※第6章2 明日の未来の為に
曖昧な性描写有ります
1
公爵が怪我を負った翌日―。
ソフィーの目から逃れるために公爵が私の為に魔力で生み出した隠し部屋が今の私の自室となっている。
そこへ早朝から公爵が訪ねて来ていた。
「ドミニク様、怪我の具合は・・・本当にもう大丈夫なのですか?」
「ああ・・・。ジェシカ、お前のお陰で怪我の方は傷跡が残らない位に綺麗に治っている。もう痛みすらない。本当に・・・ありがとうジェシカ。お前は俺の命の恩人だよ。」
公爵はソファに座る私の隣に来ると言った。
「恩人なんて、そんな・・・。私は何もしていません。ただドミニク様を助けたくてあの時は必死で。でも・・・もう何とも無いのですね?それは良かったです。」
言いながら私は公爵の顔を見つめた。それにしても・・・私はこの1週間の記憶が全く無い。一体今迄どうやって過ごしていたのか・・・記憶の断片すら残ってはいなかった。ただ、公爵に迷惑をかけてしまったのは確かだろう。何故なら・・・たった1週間で公爵の頬はすっかり削げ落ちていたのだから。
「どうした?ジェシカ?俺の顔に何かついているか?」
公爵は穏やかに笑う。・・・以外な一面だ。今まで・・・こんなに柔らかな笑顔を一度も見た事が無かったのに。
「あ、あの・・・。たった1週間の間に・・随分やつれてしまったのですね・・。私・・・きっと何かご迷惑をおかけしてしまったのでしょうね。何も記憶が無くて・・申し訳ございません。」
「ジェシカ・・・ッ!俺を・・・心配してくれるのか?」
言うといきなり公爵は私を抱き寄せ、顎を摘まむとキスをしてきた。
「な、な・・・何をするのですかっ?!ドミニク様っ!」
思わず真っ赤になっておしのけると、公爵は不思議そうな顔をしたが、その瞬間慌て始めた。
「す、すまなかった・・!つい、いつもの癖で・・・!」
え・・・?いつもの癖・・・?今・・何か気になる事を言われた気がする。
「あ、あの・・・ドミニク様・・・。いつもの癖・・・と言うのは何でしょうか?」
「い、いや・・・。聞かない方がいいかもしれない・・・。世の中には・・・知らない方が幸せと言う事もあるから・・・。」
公爵は顔を真っ赤に染めて言う。そんな・・・顔を赤くされて、意味深な事を言われたら・・気になって仕方が無い。
「そんな事を言わずに・・・教えて頂けませんか?」
「え・・・ほ、本当に・・・言ってもいい・・・のか・・?」
ますます公爵の顔が赤く染まっていく。
「はい、お願いします。」
「お前は・・・何も記憶が無いから・・・信じられないだろうが・・俺がこの部屋を訪れる度・・・お前は俺を求めてきて・・・もう数えきれない位関係を持って来たんだ・・・だからそのせいで感覚が麻痺してしまったようで、つ、ついお前との距離感が分からなくなって・・・・。」
え・・・?ま・まさか・・・私から・・公爵を求めて・・・?で、でも・・・断片的な記憶がある。気付けば常に公爵の腕の中にいたような・・・。
「そ、そ、そうだったんですね・・・っ!で、でも・・・もうその事は・・・忘れて下さいっ!ど、どうか・・・していたんですっ!私は・・・。」
「そう・・・か・・・?そうだよな・・・。俺のせいで、一時的でもお前の心は壊れてしまったのだから・・・。でも・・・俺はすごく・・幸せな時間をお前と過ごす事が出来たよ。今まで生きて来た人生で一番幸せな時間を・・・。ジェシカ、本当にありがとう。だからこそ・・俺はお前を必ず守ると決めた。」
「え・・・?ドミニク・・・様・・?」
・・何故だろう?何か・・胸騒ぎがする。
「実は・・・ジェシカ・・・。お前が元に戻ってくれたからこの話をするのだが・・正直、もうこれ以上ソフィーの目を胡麻化すには・・限界なんだ。」
「え・・?限界・・・?」
何が限界なのだろうか?
「ソフィーが・・・俺を怪しんでいる。」
急に公爵は小声になり、私の耳元に口を寄せると素早く言った。
「あ、怪しむって・・・一体何の事ですか?」
「いつまでもジェシカ・・・お前の行方が分からないと言う事と、俺の自我が完全に無くならない事についてだ。だから俺はソフィー相手に一芝居打とうかと思っている。」
「え・・?一芝居・・・とは?」
「ああ・・。ソフィーはお前を早く捕らえて、罰を与える事を待ち望んでいるんだ。」
「え・・・?」
そ、それじゃ・・・やはり私は捕まって・・・?
「だから、俺はそれを逆手に取ろうと思っている。」
公爵はニヤリと笑みを浮かべると言った。
「逆手に・・・・?一体それはどういう・・・?」
「いいか、良く聞け、ジェシカ。明日、俺はお前を見つけて捕らえたとソフィーに報告するつもりだ。」
「え・・?」
「ソフィーは一刻も早くお前を裁判にかけて、言われなき罪を被せて裁こうとしている。」
「!」
「実は・・・もうお前を投獄するべき牢屋も完成しているんだ。この城からさらに東へ行くと、やがて海に出る。この城を発見した時にその場所も見つかったのだが・・断崖絶壁の上に建てられた、監獄が建っているんだ。ソフィーはそこを新たにお前を投獄する牢屋として・・・作り直させた。」
「そ、そんな・・・。」
私は両肩を持って震えた。やはり・・この間見た夢が現実に・・・?
すると公爵が私を抱き寄せると言った。
「ジェシカ・・・。ソフィーに捕まるんだ。そして・・裁判を受けろ・・。」
公爵の言葉に耳を疑った。
「え・・?い、一体今何と・・・?」
「ジェシカ・・・・。俺はお前と・・深く深くつながった事で・・・お前と離れていても自分の自我を失う事が・・無くなったんだ。だから・・俺はソフィーの前で演技をする。」
「演技・・・?」
「ああ。お前を連れてソフィーの元へ行き、そこで・・・辛いだろうが裁判を受けてもらう。でも大丈夫だ、俺が・・・必ず立ち会うし、人の数も減らす。なるべくお前に負担を掛けないように・・配慮するから。」
公爵は私の髪を撫でながら続けた。
「恐らく、ソフィーは罰を下し、お前を監獄塔へ入れるだろう。・・だが、安心しろ。時を見て必ず俺がお前を助けに行く。あの場所は・・・とてつもなく寒い場所なのだが・・・俺が魔法であの場所も温めてやる。そして・・時が満ちたらお前を助ける。」
「ドミニク様・・・・。」
本当に?本当にそんな事が・・・可能なのだろうか?
「だ・・・だけど・・・私がその牢獄から居なくなれば・・あっという間に見つかってしまうかもしれませんよ・・?」
「それなら大丈夫だ。俺の・・・身代わりの人形に仮の魂を吹き込める魔法は・・・覚えているな?」
「あ・・・。」
そうだ、公爵はあの魔法が使えたのだ・・・。そしてマシューも・・・。
「あの魔法に俺のありったけの魔力を注ぎ込めば・・・恐らく数日は持つだろう。その間に・・・ジェシカ、お前は出来るだけ遠くへ逃げるんだ。幸い・・お前には仲間が沢山いるだろう?仲間の元へ連れて行ってやるから後は彼等に頼むんだ。何、彼等は全員ジェシカを慕っている。絶対に力になってくれるはずだ。
俺は・・・その間に・・なんとしてでもソフィーを聖女の座から引きずり下ろし、愚かな真似をやめさせる。それでも・・・言う事を聞かないのであれば・・・最悪の場合は・・。」
そこまで言うと公爵は口を閉ざした。
え・・?ま、まさか・・・最悪の場合は・・殺すとでも言うのだろうか・・・?
「ド・・・ドミニク様・・。まさかソフィーを・・・?」
すると悲し気に公爵は笑った
「ああ・・・・そうだな・・・・。だが・・・その時は俺も死ぬ時だ。」
私は耳を疑った。え?その時は自分も死ぬ・・?一体どういう事・・・?
「俺は・・・お前の聖剣士であると同様に・・・一応ソフィーの聖剣士でもある。そんな俺が・・自分の聖女を殺したとしたら?もう聖剣士としても・・人としても失格だ。それに・・・あんな風になるまでソフィーを止められなかったのは・・側にいた俺の責任だ。ジェシカは知っていたか?ソフィーに反発していた学生達は・・皆地下牢へ送られて・・鞭で打たれるという拷問を受けて来たんだ。・・・俺には覚えが無いが・・・俺もその拷問に手を貸していたらしい。」
私は信じられない思いで公爵の話を聞いていた。でもデヴィットも3日間鞭で打たれる拷問をうけてきた・・・。
「仮に、ソフィーをこの手にかけた場合・・・その時は俺も死ぬ。ソフィーを1人にする訳には・・・いかないからな・・・。」
公爵の話を聞き、私の目にはみるみる涙が溜まって来る。公爵はそんな私の頬に触れると言った。
「ジェシカ・・・泣いてくれるのか?お前をこんな酷い目に遭わせた俺を・・・そしてこれからお前をソフィーに引き渡そうとするこの俺なんかの為に・・・?」
「そ・・・そんな言い方は・・・しないで下さい・・。自分なんかの為になんて・・・。どうか、どうかもっと穏便に解決する方法を・・・ん・・。」
突然公爵が私の顔を上に向け、口付けして来た。
「ド、ドミニク様・・・・・?」
すると公爵は私を抱きしめたまま、耳元で言った。
「ジェシカ・・・。お前を・・・抱かせてくれ・・・。」
「!」
私は耳を疑った。公爵は一体何を言い出すのだろう。
「明日から・・・俺はお前とは離れ離れになる・・・。今まで十分過ぎる程、俺とお前は身体を重ね・・・絆を深めてきたが・・果たしてそれがいつまで持つか・・・分からない。不安なんだ・・・。今のうちにジェシカを・・十分補充しておかないと・・・いつどこでソフィーの呪縛に飲み込まれてしまうかと思うと・・怖くて堪らないんだ・・・。」
私を抱きしめる公爵の身体が・・・声が・・・震えている。おそらく・・・公爵は相当恐怖を感じているのだろう。
そして、それと同時に再びあの媚薬のような香りが漂ってくる。
でも・・・私と・・・公爵の未来を変える為なら・・・。
「はい。私を・・・抱いて下さい・・。」
公爵から漂う魔族特有の香りが一段と強くなってくる。・・・そう言えば・・何故、マシューやヴォルフと同じ香りが公爵から匂うのだろう・・・?
私の頭がぼんやりと霞み・・・潤んだ瞳の公爵の顔が近付いてくる。
・・・私達は口付けを交わし・・・・気が付けばベッドに運ばれて公爵の腕の中に囚われている。
公爵に優しく身体を触れられながら全身にキスを受ける。
そしていつしか私は甘い声をあげ・・・彼の身体にしがみ付いていた。
ジェシカ・・・愛していると切なげに何度も囁く公爵の声が私の耳を擽る。
マシュー・・・ごめんなさい・・・。
今だけは・・・貴方の事を忘れます。
そして私は瞳を閉じた―。
2
翌朝―。
私は公爵の腕の中で目が覚めた。
するとすでに公爵は起きていたのか、私の顔をじっとベッドの中で見つめている。
昨夜も私と公爵は聖女と聖剣士として一緒に過ごせる最後の夜になるだろうと言う事で絆を強める為・・・公爵に抱かれた。
「ド、ドミニク様・・・お、起きていたのですか?」
「ああ・・・。少し前に目が覚めた。それで・・・すぐ側でジェシカが眠っていたから、その寝顔があまりに愛しくて・・見つめていたんだ。俺は・・今すごく幸せを感じているよ。」
そして笑みを浮かべる。
そ、そんな美しい顔で、そういう台詞を言うなんて・・・は、反則だ。私は思わず枕に顔を埋めた。
「どうした?ジェシカ・・・。何故顔を隠すんだ?」
公爵は尋ねて来た。
「は・・恥ずかしいから・・・です・・・。」
思わず消え入りそうな声になってしまった。
「ジェシカ・・・。」
公爵が私の耳元で名前を呼んだ。
名前を呼ばれて顔を上げると、公爵は口付けをしてきた。やがて、その口付けはますます深いものになり・・・。公爵から漂って来た魔族の香りに魅了され、気付けば私は公爵の首に腕を回し、自分から求めていた・・・。
・・・公爵の側にいると自分がおかしくなってしまうのが良く分かった。
何故なのか分からないが、私がこの世界に戻ってから・・・公爵が時々魔族特有の香りを見に纏うようになってきたのが原因だ。
魔族特有の香り・・・それは甘く、まるで媚薬のように・・嗅いでいると頭がぼんやりしてきて訳が分からなくなってくる。
どうして公爵・・・貴方から魔族の香りを感じるの・・・?どうして私はこの香りに魅せれてしまうの・・・?
そして公爵の香りに酔わされ・・・
最後に一度だけ私達は情を交わした―。
合間に公爵は途切れ途切れに囁いた。私の事を愛していると、そして必ず私を守るからと・・・。
その後・・・公爵は私を連れて、ソフィーのいる神殿へと向かった―。
今、私は両手を前に縛られた状態でソフィーの前に立たされている。
ソフィーはまるで玉座のような立派な椅子に座り、真っ白なドレスに身を包んで足を組みながら私を見下ろしている。
私の隣に立つ公爵は冷たい瞳を湛えたまま、ソフィーに言った。
「ソフィー。ようやく・・・ジェシカを見つけて捕らえる事が出来た。・・・待たせて本当にすまなかった。」
そして恭しく頭を下げる。
「ふん・・・。本当に・・・今まで何をしていたのかしら・・・?でも、まあいいわ。ようやくこの女の魔力を奪う事が出来るのだから。」
そしてソフィーは公爵をじろりと睨みつけると言った。
「ドミニクッ!!貴方は外に出ていなさいっ!!この女と二人きりで話したい事があるから。」
ソフィーは吐き捨てるように言うと、私の方を見た。
「ああ、分かった。」
そして公爵はチラリと一瞬だけ私を見ると、部屋を後にし、私とソフィーだけがこの広間に残された。
きっと・・・大丈夫。だって私と公爵の間は聖女と聖剣士の強い絆があるのだから・・・。無意識のうちに私は左腕をギュッと握りしめていた。
公爵が出て行くと、ソフィーがすぐに話しかけて来た。
「ジェシカ、貴女の愛しいナイト達は一体今何処にいるのかしら?可哀そうにねえ・・・。こうして私に捕らえられてしまったと言うのに・・誰一人として貴女を助けに来ないのだから」
妖艶な笑みを浮かべながら、ソフィーはあろう事かサイドテーブルに手を伸ばし、大きなグラスにワインを注ぐとゆっくりと回して香りを堪能しながら・・・ゴクリと白い喉を鳴らして飲み干した。
う、嘘でしょう・・・・?
その光景を目の当たりにした私は我が目を疑った。
・・・信じられなかった。あまりのソフィーの変貌ぶりに私は言葉を失ってしまった。
出会ったばかりの頃はまだ愛らしい美少女のイメージだったのに、今はまるで物語に登場する悪い魔女のようだった。でも・・・・ここまで来たなら、私には聞かなくてはならない事かある・・・っ!けれど今は・・・様子をうかがう為に代わりの質問をしてみることにした。
「ナイト達というのは誰の事をさしているの?」
私は思い切って尋ねてみた。するとソフィーが激項した。
「惚けないで頂戴!お前はね・・・私が本来手に入れるべき者をすべて脇から泥棒の如く奪って行ったのよっ!!アラン王子、ノア、ダニエル、そして私に関わる全ての男達を・・・っ!!この・・・悪女のくせにっ!!」
言うと、空になったグラスを私に投げつけて来た。
「!!」
咄嗟に避けると、グラスは私の足元の床に当たり、派手な音を立てて割れる。
な・・何て乱暴な・・・・。
ソフィーのあまりの迫力に思わず後ずさりする私。一体彼女は何を言いたいのだろうか?
本来手に入れるべき男性?今ソフィーが名前をあげた彼等は私の書いた小説のメインヒーロー達。彼等は皆ソフィーに恋する。そしてソフィーは私を悪女と呼んだ。それはまさしく、本物のジェシカ・リッジウェイの事を指しているのだ。
「でも、何でこんな事になってしまったのかはちゃんと私には分かってる。だってねえ・・・本来ソフィーが持つべき『魅了』の魔力を、何故か悪女の貴女が持ってしまったんだものねえ・・・?」
ソフィーは自分の事なのに・・・何処か他人事のような口ぶりで話す。その目は私を見つめているようで、本当はずっと遠くを見ている視線だった。
「ソフィー・・・。アメリアさんは・・・アメリアさんは・・・何処にいるの・・?」
私はソフィーから視線を逸らさずに尋ねた。
「アメリア・・・?誰、そんな女知らないわよ。」
ソフィーは玉座に寄りかかるとフイと視線を逸らせた。
「な・・・・何を言ってるの?アメリアさんは・・・・かつては貴女のお友達だった女性じゃ無いの?でも途中から・・・何故か貴女とアメリアさんは主従関係のようになってしまったみたいだけど・・・?」
「だからあ・・・・誰よ、アメリアって・・・。」
ソフィーは酔いが回っているのか、目が座っている。
「と・・・とぼけないで。眼鏡をかけて、髪を御下げに結わえていた女性よ。知らないはずないでしょう?」
おかしい。魔界に行ったジェシカの記憶は残っていたのに、アメリアについての記憶を無くすとは・・とても考えられない話だ。
「あ・・・ああ・・・。思い出したわっ!そっか・・取り合えず名前を付けなくちゃいけないと思ったから、適当に開いた本のページの中から抜粋して、名前を作ったんだっけ・・・。すっかり忘れていたわ。」
え・・・?アメリアに名前を付けなくてはいけなかったから・・・適当に開いた本のページから選んだ・・?ソフィーが何を言っているのか、良く分からないが・・取りあえず確実に分かった事・・・それはアメリアと言う名前はでたらめだったと言う事。
そ、それじゃ・・・彼女の本当の名前は・・?
そう言えば、最初にアメリアが夢に出てきた時・・・彼女は『私の名前を呼んで』と訴えて来ていた。
「ソフィー。それじゃ・・・アメリアの本当の名前は何?彼女の正体は何?貴女なら・・・全て知っているんでしょう?」
「フンッ!例え知っているとして・・・私があの子の名前をお前に教えるとでも思っていたの?いい事?絶対に・・・ジェシカ。お前にだけは『真名』を教えないわ・・。そんなに知りたければ・・自分で調べる事ね。」
そしてソフィーは立ち上がると声を張り上げた。
「今から・・ここにいる稀代の悪女『ジェシカ・リッジウェイ』を裁きにかける事にするっ!直ちに裁判の準備を始めなさいっ!!」
「!!」
すると、突然広間の奥から数名のソフィー付きの兵士が現れ、無言で私を取り囲むと、1人の兵士がいきなり腕ごとロ―プで縛り上げて来た。
身体の自由をすっかり奪われた私を見てソフィーは高らかに笑うと言った。
「さあ!魔界の門の封印を解き・・・私達の世界から太陽と星々を奪った大罪人・・ジェシカ・リッジウェイをついに裁く日がやってきたわっ!!」
そして呆然としている私をソフィーは見つめると、不敵に笑みを浮かべた―。