86th SNOW 欲望の代償
第六章はもう少しで終わります。
桃悦と氷華の超限戦の決着となります。
彼の最期は激グロに仕上げたいと思います。
悪魔の姿になった桃悦と、再び「氷柱錦」を解放した氷華。
二人とも、ここで決着をつけようかという雰囲気が漂っていた。
「弾け飛べ……!! 『強欲の獄炎』!!!」
地面に指を突き刺し、桃悦は咆哮を挙げて炎を噴出した。
氷華はこれに対して鎌を振るい、横薙ぎ払いで炎を掻き消した。
しかし、あまりの高熱ぶりに、鎌は一瞬で溶け、気化した。
氷華は天叢雲剣を鞘から抜いた。
「『天翔ける竜の蹄』……『八岐三日月』。」
氷華は鋭く、目にも留まらぬ速さで桃悦に詰め寄り、桃悦の胴体を切り裂いた。
更に氷華は追撃する。
「『神秘なる氷・麒麟児』。」
天叢雲剣の力によって分身された剣が桃悦に次々と突き刺さっていく。
だが桃悦もタフだ、これしきなんともない、という風に受け止める。
「『強欲の爪』!!!!!」
桃悦が振り下ろした爪が、氷華の氷柱錦の形を捉え、鎧を破壊した。
だが、ダメージ的には肩が肌ける程度で済んだため、大した損害ではない。
「『燃える氷』……『大嵐』!!!!」
氷華はメタンハイドレードを大量に生成し、吹雪と共に桃悦を襲わせる。
硬い氷のため、地味に痛く、ダメージを与えていく。
だが桃悦も反撃する。
「簒奪術マモン……『獄炎球』!!!!」
桃悦が巨大な炎の球体を吐き出した。
氷華は慌てず、自分の周囲に氷の結界を張る。
「『囂倉』!!!」
屋根状の盾を作り出し、ガードした。
氷華は召喚獣を呼び出す。
「召喚獣……『神食いの狼』!!!」
巨大な狼が桃悦に襲いかかり、その顎で喰らおうとする。
桃悦も腕を突き出してガードし、これを防いだ。
だが、ここで桃悦に異変が起こる。
足元がふらついたのだ。
「なっ……どうなって……」
その正体は、というと。
「毒」だった。
それを使える者はただ1人しか思い浮かばない。
そう、天狐だった。
(さっき氷華の吹雪はアタシの毒煙を混ぜたもの……しかもただの毒じゃない、悪魔の刻印者や悪魔そのものに効果のある毒……蝿崎を倒した後から研究に研究を重ねて完成したものよ……悪魔が体内にいる限り絶対に解毒はできない、だからこれで終わりよ、羅生門桃悦……)
天狐は戦況を見つめながら勝利を確信していた。
氷華もチャンスと見て一気に切り込みにかかる。
しかし、桃悦の底力は往生際が悪いも良いところだった。
「僕が負けるなど………!!! あってはならない!!! ならないんだァァァァァァァァァァァァ!!!!!」
桃悦の足元から炎の竜が呼び出され、それが氷華に襲いかかる。
急旋回できない氷華の直撃コースだった。
炎の竜は氷華にクリーンヒットし、炎上したのだった。
だがしかし。
氷華は桃悦を睨みながら立ち上がった。
「なっ……!! 何故立てる!! 雪女に弱いはずの炎をまともに受けて……耐えられるわけが……!!」
「なんでか、って……? 簡単だよ、石田くん。私には……守るべき人が後ろにいるからね!!!」
氷華も最後の力を振り絞り、巨大鎌を生成した。
「これで終わりよ……! 『凍てつきし死神』!!!」
氷華は鎌を横に振るう。
その振るわれた鎌は桃悦の心臓を斬り裂いた。
しかもその心臓には、桃悦が捧げたマモンの居場所だった。
桃悦は悪魔状態が解け、地面に仰向けに倒れ伏した。
「嫌だ……嫌だ嫌だ嫌だイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダ………!!!!! 僕はまだ……まだ………雪宮さんの全てを……!! 全て……ヲ…………」
心臓部の傷口から、黒い何かが蠢く。
そして次の瞬間だった。
「アアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!」
桃悦の断末魔と共に、彼が今まで取り込んできた妖怪や悪魔が傷口から一斉に噴き出した。
晴夜はこれを見逃さず、自身の封印術で、妖怪を札の中に取り込んだのだった。
これで雌雄は決した。
氷華の勝利によって。
桃悦はもう、虫の息だった。
二年前に、氷華から掛けられた言葉の走馬灯を見ながら。
(そうか……僕は結局……何者にもなれなかったんだな……雪宮さんを僕のモノにすることで何かを得ようとしてた……信者も得たし、部下も得た、にも関わらず……僕の心は渇くばかりだった……何が……足りなかったんだろうか……?)
桃悦がふと見やると、そこには氷華がいた。
「石田くん……こうやって話すの……いつぶりだろうね……」
全ての眼を解除した氷華は、疲れ切った顔で桃悦を見下ろしていた。
「中学の時……以来……かな……そういえば……」
「……そう、だね……やっと思い出した……貴方がこうやっていじめられてて外で倒れてた時……それを見てた私が声……掛けたんだったよね……? 『何もない人が一番……何にでもなれるよ』って。」
「ああ……そうだね……忌まわしい記憶だ……」
「……なんで私を狙ったの? 石田くんがなんで……私なんかを求めるのかを。」
それもそうだ、桃悦が氷華をつけ狙っていた理由がイマイチ分からないからだ。
氷華は桃悦が死ぬ前に理由を知りたかった、ただそれだけだった。
「……そうだね、僕の命も……あと3分すれば尽きる……それくらい分かるさ。……一回しか言わない、良く……聞いておくれよ……?」
氷華は無言で頷く。
「Σ」のメンバーも桃悦の周りに集まった。
「実は……僕ら『馬仙院教』は……陰陽師一族の支援を受けていた。去年、だったかな、目をつけられて……陰陽師当主に気に入られて支援を受けたんだ。金銭面の、ね……そして極め付けが今年の……夏だ。陽陰晴夜、君が……ここに来てからさ……」
桃悦が一息吐く。
「………晴夜が……何か関係があるの……?」
「大アリ……だよ……僕はそれを知っていたんだ。彼がこの学校に来ること、そして……雪宮さん、君と会うことも……全部、ね。そこで独自に彼のことを調べ上げて……ある事実を知った。嫌な予感がする、ってその時に思ったんだ。なんでかは……いずれ分かる。だから僕は雪宮さん、君を……君の力を奪って僕のところで保護するつもりだった。……それが……このザマさ。」
「……それが理由……?」
「そうだ……陽陰晴夜、君は……二種族間に災厄を呼ぶ存在だ。だから忠告しておくよ、君に……『陰陽師の過激派には気をつけろ』。そして……君の命を狙う刺客がいずれ来る。それだけは覚えておいてくれ……」
息絶え絶えになりながらその場にいた全員に、桃悦は忠告した。
全員、例外なく難しい顔になった。
特に晴夜は。
「……ああ、そうだ……雪宮さん、君に一個……行っておきたかった……僕はずっと……君のことが……好きだったんだ……それが叶わないのは……強欲に僕が……初めから塗れていた、それに……尽きる、よ……『二兎を追う者は一兎をも得ず』とはよく言うけれど……まさにこのことだね……」
こう言って、桃悦は息絶えた。
その死に顔は、元の「石田晃良」に戻っているくらい、優しい顔だった。
氷華は後のことを北川に託すことにしたのだった。
「隊長……あとはお願いします。」
「ああ、わかった。任せとけ。」
そう言って、氷華はフラフラになりながら、晴夜と共に立ち去っていき、冷奈の待つ車まで歩き出していった。
「……こちら沖縄県名護市、青梅警察署及び警部補北川から連絡する。午前2時38分、石田晃良の死亡により……本部まで『被疑者死亡の為書類送検』とする旨を本部に要請する。また……同署勤務・小鳥遊怜緒樹巡査長殉職の旨も報告します。」
北川は桃悦に手錠をかけ、文香と冬菜と共に車に乗せて帰還していった。
その頃、氷華たちは、というと。
「どうやら倒したようですね……石田くんを。」
「ええ、まあ……氷華がいなかったらどうなってたか……」
宿まで車を走らせ、玄関前で3人は会話をした。
「夜も遅いので……私は先に戻ります。それでは、また明日。」
「はい、お休みなさい。」
冷奈は宿へと戻っていった。
「じゃあ氷華……僕らも……」
と、氷華は晴夜に抱きついた。
「晴夜……キス、して……?? お休みのキス。」
「え? ああ、うん……」
晴夜は言われるがまま、氷華と口づけを交わした。
約3秒交わした後で、唇を離す。
「晴夜……貴方のことは……何があっても私が守るから。」
「え……? ちょっと待って、さっきから何?」
「じゃ、お休み……天狐に明日……石田くんに化けさせることも忘れないでおいて。」
そう言って、氷華は宿へと戻っていった。
「氷華……なんか様子が変だったな……?? まあいいや、僕も寝よ。」
こうして羅生門桃悦と「Σ」の戦いは終わりを告げたのであった。
だが、この時はまだ誰も知らなかった。
氷華と晴夜の仲を引き裂くような出来事が迫ろうとしていることを、この時は誰も知るわけがなかったのだった。
意味深な感じですが、次章に関わる内容なので、伏線を張りました。
次回、終章です。
お楽しみくださいませ。




