88th SNOW 立ち込めた暗雲
今回から新章となります。
時系列は12月6日月曜日から12月23日までの間が「雪陰大戦編」の期間となります。
色々と謎の多い晴夜についての伏線を回収していく章でもありますから、何故氷華と晴夜が結ばさったのか。
それを回収できればな、と思っております。
氷華達が修学旅行から帰ってきて最初の月曜日のことであった。
「馬仙院教」壊滅のニュースが流れてきたと同時に教祖の死亡も発表されていた。
全容を知っているのは、学内で氷華と晴夜、冷奈だけだ。
怜緒樹の葬式も全て終わり、これからクリスマスの予定も立てなければいけない、という矢先だった。
氷華は冷奈に職員室まで呼び出されたのだった。
氷華は疑問に思いながらも職員室まで足を運んでいったのであった。
「申し訳ございません、氷華殿……雪女にとって緊急事態が出来ましたので……」
冷奈は職員室内にある別室で氷華と対面していた。
そして、いつにも増して神妙そうな口調で氷華にそう告げた。
「き、緊急事態??? ど、どういうことですか、冷奈さん……」
「……御当主様からの御命令なのですが……『陽陰晴夜』を我が屋敷まで連れて参れ、とのことでした。早急に連れてきて欲しい、とのことです。」
「……??? せ、晴夜を……?? ますますどういうことか……」
「『行けば全て話す』……と仰せのことでした。……というわけで……よろしくお願いします。」
「……わかりました。なんとか説得してみます。」
氷華は職員室を出たが、脳裏に過ぎるのは、何故雪子が晴夜を連れてこい、と言ったのか……そこが真っ先に気になってしまっていた。
(なんで御当主様はわざわざ晴夜を連れて来い……って言ったんだろ……でも緊急事態っていうくらいだから……絶対なんか関係あるよね……??)
だが氷華は、すぐ実行に移すことにしたのだった。
晴夜を雪子の屋敷まで連れて行くことを。
教室に戻った氷華は、晴夜に声をすぐさま掛ける。
「あ、あのさ、晴夜……!!」
「ん? 氷華、どうしたの?」
「今日さ……!! 横浜行かない!?」
「……いいよ。今日予定……何もないから。」
柔和に笑いかける晴夜を見て、氷華はこの時ばかりは晴夜が「超鈍感」であることに感謝していた。
むしろ疑われる方が、この件はやりにくくなってしまうから。
というわけで、二人は授業後のホームルーム終了後、電車で横浜に行くことにしたのであった。
さて、横浜に到着した二人。
ここからどうするのか、というと、氷華は晴夜に疑われたら終わりだと思い、ブラブラと歩くように晴夜に促した。
「しっかし寒くなったよね……東京も。横浜は浜風があるから余計寒く感じるけどさ。」
「そういうなら京都はどうなのさ。」
「京都もまあまあ寒いけど……関東ほどじゃないよ。」
「私はむしろ寒い方がいいかな。沖縄、ホントに暑かったからさ……夏じゃないのが救いだったけど。」
「アハハ、流石雪女だね。……でもコート着てることは敢えて言わないよ。」
「そりゃ……!! 人間社会に溶け込むのは必要でしょ、コート着るの!! 暑いけどさ、確かに!!」
そんなこんなで話しながら二人は市内を歩いて行く。
横浜は政令指定都市に指定されているため、人集りが多い。
できれば速攻で決めたかった。
やがて二人は、雪子の屋敷の前に到着した。
「……大きいね、この屋敷……」
「……そうだね……」
氷華はなるべく知らないフリをしておこうと、冷淡な反応を敢えてした。
勘付かれてはマズイ。
氷華から焦りが生じる。
周囲を見渡す氷華、運良く歩いている人は少ない、今ならいける。
氷華は意を決したその時。
「? どうしたの、氷華……なんか落ち着いてないみたいだけど……」
「え!? な、なんでもないよ!!」
「?? まあ、いいけど……どうする? ここから。」
「ッ〜〜〜〜〜………晴夜、ゴメン!!」
これ以上は時間が取れなかった氷華は、晴夜の後頭部に手刀を打ち込んだ。
ゴスン! という鈍い音が響く。
「え?」
晴夜はたちまち意識を失い、前のめりで倒れ込む。
氷華はこれを受け止め、雪子の屋敷に入って行った。
(ゴメン、晴夜……!! 今はこれしかないんだ……!!)
出迎えた霜乃に晴夜を預け、氷華は天狐に一度連絡を取った。
「ゴメン、天狐……お願いがあるの。」
『はいはーい……なに、氷華……』
「……明日から晴夜のフリをして!! 事情は後で話すから!!」
『まー……分かったわ。アタシもその準備だけはしとくわ。』
「ごめんね、急なお願いで……じゃ、よろしくね。」
氷華の顔は明らかに強張っていた。
雪女にとっての異常事態とは何なのか、まずはそれを突き止めたかった。
氷華は雪子の屋敷へと入って行ったのであった。
屋敷に入ると、氷衣露が何故かいた。
「ひ、氷衣露?? なんでここに??」
「アタシも良くわかんないよ、氷華ねーちゃん。霜乃ねーちゃんに呼ばれて来ただけだから。」
「そ……そっか……」
「いーから。氷華ねーちゃんに用があるって、御当主様が。」
「うん……それは冷奈さん経由で聴いてる。行ってくる。」
氷華は急いで雪子のいる書斎へと足を運んでいったのであった。
失礼します!! と言って、氷華は書斎に入っていった。
「すまないの、氷華……急に呼び出したりなどして。」
「いえ……お気になさらず。」
「ああ、それと……晴夜の件、ご苦労だった。」
「……今回の『緊急事態』と……晴夜に何かご関係が?」
「ああ、大いにある。……まずは座れ。」
「ハイ……失礼します。」
氷華はそう言って、雪子の前に腰掛ける。
「……まずはその緊急事態の件じゃが……陰陽師一派が我ら雪女一族を滅ぼそうとしておる。……たった今、な。」
「……え……!?」
氷華にとっては完全に寝耳に水だ。
耳を疑う氷華だが、雪子はあまり嘘を吐けるようなタイプの人物ではないので、妙に信憑性が持てた。
「……信じられないようじゃが……本当のことじゃ。ワシとて昨日知って耳を疑ったわ。」
「……そうですか……」
氷華と雪子の表情が曇っている。
だが氷華が聴きたかったのは、何故晴夜を連れてくる必要があったのか。
それが一番気になっていた。
単純に雪女にとっては陰陽師は敵になる筈だが、何故陰陽師である晴夜を匿う必要があるのか。
それを知りたかった。
「御当主様……お言葉ですが、何故晴夜を……??」
「……氷華……『雪陰大戦』……は知っておるか?」
「……せ、雪陰大戦?? いえ……存じ上げないですが……」
「実はな……前も同じようなことが起きているんじゃ、陰陽師と雪女の……二種族間の間の戦争がな。……今から19年前のことじゃ。」
「19年前……」
「その話は後ほどしようと思う。……深く関わっておるからな、晴夜の件と。……もう言ってしまおうか。ワシと……ワシの侍女たちが知っている真実を……」
氷華は固唾を飲む。
雪子も一つ息を吐いた。
「実はな……晴夜は………ワシの息子なんじゃ。」
「………え…………???」
氷華は一瞬、思考が停止した。
そしてこの後、また更に衝撃の事実が、そして明かされることのなかった「雪女の血を引く男」と「雪女」の因果関係が明らかとなっていくのであった。
最後ビックリした方も多いのではないか、と思いますが、聴きたいことは次回明かします。
この物語の濃さが分かってくるのではないか、と思いますので、お楽しみくださいませ。




