9th SNOW 対付喪神、決着の刻
この回で付喪神戦は終わりです。怜緒樹の技の描写は多分映像化したらめちゃくちゃかっこよくなるので想像力を掻き立てて見てほしいと思います。
さて、前回の後書きで触れたように、今回はΣ隊長の北川を紹介します。
北川和朋 35歳 警察官で役職は警部補 8月15日生まれ A型 178センチ89キロ 好きな食べ物 ハンバーガー
Σ二代目隊長。霊感が強いだけの、Σでは唯一の普通の人間。妖怪は視認できる。
作戦指示が的確で部下からの信頼も厚い。東大出身で官僚なのだが、本人は出世に興味を示しておらず、Σでの任務を純粋に楽しんでいる。
身長の割に体重が重いのだが、これは太っているわけではなく、警察官として筋トレをしているので、ガタイがいい。
戦闘では妖魔専用の銃を扱う。腕はかなりのもので、警察学校での銃の扱いの成績はトップだった。柔道3段、剣道6段の腕前も持っており、身体能力だけならかなり高い部類。
氷華は邪眼の妖力の残り時間を全て使う。
するとみるみるうちに寒くなっていき、人間がそこにまともに立っていると凍死しかねない気温になっていった。
その気温は、なんと−150℃。
液体窒素ができてもおかしくない気温にまで氷華は自身の妖力を使い下げていく。
「雪女気候変動術『冥王星の環境』。これで全てのフロアの窒素を液体窒素になるまで出し続ける……」
しかし、同時に気力と体力も消費する。
氷華にとってはまさに大技だ。
そして晴夜が札を取り出し、自分たちの周囲に温度を保つ結界を張る。
「結界術『囲炉裏の温もり』!」
氷華以外を囲ったその温かい結界は3人を凍死から免れさせる。
「あとは、、北川くんの連絡を待つだけ、だね。」
「副隊長、氷華のケアもしとかないと、後々取り返しのつかないことになるかもしれないですよ?」
「怜緒樹さん、まだその反動は僕たちは知らないんです。下手に温情を見せたら、それこそ命に関わるかもです。」
「けどよ……!」
怜緒樹が氷華を心配するのをよそに、北川から連絡が来た。
どうやら付喪神の本体を掴んだようだ。
「お前ら! ゲームセンターに付喪神の本体がいる! 今氷華が動きを止めてくれてるから対処される前に仕留めろ!!」
「「「了解!!」」」
しかし、エントランスホールからゲームセンターまでは一階と三階という距離があり、氷華の体力次第では術が解かれ、逃げられる可能性もあった。
時間との勝負になる。
だがここで佐久間が上級式神を召喚する。
「さあ来い! 式神『大入道』!!」
すると、巨大な男の妖怪が床から出現した。
これぞまさに巨人。
推定でも10メートルはあるだろう。
佐久間の意図を察した怜緒樹は大入道を登りつたっていく。
「怜緒樹さんをどうするんですか!? 副隊長!!」
「コイツを使って小鳥遊くんをゲームセンターにまで投げ飛ばす。コイツの体長を三階の高さまで調整してある。最短で、雪宮さんにも負担をかけない方法だよ。」
「な、、なるほど……。では僕もサポートします。何せこの高さに僕の結界術の射程から外れてますから。……結界術増強系医療式『懐炉天翔』!!」
晴夜が怜緒樹に向かって繰り出した懐炉天翔は、氷華の作り出したこの極寒を打ち消すためのものだった。
体を温めつつ、身体能力も飛躍的に向上させる効果があった。
怜緒樹の体に力が湧いて来ている。
ここぞとばかりに怜緒樹は大入道に指示を出す。
「頼むぜ大入道! ゲーセンまで投げ飛ばしてくれ!!」
そして、阿吽の呼吸かのように、右手を弓形に引いた大入道は全身の力を使い、怜緒樹を投げ飛ばす。
弾丸のように飛んでいく怜緒樹。
あとは本体を探して仕留めるだけだ。
(この寒さだと晴夜の術が切れるのも時間の問題だ。一時的に鵺のは解放できるが、私が見つけれねえと晴夜と氷華のサポートも、副隊長の助力も無駄になっちまう。責任重大だ。私が絶対仕留める。)
「黒雲」で微調整をしながら、怜緒樹はゲームセンターまでに着実に近づいていく。
ただでさえ液体窒素が蔓延している状態に空気中はなっているのだ。
北川と相澤で見えるということは、黒い体色だろう。
それが目印になるはずだ、怜緒樹はこう思った。
(いた!!!)
氷華の術で動きを封じられ、拘束されている黒い物体____「付喪神」を発見した。
動きの止まっている妖など、怜緒樹にとっては仕留めるのは容易いことだ。
鵺の部分の、虎とタヌキを事前に解放していた怜緒樹は、再び「黒雲」を作り出し、最大強度まで炭素硬度を固めた。
「さあ、、覚悟しな、付喪神! 刻印術『百鬼夜行螺旋拳』!!!!!」
身体を大きく捻り、「黒雲」で作り出した踏み台から勢いよく飛び出した怜緒樹。
ドリルのように回転し、そして怜緒樹は動けない付喪神の体を貫いた。
そして付喪神は消滅した。
一方氷華は、というと。
「ハア………ハア………ハア………。」
肩で息をしている。
それもそのはず、30分分の力を使い切り、邪眼をフルマックスまで使い果たしたのだ。
いくら半妖だろうが、普段は「人間」として生きている氷華だ。
疲れが出るのも当然だ。
「雪宮さん! 大丈夫かい!?」
晴夜が駆け寄った。
氷華は付喪神がどうなったかを聞いた。
「私は……ハア……大丈夫だから………!! それより、、付喪神はどうなったの……!?」
「………怜緒樹さんが無事……仕留めてくれたよ。さっき連絡が入った。」
「そ、、そう……それなら……よかった……。」
そう言いながら氷華は力を使い果たし緊張の糸が緩んだのか、倒れかけたが、佐久間が支えた。
「……無理をしすぎたようだね……。流石に大技だったようだね。……しかし、こんな若い雪女があそこまで大きい術を使えるのは僕は見たことがないね……。大したものだよ…。」
晴夜もそれに頷いたが、同時に心配もあった。
「ええ………。ですが、何回も使える技じゃないし、1時間以上使えば邪眼の効力を使うには自らの命を削らなければいけない……。あの技は……今の雪宮さんには身体の負担が大きすぎる……。」
「そう……だね。大戦力が増えたのは嬉しいけれど、あそこまで無理をされると今後が心配になってくるよ……。」
「ともあれ、倒すことができてよかったです。これで悪い噂も消えるでしょう。」
氷華を抱え、二人は怜緒樹を連れ戻し、ショッピングモールを後にした。
「う………うぅぅ……ん。」
氷華が目覚めたのは、任務後から数時間経ってからだった。
そしてそこには、美形の男子____晴夜がいた。
「……気がついた?」
「こ、、ここは……?」
「僕ん家。」
「え、、じゃあ……介抱されてた、、って解釈でいいの、、かな?」
「そうだね。その認識でいていいよ。」
「や、、やましいこととかしてない、、よね……!?」
「………なんでそうなるの?仲間を介抱するのは当然の権利だと思うけど? 下心とかはないよ。……ただ、、寝顔は可愛かったけどね。」
氷華をちょっと揶揄った晴夜は、柔和ではない、素直な笑みを溢した。
一方氷華は赤面していた。
「も……もう……!!!!! 恥ずかしいからあんまジロジロ見ないでよーーーーーーーーーー!!!! バカーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
氷華は恥ずかしさのあまり大声を出してしまった。
そして氷華は晴夜宅に泊まっていくこととなった。
最後の方に晴夜宅に氷華が泊まっていますが、別にやましいことをするわけではないので、健全な目で見てください。
次回はテスト編になります。まあ、パッと終わらせる予定なのでご安心を。
前書きで怜緒樹を紹介します。次回もお楽しみに。