頭を撫でている。
…少しして中からカイルを呼ぶイルマの声に、二人がハッとした。アイルの服から手を離すと、カイルは孤児院の中へと戻って行く。
「皆、仲が良いんだな。」
「家族っすからね。アタシは冒険者になる時にあそこを出たけど、カイルはアタシが出て行った後でも最年長者としてずっと皆の面倒を見てくれてるっす。」
「最年長者だから残ってたのか。カイルって幾つ?」
「シュンと同じ十六っすよ。」
同い年だったのか。やっぱ、食糧難のせいか見た目がかなり幼く見えんな。
それにしても、成る程。面倒見役に最年長は残して、他の年長組で出かけてたんだな。
だからあんなにも警戒心が強いのか。孤児院の皆を守るために。
「良いやつだな、カイル。」
「ふふ、自慢の弟分っすよ。」
「…そうか。」
俺は兄弟なんていなくて一人っ子だったから、弟だって言うアイルの気持ちはあまり分からない。
だけど、家族だってんなら俺にも沢山いる。親父とお袋だけじゃない、組員全員が俺の家族だ。
……まあ、あんま自慢は出来ねえけど。
「普通の家だったらなぁ…。」
「家がどうかしたんすか?」
「あー…いや、何でもねえ。」
思わず溢れた呟きに、アイルが反応する。この世界じゃどうか知んないけど、俺のいた日本じゃヤクザなんて存在するだけで嫌われる人達だ。
いくら親父達がアレコレ言おうとも、それが世間一般の認識なのだ。仁義だ何だは漫画や映画だけで、実際はお金のためなら何でもする暴力集団。それが極道。
そう言う意味では、アイツ等と何も変わらないんだよなぁ。ぶっちゃけ、あれが普通のヤクザモンの姿だと思う。
「……シュン、着いたっすよ?」
「悪い、考え事してた。」
アイルの足が止まってたのに全く気が付かなかった。ボーッと歩き続けていた俺の手をアイルが軽く引っ張って、やっと考え事を止める。
手を掴まれた時は思わずビクッとしたけど、平常心、平常心。こんなんでビビったのがバレたら、めちゃくちゃ恥ずかしい。
「ただいまー。」
「お邪魔しまーす。」
アイルが扉をガチャリと開いて中に入ったので、俺も挨拶しながら後へ続く。
家に入ると、テーブルや椅子、キッチンがある大きな部屋と、奥の方に寝室らしき部屋があるのが分かる。
多分、家の外観的にこの二部屋だけだろうな、奥がすっごく狭くなければ。
「今お茶入れるっす。」
「すまん、ありがとう。」
椅子に座って待つように促され、俺は大人しく座った。アイルは棚から鍋とコップを二つ出し、鍋を竈の上に置く。
「《火の魔素よ》。」
アイルが魔法を唱えると、竈に火がついた。鍋の中に直接茶葉を入れてるが、ある事を思い出した今の俺には、そんなことはどうでも良かった。
「そうだ、お湯…!」
お茶を出すってことはお湯が沸かせるってことだ。つまり、遂にカップ麺が食える…!
「アイル、後でいいからまたお湯頼むな!」
「そう言えばそうだった。分かったっす。」
グルグルと菜箸のように長い棒で鍋をかき混ぜ、暫くすると火を消し、コップへと注ぐ。俺の前に置かれたコップには、茶葉が跡形もなく消えた茶色のお茶が入っていた。
…粉末じゃなかったけど、溶ける茶葉ってあるのかな?
「頂きます。」
軽く香りを嗅げば、ほうじ茶のような良い匂い。…しかし、飲んでみると味は普通のほうじ茶とは全然違うった。飲みやすいはずのほうじ茶には無い、強い苦味と渋み。
咳き込んだりはしないけど、思わず顔を顰めてしまうくらいにはキツイ。
「おぉー、渋い…!これ、なんて言うお茶?」
「ホル茶っす。味はちょっとキツいけど、栄養価が高いからこれでお腹の足しにするんすよ。」
「これも貴重な食事ってことか…。これ、鍋に茶葉を直接入れるんじゃなくて、沸かしたお湯で濾したりとかはしないのか?」
「濾す…?お湯で溶けるのに、どうやって濾すんすか?」
「あ、そうか…。」
濾す必要がないから、そのまま鍋に入れてんのか。急須とかがあるわけでもないし、このホル茶ってのはこういう味なんだな。
…茶葉を入れすぎて濃くなったお茶でも飲んでる気分だ。
「あれ、そういやアイルは晩ご飯どうするんだ?肉、持ってきてないよな?」
「アタシはもう十分食べたから、今日のご飯はこれっすよ?」
「……は!?」
アイルが指差すのは目の前のコップ。え、これが晩ご飯とかマジで言ってんの?
「そもそも、町にいる間は晩ご飯を食べない事が殆どっす。特に行動することも少ないから、さっさと寝て明日の朝に食べるんすよ。町の皆もそうっす。」
「でも、さっき焼いた肉は晩ご飯になるんだよな?」
「いや、多分どこの家庭も明日の朝用に取っといてるはずっすよ。孤児院は食料を保存するための魔道具がないから、配り終わったら皆で食べてると思うすけど。」
「マジか、めっちゃ腹減るじゃん。」
晩ご飯食わずに寝るとか絶対に無理。寧ろ、腹減って寝れねえよ。
「狩りに出る時は何かあってもすぐ動けるように、何かしらは食べるっすけどね。」
「あー、だから昨日は食べてたのか。」
まあ、危ない魔物がいる森の中だし、万全の状態でいたいよな。
「そうっすよ。ところで、結局お湯はどうするんすか?」
「そうだ、お湯!もういけるのか?」
「お茶入れたのがまだ残ってるから、これを飲み干せば…。」
「直ぐに飲み干すから、もっかい沸騰させてくれ!カップ麺がこれで食える…!」
この世界に来て二日、漸くまともな飯にありつける…!カップ麺がまともかって聞かれたら違う気もするが。
それでも、食べ盛りの高校一年生にパンだけ…とか、肉だけ…なんて、物足りなさすぎる。昼ならともかく夕飯でこれはキツい。
肉は美味かったけど、どうせなら白米も欲しかった。
「カップ麺?」
「そう!ずっとこれが食いたかったんだよ!」
「随分とテンション上がったっすね。どう言う物なんすか?」
アイルに聞かれ、遂にカップ麺が食えるとテンションの上がった俺は、これがどれだけ良い物かを説明する。
興奮気味に早口で捲し立てる俺の姿を見て、アイルは不思議そうに首を傾げるだけだった。