99th SNOW 冬菜、限界突破せりて。
今回は100話目前ということで、冬菜、冬実サイド。
同い年同士で苦闘する姿ですが、最終的には、というところです。
登場人物紹介は赤城さんです。
赤城大和 32歳 警視庁鑑識課、Ω副隊長 2月7日 AB型 171センチ 70キロ 好きな食べ物 岩塩
Ωの副隊長で、酒鬼原の右腕。
礼儀正しい口調ではあり、穏やかな性格だが、嫌なものは嫌とハッキリと言えるタイプ。
「船幽霊」の刻印者で、海辺の戦闘では無類の強さを発揮する。
陸上では、というと、柔道3段の実力を持っているので、寝技を得意にしている。
学生時代は66キロ級でインターハイ、大学2年次のインカレで日本一に輝くほど。
他の隊員からも絶大な信頼を置かれているほどの人格者でもある。
その頃、冬菜と冬実の方では。
迫り来る月詠の式神に悪戦苦闘を強いられていた。
近距離特化の冬菜とバランス型の冬実では相性的にはカバーし切れるとは言い切れないが、単純に式神が多いというのもある。
「冬実ちゃん!! そっちどう!?」
「一体一体は強くはないですが……数十体もの妖怪が所狭しと来てますからね……対処はしにくいですよ、冬菜さん。」
「これどうする!? ジリ貧になるだけだよ!?」
「とにかくここは私がなんとかしますので……冬菜さんは先へ。」
「了解!! 気をつけてよ!?」
冬菜は月詠の元へ猛ダッシュを仕掛けた。
一方の冬実は広範囲の妖術で応対していき、次々と式神を一体ずつ除去していく。
「数が多かろうと関係ないです。全ては勝つための“駒”なのですから。」
冬実は眼鏡をたくし上げ、式神を圧倒していくのであった。
その頃、月詠の元に徐々に近づいていく冬菜。
「ハァ……ハァ……くそっ、拉致が開かない!!」
襲いくる月詠の式神。
冬菜は薙ぎ倒していくが、こんなところで時間を使うわけには冬菜にとってはいかなかった。
「……邪魔臭えんだよォォォォォォォ!!!」
冬菜は右回し蹴りを放ち、妖怪を貫通蹴りのように貫いていったのであった。
そしてなんとか到着したのである。
月詠晴明の元に。
対峙する冬菜と月詠。
「面白い……面白いね……よく僕のところまで来れたものだ……」
「ほんっっっっと、手を焼いたわよ!! なに、あの妖怪ども!! 多すぎるわ!!」
「クハハ……これは戦争だ。多すぎて困ることなどなかろう。」
「確かにそうね……けれど……だからって私が負ける道理はない!!」
冬菜は突進し、左ハイキックを顎に向かって打ち込もうとした。
が。
月詠に難なく受け止められた。
「……貴様が噂に聞いた……『零距離の魔導士』か……」
「!? どうして私の忌み名を……!?」
「そりゃあ知っているさ……雪女の方に間者を送り込んでいないと思ってたか……?」
月詠は左手を軸に持ったまま回転し、冬菜の顔面に向かって裏拳を放った。
冬菜はスウェーバックで避けるが、クオーターが故の高い鼻先を掠る。
冬菜は鼻から出血してしまった。
「チッ……強いな……」
「どうしたどうした……もっと僕を楽しませてくれよ?」
月詠はそう言って札を構える。
「結界術……『地這い蝮』」
土から蛇状の物体が冬菜に襲いかかる。
冬菜はこれを迎え撃つか、逃げるかしか選択肢がなかった。
冬菜が選んだ選択は、というと。
「乱脚……『氷蓑』!」
退かずに撃ち合うことを選択した。
が、壊せど壊せど、蛇が止まる気配はない。
「どんだけ湧いてくるの、これ……!! いい! 突っ込む!!」
痺れを切らした冬菜が脚に力を溜め、月詠に突進した。
が、足が絡め取られたように動かない。
「!! まずい!! 捕まった……!!」
気付いた時にはもう既に遅し、土蛇に冬菜は絡め取られてしまい、全身をトグロ締めにされた。
全身に妖力を込め、振り解こうとするが、アナコンダ級のパワーを誇るこの結界術は、いくら雪女といえど解くことは容易ではない。
そして月詠が放った蛇は、あろうことか冬菜の頭に噛みつき、噛み砕かんとした。
「ウァアアアアアアアァァッッッッ………!!!!!」
冬菜の悲鳴が聞こえてくる。
異変に気づいた冬実が援護に行こうとしたが、水辺の妖怪・水虎に止められてしまった。
(マズイ……!! このままでは冬菜さんが……!! なんとかしないと……!!)
だが、水虎も手強く、冬実も苦戦を強いられた。
そして一方で。
「フハハ……無様なものだな……『零距離の魔導士』……」
「……!! クソォッ……!!」
月詠は勝利を確信したような笑みを浮かべるが、冬菜の目は死んでいなかった。
「……この期に及んで貴様に何ができる……?? その土塊ごと炭になるがいい。」
月詠はそう言い、炎の結界術の札を取り出し、構えた。
「結界術焔の型奥義……『陶炉獄卒炎』」
月詠が放った炎は蛇ごと冬菜を包み込み、天高く火柱が立った。
「!!! 冬菜さん!!!!」
冬実は水虎を倒すと同時に大声を上げた。
月詠は冬実のところへ向かおうとゆっくりと冬菜が燃えた側を通ったが、後ろから芝を踏む足音が。
そこには頭から血を流し、全身大火傷を負った冬菜が。
普通の場合、雪女には致命傷になるはずだが……。
「貴様……どうやって我が焔を耐え抜いた……!?」
冬菜は立っているのがやっとの状態だったが、彼女の周囲には闘気と妖気が溢れんばかりに溢れている。
「氷の鎧を……張っただけだよ……一か八かだったけど……あの蛇ごと燃やすって考えた、アレがチャンスだった……内側から燃えた氷は水になる、つまり……粘土にして抜け出した、ってだけ……」
「クッ……!! だからと言ってそう簡単にあの連携は……!!」
「死ぬかどうかなんて……そんなの気持ちだよ……諦めたら死んでいたし……諦めなかったから生き残れた……そして今ここで死ぬのは……アンタよ、月詠晴明……」
冬菜の目の周囲には、煤だらけで分かりづらいが、氷華が「黒薔薇」を発動した時と同じ紋様が。
ジリジリとにじり寄ってくる冬菜に、月詠は寒気を覚えた。
(なんだ、この嫌な予感は……何故だ……?? 何故この押せば倒れそうな小娘に……僕がビビっている……?? この僕が……なんでだ……!?)
と、月詠が一歩下がった時だった。
突如後ろから氷のレーザーが飛んできた。
月詠は咄嗟に横に避け、後ろを振り向いた。
冬実が援護射撃で「冷光砲」を放ったのだ。
「クソッ……!! 邪魔しやがって……!!」
月詠は歯軋りをし、冬実に向けて札を構えた。
が、これが命取りだった。
冬菜が一瞬のうちに詰め寄り、月詠の頭上にいた。
「しまっ……!!」
「雪女格闘術蹴りの型……『冬風』」
神速の如く蹴り出された冬菜の右脚。
それは月詠の頭を首ごと打ち抜き、首の骨をへし折ったのであった。
月詠は一瞬で意識を飛ばされて倒れ伏せた。
冬菜は着地と同時に倒れ込んだ。
ちょうど冬実がそれを抱えていたのだが。
「冬菜さん!! しっかりしてください!!」
「……冬実ちゃん……私……勝った……??」
「か……勝ちました! 勝ちましたけど……!! 大丈夫ですか!? すごい火傷が……!!」
「……途中まで……なんも覚えてない、覚えてないけど……よかった、勝てて……」
冬実は冬菜の命の危機を感じ、雑兵を他の雪女に任せることにしたのであった。
「私たちは一旦引きます!! あとは頼みます!!」
雪女たちは逃げる月詠軍の残党を追撃し、冬実は冬菜を抱え、陣地へと戻っていった。
次回は北川サイド。
登場人物紹介は泉理です。
100回記念、乞うご期待ください。




