10話目
よし!ポーションも作れたしそろそろ拠点に………って!
私、今迷子じゃんかぁーーーー!
はぁ、ポーションが作れることに舞い上がって忘れてたけど私、今迷子だったんだよね………。
「どうしよう…」
こんな事になるなら目印とかつけておけばよかった……!!
すぎたことを悔やんでも仕方ない。
とにかく探さなければ。太陽が頭の上にあるので、今は昼頃だろう。
まだ夜までには時間がある。せめて安全な場所を探さないと。
こんな時な使えそうなスキルは……
と、ステータスをひらく。
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種族スキル
《狐火》《変化》《操影》《幻聴》《幻覚》《悪食》《操緑》
new《身体強化》《クリーン》《五感強化》《俊足》
ユニークスキル
《肉体変化・スキル選択》《テイム・サモン》《言語理解》《鑑定》
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…………………あ!!!!肉体変化!
今までずっと使えないでいたけど、今日、悪食で色んな魔物を食べたから、今ならつかえる!
それに、あの魔物なら………!
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「ふわぁー!やっぱり凄いなぁ!」
拝啓、お母様。元気にしていらっしゃるでしょうか。
私は今、異世界で、空を飛んでいます。
異世界での仮拠点を、空から探しています。
「I can fly !」
そう。私は鳥になる。というかなってる!現在進行形で!
最初に私が倒した魔物。華孔雀。
最初に見た時、あの鳥は空を飛んでた!
空を飛べる=空から探せる!
拠点にしている一本の木を空から探すのは難しいけど、私の拠点の近くにはちいさな湖がある!つまり、あの湖を見つけられれば拠点も見つかる!
今、空から見下ろした感じだと、この辺に湖は2つだけだ。
そのうちひとつはとてつもなく大きい。という事は消去法でもうひとつの湖が拠点の近くの湖という事になる!
私はその小さい方の湖へ向かっていった。
これでやっと拠点へ帰れる!!と思った、その時だった。
空を飛んでいなかったら、見つけられなかったと思う。
拠点の近く、湖の方向とは反対方向に少し開けた場所を見つけた。
そこにポツンと、黒色の大きな丸い何かが一つだけあった。
何も無いところに一つだけというのが気になって、拠点より先にそちらへ向かった。
あの黒いのはなんだろう…。もしかしたら魔物とか、危険なものかも…ハッ!もしかしたらレアな素材が手に入る可能性も………だとしたら、
(コレクターの名にかけて採取しなければ……!)
私の中の何かが燃えた。
結局好奇心には抗えず、近づいて鑑定で調べてみることにした。やばいものだったら拠点を変えないと行けなくなるかもしれないし。
警戒は忘れずに、少し離れた草陰に降りた方がいいよね。
鳥のままだと歩きにくいし、変化をといて、
………グッ!!い、痛いっっ!
変化に痛みを伴うことを忘れて、しばらく痛みに悶える事になった。ぴえん。
とりあえず鑑定の届くところまで近づかなければいけない。ソロリソロリと音を立てないように草陰を移動する。
だいぶギリギリのラインまで近づいて、草陰から顔だけを出して黒い物を観察する。
空からでは分からなかったが、それは黒い魔物だった。
巨大な猫?の様な。どちらかといえば、パンサーに近いかもしれない。よく見れば身体中が傷だらけだ。腹からは血が流れていて右の前足にはトラバサミの様なものが噛み付いていた。
今すぐ飛び出してポーションを使いたくなる衝動を抑えて、まず《鑑定》する。
今日の戦闘で既に手負いだった魔物と遭遇して気づいたけど、鑑定では魔物の状態も分かるらしい。つくづく便利だ。
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シャドウパンサー ランクSS
群れを作ることは少なく、基本単独で行動する。
影を操って狩りをする。自身が影になることもでき、影になった状態では物理攻撃は効かずスピードも実体の3倍になるといわれている。
状態:重度の怪我 右前脚にヒビ
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ランクSS!?え、絶対強いヤツでしょ。
シャドウパンサー強すぎだって。森の長的なポジションでしょ。
今日戦っていくうちにランクの基準が分かってきた。今日戦った魔物はせいぜいランクDとかEで、不意打ち+動きをとめられれば私でも勝てるレベルだった。
ランクCの華孔雀と正面から戦わなくてほんと良かったと思ってる。
ちなみに最初の方で囲まれたレッドウルフはランクFだった。結構よわよわだったんだね。
手こずったのはよく考えなかったのと正面から戦ったからかな。反省反省。
つまり何が言いたいかって言うとね?ランクSSなんてキチガイなわけよ。今までのとのレベル差がありすぎる。ランクFにすら手こずる私なんて、瞬殺されてしまうだろう。
もう一度シャドウパンサーをみる。
……手負いで、とても痛そうだ。
トラバサミって事は人間とかの罠にかかったってこと?少なくとも罠にかかったことは間違いない。それ以外でも身体中傷だらけでボロボロだ……。
チラッと手元に目をやる。私の手の中にはインベントリから出した中級ポーション。
もしここが元の世界で、シャドウパンサーが猫だとしたら、迷わず保護して病院へ連れていくだろう。ポーションがあったなら迷わず使う。
それでも私を躊躇わせるのは、ここが元の世界ではなく、自然界ということだ。
自然界では弱肉強食。弱いものは食べられ、死んでいく。可愛そうでも仕方の無いこと。
それでも私はシャドウパンサーを見ていられなかった。助けたいと、思ってしまった。