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ルークの記録 ②

昨夜からアラン王子の姿が見えない。おかしい?何処にいるのだろうか?


 昨夜、俺達がジェシカと食事を済ませて帰ってきた時、アラン王子はとても機嫌が悪そうだった。背後にジェシカがいるのを見ると明らかに動揺しているのが分かった。

あの後、2人は一緒に出かけたが、一体何処へ行ったのだろう?

まあ、11時からの終業式には間に合うだろう・・・・と思っていたのに、結局アラン王子は姿を現さなかった。

何故だろう?おまけにジェシカも今朝クラスで見かけていない。

友人のエマは心配そうにしているし、マリウスの奴は始終イライラしており近寄り難い雰囲気を全身から放っている。あの様子だと恐らくマリウスもジェシカの居所が分からないのだろう。

時折マリウスは、おかしいだの、マーキングがどうのとブツブツ独り言を言っているが、俺には何の事かさっぱり分からなかった。


 俺も嫌な予感が頭を過る。ま、まさか2人は・・・?いや、そんな馬鹿な事があってたまるか!


 俺は式に参加しているグレイを盗み見る。あいつ、呑気に欠伸なんかしてやがる。なんて能天気な奴なんだ。アラン王子とジェシカの事が気にならないのか? 


終業式が終わり、各自が里帰りを始めた頃にようやくアラン王子が寮に戻ってきた。


「アラン王子!一体、今迄どちらに行かれていたのですか?!どれだけ心配を・・?」


そこ迄言いかけて俺は口を閉じた。何だ、アラン王子の様子がおかしい。

俺の声が聞こえているのか、妙にボ~ッとしているかと思うと、顔に笑みが浮かぶし、兎に角上の空なのだ。


「おい、アラン王子は一体どうしちまったんだ?何があったんだろう?」 

鈍感なグレイも流石に気になったのか、耳打ちしてくる。

何があっただと?むしろ聞きたいのはこちらの方だ。

「そんな事、俺が知る訳無いだろう?」

心底不機嫌そうに言うと、能天気男が言った。


「よし、俺が聞いて来よう!」


はあ?何を言い出すのだ?こいつは。俺が止める間もなく、グレイはアラン王子に尋ねた。


「アラン王子、今日はいつになく御機嫌がよろしいですね。」


あのバカッ!!本当に聞きやがった!なんて奴だっ!俺は心の中で舌打ちをした。


「そうか?やはり分かるか?」


明らかに楽しそうなアラン王子。


「ええ、分かりますよ。やはりジェシカに元気付けて貰ったんですか?」


ピクリ。

俺はアラン王子の反応が気になり、様子を伺った。

え・・・?!

見るとアラン王子は耳まで顔を真っ赤に染めて口元を押さえている。

ま、まさか・・・2人は本当に・・・?!

一方のグレイも流石にアラン王子の変貌ぶりに何か察したのか、顔色が真っ青になっている。


 アラン王子の様子を見る限り、昨晩2人の間で何があったのかは聞くまでも無い。と言うか・・・聞きたくないっ!

想像をするだけで気分が悪くなってくる。でも・・・考えすぎだろうか?

そこで俺はアラン王子に鎌をかけてみる事にした。


「アラン王子、車の手配はもう済んでおります。いつでも出発出来ますが・・・。ソフィー嬢に挨拶は済ませて行かれるのですよね?」


すると今までの表情からは考えもつかない程、アラン王子は不機嫌な表情になった。


「挨拶?そんなものは必要ない。」


え・・・?昨日までは出発する時は連絡を入れると言っていたのに・・・。


「そ、それでは休暇の間に城にソフィー嬢を呼ぶ約束をされていましたよね?そちらの方はどうされるのですか?」

尚も食い下がって尋ねると、アラン王子は激しい口調で言った。


「煩い!俺の前であの女の事を口に出すな!城へ呼ぶだと?冗談じゃないっ!いいか、俺はもう二度とあんな女とは一切関わるつもりは無い!もし城に来ようものなら反逆罪で投獄してやると伝えておけっ!」


 そして俺はアラン王子の独り言を聞き逃さなかった。


「折角の楽しい気持ちがあの女のせいで台無しにされてしまった・・・。」


アラン王子・・・その楽しい気持ちって、ジェシカと昨晩の事を言っているのですか・・・?

俺は空しい気持ちで、立ち尽くしていた―。

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