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第3章 2 ジェシカ・リッジウェイ 思い出と共にここに眠る

1


「どうだ?ダニエル・・いたか?」


今私達はダニエル先輩が出てくるはずの昇降口の前に待機している。

大勢の学生達がぞろぞろと校舎から出て来て、時折不思議そうな顔で通り過ぎて行く。まあ・・それは無理も無いかも。不自然なほどダブダブの上着を着て、フードを被って顔を隠した私の左右の手をそれぞれ右手をデヴィット、左手をマイケルさんに繋がれているのだから・・・。これではまるで迷子になって保護された子供の様だ。


「出てきませんねえ・・・。ダニエル先輩・・・。」

ポツリと言った。


「おい、ひょっとすると・・・ダニエルの奴・・・授業をさぼってるんじゃないのか?」


デヴィットが身をかがめて耳打ちしてくる。


「さあ・・・どうでしょう・・?」


「まあ、もう少しここで様子を見てみようよ。」


マイケルさんはのんびり構えている。


その時・・・・。


「おい、デヴィットじゃないか!」


前方から来た1人の学生が声を掛けて来た。


「げ!キース・・・・ッ!」


デヴィットが口の中で小さく舌打ちするのが聞こえた。え?キース・・・?う~ん・・何処かで聞いたことがあるような名前だなあ・・・・。


「お前・・・こんな所で何やってるんだよ。最近授業には出てこないし・・・寮にも戻っていないだろう?完全に校則違反してるぞ?・・・・所で・・・なんだ?こいつら?」


キースと呼ばれた青年が私とマイケルさんをジロジロと見ている。


「やあ、こんにちは。」


マイケルさんは笑みを浮かべて挨拶をした。


「はあ・・・?こんにちは・・・?」


「あ~じ、実は・・この2人は兄弟で俺の知り合いなんだ・・・。彼が今年、この学院を受験希望で・・今日はちょっと下見に・・・だな・・・。」


デヴィットがしどろもどろに言う。うわっ!演技下手すぎっ!


「ふ~ん・・・。そうなんだ・・・。しかし、今年受験するって割には・・・随分背が低いねえ、君・・・。まるで子供か女の子みたいだ。」


言いながら、キースと呼ばれた青年は私の被っていたフードをアッと言う間に払ってしまった。


「おい!何するんだっ!」


デヴィットが叫ぶも・・・時すでに遅し・・・。

この青年の眼前で私の素顔は晒されてしまった。しかも運が悪い事に、そこにはたまたま居合わせた女子学生と男子学生の姿も・・・!


「あ・・・・。」

慌ててフードを被ろうにも私の両手はしっかりとデヴィットとマイケルさんにホールドされ、両手が塞がれている。


「「しまった・・・っ!」」


デヴィットとマイケルさんの声がハモる。


「へえ~・・・・・。」


途端に青年の顔に不敵な笑みがうかぶ。


「君・・・綺麗だね・・・。」


その目、その一言で一気に全身にブワッと鳥肌が立つ。こ・・・この男・・・ヤバイかも・・・!このおぞけ具合は半端では無い。今まで生徒会長やマリウスによって鳥肌が立つ事は何度もあったが・・この眼前の男からすれば、あの2人なんて可愛らしいものだ。


「ねえ・・・お兄さんと・・・一緒に遊んでみないかい・・?」


舌なめずりしながら私の髪の毛に触れてくる。う・・き・・・気色悪いっ!!


「おい、俺の弟に近付かないでくれないか?」


マイケルさんが私の前に立ちはだかり、デヴィットは青年の胸倉を掴んだ。


「勝手に触れるな・・・。」


「おお~怖いねえ。君達・・・。」


そこへ2人が私から離れたすきに今度は女子学生達がよってきた。


「うわああ・・・何て美少年なの?!」

「ねえねえ。お姉さんたちと一緒に食事に行かない?何でも好きな物食べさせてあげるわ。」

「貴方・・彼女いるの?もしいないなら・・お付き合いしてくれる?」

等々・・もみくちゃにされる。

ヒエエエエッ!こ、これじゃ・・・ダニエル先輩が女嫌いになる気持ちが分かるっ!


「あ、あの・・・。」


必死でデヴィットとマイケルさんを探すも、2人の姿は人混みにかき消されてしまった。

も、もうこうなったら・・・。


「あ、あの・・・す、すみません。よ・用事が出来たので・・・・帰りますっ!」


そして言うが早いか、フードを目深に被り、一目散に逃げだした。


「あーっ!待ってよッ!」


女子学生達が追っかけて来るが・・・ 冗談じゃないっ!もし捕まったら・・・・て・貞操の危機が・・・・っ!!



「はあ~っ、はあ~っ・・・・」

何とか彼女達の追跡から走って逃げきれた・・・。それにしても信じられない。この運動音痴のジェシカが逃げ切れるなんて・・・。やはりこれは火事場の何とかという、いわゆるアレの事なのかもしれない。


「あれっ!そう言えばここは・・・・。」

無意識で滅茶苦茶に走って来たけれども、この場所に来て私は気が付いた。


「ここ・・・ダニエル先輩が良く来ていた場所だ・・・。」


そこは南塔の校舎前・・・ダニエル先輩と初めて会った場所だった。

ここでダニエル先輩はお芋を焼いていて・・・ん?

その時・・・何処からか何かが焼ける匂いが漂って来た。ま・まさか・・・。


 フードを目深に被りなおすと、私は恐る恐るその匂いの漂ってくる場所へと近付いて行き・・・。何とそこには焚火を前に長い木の棒でお芋を焼いているダニエル先輩がそこに居たのだ。


 ダニエル先輩―!

何だか凄く懐かしい気がする。別れてからまだ2週間程しか経過していないのに・・・余りにも多くの事があり過ぎたから・・。

目頭に熱いものが込み上げてきて涙が浮かんでくる。だけど・・・・ひょっとするとダニエル先輩はノア先輩と同様にソフィーに狙われているので、すでに操られている可能性だってあるのだ。しかも男装しているけれども今の私には人相書き迄出回っている・・・。


 でも、少しだけ、ほんの少しだけでも・・・先輩とお話出来たら・・・・。

そう思っていた矢先、ダニエル先輩の方から声を掛けて来た。


「・・・ねえ。君。さっきからそこで何してるのさ?何か僕に用事でもあるの?」


何処か投げやりな・・冷めた目で私の事をじっと見つめているダニエル先輩。

あ・・・そうだった。フードを目深に被っているから・・ダニエル先輩には私だと気付かれていないんだ・・・。


「何?返事もしないで・・・。しかもボクの顔をじっと見つめているし・・・。ねえ、聞いてるの?人の話・・・。君、もしかして耳でも悪いの?」


機嫌が悪そうに言うダニエル先輩。・・・何だか初めて出会った頃を思い出してしまう。

「あ・・す、すみません。はい、一応お話聞いてます。」


「ふ~ん・・・。一応ねえ・・・。そいういえば、以前初めて会った人が同じ事言ってた気がするなあ・・・。」


ダニエル先輩は空を見上げながら呟いた。ダニエル先輩・・・多分、それって私の事じゃありませんか?初めて会った時・・・私同じ返事をしたんですよ・・・?


「まあ、いいや。それより何だって君・・こんな所に来てるの?見た所この学院の学生じゃないみたいだし・・・。」


「あ、あの・・・焼き芋の匂いが・・・して・・余りにも美味しそうだったので・・・。」

そして・・・


グウウウウ~。


ああ・・・またダニエル先輩の前でお腹が・・・・。


ダニエル先輩は目を真ん丸に開けてこちらを見ていたが・・・


「プッ!」


え?


「アハハハ・・ッ!」


突然大笑いを始めた。


「な、何だい、今のお腹の音は・・あ~まるであの時の彼女みたいだ・・・。そういえば・・・今何処で何してるんだろうな・・・。」


ポツリと最後に少しだけ寂しそうに呟くダニエル先輩。

え・・・?ひょっとすると先輩・・・?

「あ、あの・・・彼女みたいって言ってましたけど・・・それって・・・。」


「え?何?何故君みたいに素性の分からない相手に彼女の事を話さなければならないの?」


ジロリと不機嫌そうな目でこちらを睨むダニエル先輩。


「い、いえ・・・。何でもありません・・・。」

どうなんだろう?ダニエル先輩は・・・操られているのだろうか?まだこれだけの会話では・・先輩の本心が分からない・・・・っ!


その時、ふと私の目に・・・掲示板に貼られた私の手配書が目に飛び込んできた。

思わずまじまじと見ていると、ダニエル先輩はああと言って、突然その手配書に手を掛けて破ると、焚火にくべてしまった。


「ふん、全く気に入らない・・・。ジェシカをこんな扱い方するなんて・・・。」


ダニエル先輩・・・先輩は・・私を思い出していたんですね・・・。ソフィーに操られていたわけでは無いんですね・・?

自然と涙がにじみ出てくる。


「何?どうしたのさ。君・・・。」


ダニエル先輩は怪訝な顔で私を見つめている。

先輩・・・・・。

私は被っていたフードを外した・・・。



「え~と・・・?」


ダニエル先輩は首を傾げている。


「君の顔・・・何処かで見たような気がするけど・・・?」


「ダニエル先輩・・・・。私・・・戻ってきました・・・。」


半分泣き笑いを浮かべて私は言った。


「え・・?」


ダニエル先輩は信じられないとでも言わんばかりに目を見開いて私を見ている。


「ま・まさか・・・?」


「はい、私です・・・。ジェシカです・・・っ!」


「ほ、本当に・・・本当にジェシカなの・・・・?」


次の瞬間、私はダニエル先輩の腕の中にいた。


「ジェシカ・・・!色々言いたい事や・・・聞きたい事があるけど・・・。」


ダニエル先輩は私をしっかり抱きしめると言った。


「お帰り、ジェシカ・・・。」


と―。





2


「はい、ジェシカ。焼き立てで熱いから気を付けてね。」


ダニエル先輩が木の棒に刺した熱々の焼き芋をくれた。


「ありがとうございます。フフ・・・美味しそうな匂い。」


思わず笑みが浮かんでしまう。

今、私とダニエル先輩は南塔の校舎前の人通りの少ないベンチに座って仲良く焼き芋を食べている。


「ダニエル先輩は・・・焼き芋が好きなんですね。」

熱々の皮を剥きながらダニエル先輩の顔を見上げた。


「うん・・そうだね。僕の住んでる領地は特にさつま芋の栽培が有名だからね。実家から沢山届くんだ。僕は焼き芋が大好きなんだけど・・この学院の連中は焼き芋なんか所詮庶民の食べ物だとか言って・・・軽蔑して・・・。だから、僕は人目の付かないこの場所で時々お芋を焼いて食べていたんだ。」


「そうだったんですか・・・。」

初めて聞くダニエル先輩の事。そう言えば私、この物語の作者だけど・・・ダニエル先輩の事・・殆ど知らなかった。領地の事もそうだし、家族についても・・・。


「ねえ。ジェシカ・・・。」


不意にダニエル先輩が声を掛けて来た。


「はい、何ですか?」


「実は・・・僕の記憶は曖昧なんだ・・・。」


ダニエル先輩は頭を押さえながら私を見つめた。


「曖昧・・?」


「ノアの事は覚えているよ。と言うか・・彼は2か月以上姿を見せていなかった・・・と言う記憶しか無いんだ。その間・・ノアは何処に行っていたんだろうって曖昧な記憶なんだ。でも、確か・・ノアを助けに魔界へ行くって君は話してくれたよね?」


「はい、そうですね・・・。」


「数日前に突然ノアの事が頭に浮かんだんだよ。どうして学校に来ていないのかなって・・・実家にでも行っていたのか・・・?僕はそんな風に考えていた。」


「・・・。」

私は焼き芋を食べながら黙って先輩の話を聞いていた。


「実は1カ月程前・・・全校集会が開かれたんだ。『ワールズ・エンド』で当時門番をしていた1人の聖剣士「マシュー・クラウド」を刺し殺し、封印を解いて魔界へ行った悪女がいるって・・そこでジェシカ。君の名前があがったんだ。


「!」


「だけど・・・おそらく誰一人として・・君の名前に心当たりが無かったんじゃないかな?だって僕の周りにいた学生達だって、聞いたことが無い名前だと囁き合っていたし。・・何よりこの僕自身がジェシカの記憶が無かったんだから。」



「ダニエル先輩・・・・。」


思わず声が震えてしまう。


「そして、その後・・・全校生徒を集めて『マシュー・クラウド』の葬儀が執り行われて・・・この学院の共同墓地に入れられたと話を聞いたんだ・・・・。」


共同墓地・・・そんなものがあったなんて・・・。その話を聞き、私は顔が青ざめるのを感じた。


「だけど・・・自分でも驚いてるよ。」


突如、明るい声でダニエル先輩が言った。


「驚く・・・?何をですか?」


「だってね・・本当につい数日前なんだよ。朝起きたら・・・不思議な事にノアの事と、そして・・・ジェシカ。君の事を思い出したんだから。そしてそのすぐ後だったよ・・・。君の手配書が学院中に貼られていったのが・・・・。君の従者のマリウスなんか物凄く激怒して自分が見つけた手配書を片っ端から破り、その場で燃やしていたよ。」


「マリウスが・・・。」


「勿論・・マリウスだけじゃない。グレイもルークも・・君の手配書は全て剥がして・・今は謹慎処分になってるよ。僕だって同じことをしているのに・・何故かお咎めなしなんだ。」


ダニエル先輩は肩をすくめながら言った。


「それは・・・きっとソフィーのお気に入りだからですよ。ダニエル先輩が・・・。」

恐らく、ソフィーはまだ・・ダニエル先輩の事を諦めきれないんだ・・・。


「確かに・・僕は何度も何度もソフィーから自分直属の兵士になって私を守ってくれとしつこく誘われたけどね・・・。」


「え・・・・?そうだったんですか?!」


「うん。でもね・・・あんな魔女みたいに恐ろしい女が聖女だって?おかしいと思わないか?あの女の兵士になるなんて、悪魔に魂を売るのと同じだよ。」


「ダニエル先輩・・・。」


「だけど・・・。」


急にダニエル先輩の顔が曇る。


「あのライアンとケビンが・・・・まさか・・ソフィーの兵士になるなんて・・・。」


悔しそうに肩を震わせるダニエル先輩。


「あの・・・それは・・・私のせいなんです・・・。私がライアンさんとケビンさんを魔界へ行く時に・・手を貸して貰ったから・・・私に対する見せしめの為に・・。」


私は下を向いた。目頭が熱くなっていく。すごく・・・いい人達だったのに・・・沢山親切にして貰ったのに・・私が巻き込んだせいで・・。


「ジェシカのせいじゃないよ・・・。悪いのは全てあの女・・ソフィーのせいなんだから・・・。」


ダニエル先輩は私の肩を抱きかかえると言った。


「で、でも・・・。」


「聞いて、ジェシカ。」


ダニエル先輩が私の目を真っすぐに見つめると言った。


「君との記憶を取り戻してから・・・今まで・・・ずっと頭の中に靄がかかっているような感覚があったのを覚えている。そして・・・ソフィーが聖女についてからすぐに、厚い雲に覆われ、太陽が見えなくなり、星や月も雲に隠れてしまったんだ・・・。」


私達は空を見上げた。

そこにあるのは・・・厚い雲に覆われた空が見えるだけ。


「ソフィーは・・ジェシカ。君が魔界の門を開けたせいだと言ってるんだよ。」


ダニエル先輩は私の髪の毛を撫でながら言う。


「ダニエル先輩・・・私・・・『魔界の門』は『ワールズ・エンド』では開けていません・・・っ!」


「勿論、僕は君の言う事を信じるよ。こんな空になったのは・・・あんな女が聖女になったせいだって事をね!」


ダニエル先輩が・・・こんな強い口調で話すなんて・・初めて見た。


「ねえ、ジェシカ。ここで僕が焼き芋を焼いていたの・・偶然だと思う?」


「え・・・?」


「君との記憶が戻ってからずっと・・・僕はここで君が僕の前に現れるのを待っていたんだ。ここで焚火をして、ジェシカの大好きなお芋を焼いていれば・・きっと・・・。」


「フフ・・・ダニエル先輩の考え・・・見事に正解でしたね。確かにお芋の匂いにつられちゃいました。だけど・・・。」


私はノア先輩を見上げた。


「?」


不思議そうに首を傾げるダニエル先輩に私は言った。


「ここに戻ってきた時から・・・ずっとダニエル先輩に会いたいと思っていました。そして・・・気が付いてみたらいつの間にか足がここへ向いていたんです。」


「ジェシカ・・・。」


ダニエル先輩の瞳が潤んでくる。


「ジェシカ・・・。」


そして私に手を伸ばしかけた時・・・・。



「ジェシカッ!!」


背後で私を呼ぶ激しい声・・・。あ・・・そう言えば・・・私・・黙ってここに来てしまったんだっけ・・・。

振り向くと、不機嫌そうな表情を浮かべて腰に手を当てているデヴィットと、何故かその場にへたり込んでいるマイケルさんの姿があった。


「え・・・?誰だい、君達は・・?ん?でも待てよ・・・君の顔は・・何処かで見た事あるなあ・・・?」


ダニエル先輩は美しい眉を潜めながらデヴィットを見つめた。


「そうか、女子学生に人気のあるダニエルに覚えて貰えているとは光栄だ。」


妙に棘のある言い方をするデヴィット。何だかすごく怒っているようだけど・・。

2人が何やら火花を散らしているが、私はそれどころでは無い。地面にうずくまるように座り込んでいるマイケルさんが気がかりだ。


「デヴィットさん!一体、マイケルさんはどうしたんですか?!」


マイケルさんに駆け寄ろうとした所をデヴィットの腕の中に囚われてしまった。


「デ、デヴィットさん!は、離して下さい!マイケルさんが・・・。」


「駄目だ、こうやって・・・一度お前の無事を確認しなければ・・・。」


その瞬間、私とデヴィットの紋章が光り輝く。そうか・・・これも聖女と聖剣士の誓いを交わした決まり事なのかもしれない。

そしてそんな私達を面白く無さそうな目で見つめるダニエル先輩。


「よし・・・これでジェシカ。お前に俺の守りの力を分けたからな?」


デヴィットが腕の力を緩めたので、すかさず私はマイケルさんに駆け寄った。


「マイケルさん!しっかりして下さい!」


「ああ・・・お嬢さん・・・無事で・・良かった・・。」


真っ青な顔で私を見上げる。


「一体、何があったんですか?」


マイケルさんに尋ねると、代わりにデヴィットが答えた。


「別に・・大したことはしていない。転移魔法でこの男を連れて移動したら・・こんな風になってしまって・・。短い距離だから大丈夫だと思ったんだが・・やはり魔力を持っていないと・・駄目だったようだ・・・。ごめん・・・悪かった。」


そしてデヴィットは頭を下げるのだった―。





3



「さあ、ダニエル。ジェシカから預かった通帳を返してやるんだ。」


ここはセント・レイズ学院の併設されているカフェ。私の隣にはデヴィット。そして向かい側の席にはマイケルさんとダニエル先輩が座っている。


「・・・何故君に命令されなければならないのさ。」


ふてくされたようにダニエル先輩は言う。


「お前がどういう意図でジェシカからその通帳を預かったのかは知らないが・・・俺はジェシカの聖剣士となったんだ。ジェシカと話がしたければ、まず先に俺を通せ。」


無茶苦茶なことを言うデヴィット。


「はあ?!君・・・一体何を言ってるわけ?!正気なの?!何故僕がジェシカと話すのに君を通さなければならないのさ!」


「そうですよ、何言ってるんですか、デヴィットさん。」

慌ててデヴィットを窘める。


「何を言ってるんだ?ジェシカ。お前はダニエルがどういう意図でお前の通帳を預かったのか理由を尋ねたことがあるのか?」


「それはダニエル先輩が親切だからです。そうですよね。ダニエル先輩。」


「勿論、ジェシカの頼みなら断れないからね。」


ダニエル先輩は珈琲を飲みながら言う。


「本当に理由はそれだけかなあ?」


「ちょ、ちょっと!マイケルさんまで一体何を言い出すんですか?!」


信じられない。デヴィットは別として・・・マイケルさんは何処まで本気で言ってるのだろうか?・・本当に心が読めない謎の人だ。


「ねえ、さっきからこの2人・・・一体何を言ってるの?僕がジェシカの通帳を預かったのがそんなに問題なの?・・・・言っておくけど、僕は誰かのお金に手を付けるような卑怯な人間では無いからね。」


「・・・そうか。ならジェシカに結婚を申し込むつもりは無いって訳だな?」

デヴィットがとんでもない事を言って来た。


「ええ?!け、結婚だって・・・?!僕がジェシカと・・・?」


ダニエル先輩はすっかり面食らっている。


「ほら、ダニエル先輩が困ってるじゃないですか。デヴィットさん、これ以上変な事を言わないで下さいね。ダニエル先輩も今の話気にしないで下さいね。」


「ああ・・・・分かった。そうか・・・考えすぎだったか。」


そして難しい顔で珈琲を飲み始めた。すると・・・。


「・・・ねえ、ジェシカ。」


少しだけ何か考え込んでいたダニエル先輩が顔を上げて私を見た。


「はい、何でしょうか?」


するとダニエル先輩はテーブルの上に置いた私の手をしっかり握りしめ、頬を赤くしてじっと見つめて来た。


「え・・?ダニエル先輩・・・?」


突然のダニエル先輩の行動に面食らう私。


「おい、何やってる?勝手にジェシカの手を握るな。」


デヴィットの抗議する声にも耳を貸さず、ダニエル先輩は言った。


「ねえジェシカ・・・。僕が君に結婚を申し込んだら・・・君は受けてくれるのだろうか?この僕を・・・選んでくれる・・・?」


・・・ダニエル先輩は飛んでもないことを言い出してきた―。



その後はデヴィットさんとダニエル先輩の激しい口論が始まり・・・途中から何故かマイケルさんまで参戦して3人で私を放って置いて議論を始めてしまった。

デヴィットは俺の聖女に手を出すなと喚いているし、ダニエル先輩はかつて自分と私は恋人同士だったのだから、口を挟むなと応戦している。挙句にマイケルさんは私に結婚を申し込むなら、まずは自分を通してからじゃないと認めないと訳の分からないことを言い出し・・・1人、蚊帳の外に出された私。


「あの~・・・・。」

声を掛けても誰も私の声が耳に入らない様だったので、3人を残して私はカフェを後にした。

目的地は・・・先程ダニエル先輩に教えて貰った共同墓地。そこに・・・マシューのお墓がある・・・。


 セント・レイズ学院の裏門を出る。

共同墓地はここから10分程歩いた芝生公園の中にあると言う・・・。

私はそこを目指して歩いた。・・・手には大きなスコップを持って。

自分でも正気では無いと思ってはいるのだが・・・。

これから・・私は恐ろしい事をしようとしている。とても恐ろしい事を・・・。

口の中で謝罪の言葉を言いながら私は共同墓地を目指して歩き続けた。

「神様、どうか私をお許し下さい・・・。」

私は普段から神を崇拝している訳では無いが、今回は別だ。だって・・・・い・今から私は・・・。


 小高い丘にある芝生公園・・・。そこには30程の十字架の墓地が立ち並んでいた。私は墓石に刻まれている文字を注意深く読み・・・ついにマシューのお墓を発見した。

未だ真新しい石で出来た十字架の墓には『マシュー・クラウド』の名前がはっきり刻まれている。

「マシュー・・・。貴方のお墓が・・本当にあったなんて・・・。」

目に涙が浮かんできた。

もう一度優しく微笑んで貰いたい。私の名前を・・・貴方に呼んで貰いたい。

貴方に・・・側にいて欲しい・・・。

 デヴィットの話によると、噂ではマシュー棺の中は空だったという。だけど、これはあくまで噂の話。

この・・土を掘り起こして棺を開けてみれば・・・全て分かるはず。

私は絶対に信じない。貴方が死んだなんて信じたくない。この棺の中は・・・きっと・・・きっと空っぽに決まっている。

そう思い、私はスコップを振り上げた所で・・・。




「はい、ココアをどうぞ。」


「あ、ありがとうございます・・・。」


私は今共同墓地を管理しているという神父さんと教会の中にいた。

それにしても・・・随分若い神父さんだなあ・・・。

金のストレートの長い髪にエメラルドの瞳・・。神父さんにしておくのは勿体ない位の美形男性だ。


「・・・それにしても驚きましたよ。まさかスコップを持って、お墓の前でうずくまって泣いていらしたのですから・・・。もしかして掘り起こそうとでもしたのですか?」


「はい・・・すみません。お墓を荒らすような真似をしてしまって・・・。」

そうだ・・・私、今思えば・・とんでもない事しようとしていたんだ・・・。


「誰か・・大切な人を亡くしたのですか?お坊ちゃん。」


神父さんが優しく語りかけて来る。

お坊ちゃん・・・ああ、そうか・・・。私は今男の人の格好をしていたんだっけ・・。

「す・・すごく大切な人を亡くしてしまったんです・・・・。で、でも・・・噂によると、葬儀の時・・・棺の中がからっぽだったって・・・。だ、だからそれを確かめたくて・・・。だけど・・・と、途中でこ・怖くなって・・。」

涙を堪えながら必死で声を振り絞りながら、丁寧に頭を下げて謝罪した。


「いえ、いえ。いいんですよ。そんなに謝罪しなくても・・・未遂で済んだのですから・・・。」


何気なく窓の外を眺めると先程の墓地が見える。

薄暗い空の下で見える墓地はそれは物悲しい佇まいに見えた。

「でも学院の敷地内に共同墓地があるなんて知りませんでした。」

ココアを飲みながら神父さんに言うと、彼は言った。


「はい、この学院では数百年前に魔王軍と戦い、命を落とした学生の聖剣士様達が何十人といましたからね・・・。」


「そ、そうですか・・・。」

その話を聞いて、私の胸はズキリと傷んだ。

そうだ・・・私がこの話を作ったから、小説の冒頭部分で魔王軍と戦って、命を落とした若い騎士達の話を取り入れたから・・・。

だからこんな形となって表れて・・・。

・・ここに魔王との戦いで命を落とした若者達のお墓が・・・。


罪悪感で一杯な気持ちになる。もし自分がこの小説の世界に入り込んでしまう事が分かっていたならこんな話は書かなかったのに・・・。


「そう言えば・・・ここ最近彼の姿を見ませんね・・・。」


ふと神父さんが独り言のように呟くのを耳にした。


「彼・・・?」


「ええ。実はセント・レイズ学院の学生さんなのですが、大切な主人を亡くしてしまったのでお墓を作らせて欲しいと言ってこちらにいらしたのですよ。それが・・・今から一月前の事でしたね。」


「そうですか・・。」


「そしてその方は1人でお墓を建てられて・・・毎日お祈りにいらしてたんですよ。その方は大切な主人であると同時に、自分が心から愛した女性だった・・と仰ってました。」


「ロマンチックな方なんですね・・・。でも余程大切な方だったんですね。」


「ええ。でも数日前からパタリと来なくなってしまったんですよね・・・。それにしても不思議な方でした。空っぽの棺をわざわざ土に埋めたのですから・・。」


「え?空の・・・棺・・・?」

何だろう、マシューの話と状況が似ている気がする・・・。


「あ、あの・・・何故空の棺を・・・?」


「ええ、どうもその方が言うには・・・記憶の中にだけ存在する大切な主なので遺体が無いと・・・何やら意味不明な事を仰っていました。」


神父さんが首を傾げながら言う。


「え・・?それはどういう意味なのでしょうね・・?」


「ええ。私も不思議に思って尋ねた所、それまでずっと自分の側にいたご主人様がある日突然姿を消し、さらに周りの人達の記憶からも消え失せてしまったらしいんですよ。でも・・・その方はご主人様の記憶があり・・・だけど、周りが皆否定するので、終いには自分の妄想の中のご主人様だったのかも・・・と言い始めたらしく・・・ついにその方のお墓を作って未練を断ち切ろうと思ったそうですよ。」


「あ・・・そ、そうですか・・・」

何だろう、この嫌な感じは・・・。背筋が寒くなってくるような話だ・・・。ま、まさか・・・ひょっとして・・・・・。

よし、思い切って名前を尋ねてみよう!


「あ、あの・・・それで空の棺を入れてお墓を作った、セント・レイズ学院の学生さんのお名前って・・・・。」



「ああ、お名前ですか。確か・・・『マリウス・グラント』と名乗っていましたよ。」


ああ、やっぱり!!





4


「そ、そんな・・・嘘でしょう・・・?」

私は再び先程の共同墓地に来ていた。そして・・・自分の墓石の前で立っていた。

確かに墓石には・・『ジェシカ・リッジウェイ 思い出と共にここに眠る』と刻んである。

あ、あの・・・変態発情魔め・・!とうとうここまで頭がいかれてしまったのか?!

折角ドリスと言う可愛らしい婚約者が出来たので、私もやっとあの男から縁が切れると思っていたのに・・・・。しかも魔界へ行ったのに、私の記憶が消えていなかった?どこまで執念深く私の事を狙っているのだろう・・・。今は男装しているけれども、ひょっとして、今この瞬間も・・・周囲の人達が私に関する記憶を取り戻したので今頃必死になって探しているのかもしれない。

そう考えると・・・・。

「絶対、この姿から元に戻ったら駄目だわ。ジェシカの姿に戻った途端・・・お、襲われてしまうかも・・・!」

何せ、あんな変態的な手紙を渡してきた位だ。あの手紙の内容を思い出すだけで、恐怖で身体が震えて来てしまう。

早い所、ノア先輩の居場所を探し出して、さらにマシューの手掛かりを見つけ、一刻も早く町にもどらなければ・・・。


 そして踵を返し、教会に戻ろうとした時・・・。何者かが教会に向かって歩いてくる姿が目に止まった。その人物は・・・。

え?!う、嘘でしょう?!な、何故マリウスが・・・・っ!

思わず悲鳴を上げそうになるのをすんでの所で、必死に抑え込むと私はデヴィットから借りた上着のフードを目深に被った。

神父様・・・どうぞ、あの変態男に余計な事を言わないで下さい・・・・。

必死で祈りつつ、教会から背を向けて私は足早に『セント・レイズ学院』へ戻る事にした。


「それにしても・・・皆まだあそこで話し合い?をしているのかな?」

3人を置いて1時間以上席を外しているにもかかわらず、心配性なデヴィットが姿を見せないとは・・・。

「ひょっとして・・・何かあった・・・?」

考えてみれば、デヴィットだってソフィー直属の兵士になるのを拒んだ為に地下牢へ連れて行かれ三日間も拷問された身なのだ。

彼だって本来なら危険にさらされているのに・・また私は自分の事しか考えていなかった・・・!

デヴィット!!

気が付けば、私は走り出していた・・・。



「え・・?嘘でしょう・・?」

本日、何回目かの嘘でしょう発言。

なんとあの3人は未だにカフェで大声で議論を交わしているでは無いか。

他のお客さんは誰もいない。きっと彼等の白熱の論議が煩くて店から出て行ってしまったのだろう。

それに・・・ほら、見てよ。あのカフェの店員さん達・・・。皆露骨に嫌そうな視線をデヴィット達に向けている。


 デヴィットが熱血漢な性格である事はここ数日で良く分かったが、まさかあの温厚そうなマイケルさんや、無駄な事はしたくないと考えていそうな?ダニエル先輩までが論争を繰り広げているのだから・・・。

呆れてカフェの入口で立っていると、背後で声を掛けられた。


「すみません。通していただいても宜しいでしょうか?」


うん?その丁寧な物言い・・・。そしてその声・・・・。ま、まさか・・・!

全身から血の気が引いていくのを感じた。

私は後ろを振り向かずに言った。

「あ、す・すみません。」

そして慌てて塞いでいた通路からどく。


「ありがとうございます。」


一瞬その人物はこちらを見て何か言いたげに見つめてくるが、すぐに丁寧に頭を下げてカフェの中へ入って行く、その人物は・・・。


「マ・マリウス・・・。」

口の中で思わず小さく呟く。何故?どうして?貴方がここに居るの?だって・・ついさっきまで・・・教会にいたよねえ?!はっ!そうだった・・・。忘れていた・・。マリウスは・・・瞬間移動が出来たんだ・・・っ!!

で、でも一体何故マリウスはこのカフェにやって来たのだ?学院併設のカフェなんて10軒以上あるじゃない!それが、何で、よりにもよって、ここに来た訳?!早く別のカフェに行きなさいよーっ!それにドリスはどうしたのよ?仮にも貴方の婚約者でしょう?婚約者なら授業中以外はずっと夜門限になるまで四六時中一緒に居るべきなんじゃ無いの?!

最早途中で自分が何を言ってるのかさっぱり分からなくなってしまったが・・・ただ一つ分かる事。それは・・・マリウスが敢えて、わざわざこのカフェにやって来たと言う事だ・・・!

その証拠にあの変態男はデヴィット達の席へと近付いて行く・・・っ!

 私は彼等に見つからないように観葉植物の陰で見えにくくなっているテーブル席に座って、彼等の様子を伺う事にした・・・・。

うん。ここなら彼等の会話が良く聞こえる。


「お話し中、失礼致します。ダニエル先輩。」


マリウスは、デヴィットとマイケルさんには目もくれず、真っ先にダニエル先輩に声を掛けて来た。


「何だい、マリウス。珍しいな・・・。君の方から僕に声を掛けて来るなんて・・。一体どういうつもりなのさ?」


ダニエル先輩は珈琲を飲みながらマリウスをチラリと見た。


「はい、ご用件は一つしかありません。私の大事なジェシカお嬢様についてです。」


うわああっ!ストレートにものを言ったよ!


その時、ピクリとデヴィットの肩が動く。ついでにマイケルさんも顔を上げてマリウスを見る。


「ジェシカ・・・?」


ダニエル先輩が首を傾げる。おおっ!流石は先輩。ひょっとしてシラを切ってくれるのでは・・・。

その時、私は見た。

ダニエル先輩が素早くデヴィットとマイケルさんに目配せするのを・・・・・。

果たして2人がその意図を組んでくれると良いのだけど・・。


「ジェシカ・・・う~ん・・・何処かで聞いたことがある気がするなあ・・。」


ダニエル先輩は腕組みしながら考え込むフリをしている。


「惚けないで頂けますか?この学院のほぼすべての方がジェシカお嬢様の事を思い出していらっしゃるのです。ましてお嬢様と特別の関係にあったダニエル先輩ならとっくに思い出されているはずですよ?さあ、お嬢様は今どちらにいらっしゃるのですか?」

あ、まずい・・・段々マリウスの瞳に狂気の色が宿ってきた・・・。こ、これは・・この状況は・・・。

冷汗が流れ出て来た。


「おい、お前は一体誰なんだ?今俺達は大事な話し合いをしていた所なんだ。部外者は出て行ってくれ。」


おおっ!つ、ついに・・・デヴィットが動いてしまったっ!


「おや?貴方は・・・。」


そこまで言いかけて・・・サッとマリウスの顔色が変わった。


「あ・・・貴方は・・・一体・・・何者ですか?私の大切なジェシカお嬢様を・・・ご存知ですね?」


まずい!マリウスに・・・気付かれてしまった!

全身から血の気が引いて行く私。


「・・・何故そう思う?」


デヴィットは椅子から立ち上がるとマリウスと睨みあった。

その様子を黙って見守るダニエル先輩とマイケルさん。・・・と言うか、黙って見ていないで彼等を止めてくださいよ・・・。


「何故そう思う?そんなのは簡単な事です。何せ・・・貴方の身体からはジェシカお嬢様の香りが全身から放たれているからですよ!」


「「え?!」」


途端にダニエル先輩とマイケルさんがデヴィットを見る。

いやああああっ!マ・マリウスの・・・アホ~ッ!!一体何て事をこの2人の前で言ってくれるのだ?!こ、これでは・・・勘の鋭い人間ならば・・私とデヴィットが情を交わしたことが・・この2人にバレてしまう・・・!

案の定、気付かれてしまったようでダニエル先輩とマイケルさんは呆然とした表情を浮かべている。


「ああ、そうだ。俺はジェシカの聖剣士。そしてジェシカは俺の聖女だ。聖女と聖剣士が絆を深めるのは当然だ。そんな事位お前だって知っているだろう?」


マリウスに言う。

え?!そうなの?!そんな事・・・私はちっとも知らなかったけど?!


一方、顔が青ざめたのはマリウスの方だ。


「な・・・何ですって・・・。あ、貴方が・・・ジェシカお嬢様の聖剣士・・?」


「ああ、そうだ。もう2人の間には絆が結ばれ、誓いが完了した。もうお前の大切なジェシカお嬢様は何処にもいない。」


「グッ!!」


一瞬、マリウスは悔し気に顔を歪め・・・その場から一瞬で姿を消してしまった。

よ、良かった・・・と、とりあえずは・・助かった・・・。思わずテーブルに突っ伏す私に不意にデヴィットから声が掛けられた。


「ジェシカ、おっかない従者は追い払ったから、出て来ても大丈夫だぞ。」


え・・・?まさか気付いて・・・いた・・?


フードを目深に被り、私はそろそろと3人の前に姿を現した。


「あの・・・気が付いて・・いたんですか・・?」


恐る恐るデヴィットに尋ねると、デヴィットは笑顔で言った。


「そんなのは当たり前だろう?だって俺はお前の聖剣士なんだから。」


と―。


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