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84th SNOW 天狐の機転

今回は肉弾戦。

ヘラクレスは実際そういう型になってる。

 マモンを放出させた桃悦と、新形態を解放した氷華。


氷華は神々しさから一転して美スタイルが映えるような、白いライダースーツのような格好に、桃悦は悪魔(マモン)の左腕が禍々しく映る。


「「ハァァアアアアッッッッ!!!!」」


両者同時に唸り声を挙げて殴りかかる。


氷を纏った拳とマモンの左腕がかち合った。


その後も超スピードで殴り合っていく2人。


至近距離の格闘戦なのにも関わらず、2人とも速すぎて視界に収められるものでは無かった。


しかもまともにクリーンヒットもしていない。


打っては避けての繰り返し。


1秒が1分に長く感じるほどの超連打と高速ディフェンス。


沖縄の地は、2人の闘いの世界が支配していたのだった。




 そうして1分が経過した頃だった。


「君は……僕に言ったことを……覚えているかい?」


互いに拳を振るいながら、桃悦が一言、ボソッと言った。


「なんの話……?」


「2年前……君は僕にこう言ったはずだ……『何もない人の方がすごい人になれる、何者にでもなれる』……そう言ったはずだ。」


「……そう言ったかはあまり覚えてはない、けれど……石田くんに対してそう思ったのは覚えてる……だって、その可能性を貴方から感じていたからね……」


「今の僕は……『何か』になれているかい? ……2年前とは違うかい? 君から見てどうなんだ……?」


「変わったよ、石田くんは……でもそれは……()()()()()だ!!」


氷華はそう言って、桃悦の左フックを躱し、カウンター気味に右回し蹴りを桃悦の腹に目掛けて放った。


「ガァっ……」


今日初めて、桃悦が呻き声を発した。


桃悦は一歩後退りをする。


「私だって変わったよ……でもそれは……『Σ』のみんなだったり、雪女の中の実力者の10番目以内に選ばれたり……良い経験も悪い経験もしていく中で自分の中で成長していくのを感じた……!! 私は『人間』として……成長できた!! でもそれは私1人では絶対できなかったこと!! 今の石田くんには……それを感じない!! 『悪魔』に身を堕とした『別の何か』よ!!!」


「……言ってくれるじゃないか……君を支えているものが……見えた気がするよ。」


鬼気迫る表情を見せる氷華に対し、桃悦は薄笑いを浮かべていた。


その後も一進一退の鬩ぎ合いが続いていったのだった。





 その頃、晴夜はというと。


札の中で暴れる天狐を宥めていた。


(晴夜……!! 戦わせて!! 今の状況を見てどう思うのよ、アンタは!!)


(だから落ち着いてって、天狐!! 今行くところじゃないだろう!! それに危険すぎる! 最悪君も……アイツに取り込まれかねない!!)


(だからって邪眼も閻魔眼も()()()()()()のは晴夜も知ってるでしょ!? アタシなら完全に優勢まで持っていける!!)


(ダメだって……!! ただでさえ氷華が押しているのに行くところじゃないよ!!)


晴夜は冷静に戦況を見極めて落ち着くよう指示した、しかし天狐は我儘に暴れていた。


自分に行かせろと言わんばかりに。


天狐は打算的で頭がキレるので、勝算があったのだろうが。


だが簒奪者は一瞬の侮りが命取りになる。


晴夜はカイメイジュウの件でそれを目の当たりにしているので、慎重になっていたのだった。





 戦況は、というとほぼ互角だったのだが、刻印術のデパート状態の桃悦に、全て氷華が対応できるわけがなく、氷華は次第に押されていった。


(クソッ……ここに来て炎系の妖怪を組み合わせたか……かといって雪女は空気を凍らせる以外に攻撃手段がない……なんとか隙を見つけて叩き込むしか……)


「ホラホラ!! さっきまでの威勢はどうしたんだい!?」


桃悦は尚も容赦なく攻撃を仕掛けていった。


氷華も反撃していくが、桃悦も目が慣れたのか、いとも簡単にカウンターを合わせるようになった。


氷華は分が悪いと見て、大きく後方にバックステップをした。


「闘神拳……『冷波(コールドウェーブ)』!!」


氷華は空気に向かって一直線に正拳突きを繰り出した。


それと同時に、桃悦の顔面がグシャッと潰れる。


桃悦は面食らったように後退りした。


真空波のようだが、見えようがないので避けられるわけがなかった。


「ぐっ……」


「霊力と妖力……プラスで冷気を圧縮した……これがこの型の切り札の一個……」


氷華は上空に飛び上がり、巨大な氷の拳状の塊を創り出した。


「これだったら……石田くんも破壊しきれないでしょ? 神の創り出した……この拳は。」


冷ややかな目で、静かに桃悦を挑発する氷華。


だが桃悦もニヤリと笑っている。


「いいねえ……神と悪魔の殴り合い……興奮するじゃないか……!」


そう高らかに言って、左腕にイフリートの拳を纏わせる。


「簒奪者を舐めないでもらいたいね……!! 『悪魔の拳(ディアブルフィスト)』……!!」


「そう来なくっちゃ……奥義!! 『闘神の鉄槌(ヘラクレスクラッシュ)』!!!」


桃悦が炎の拳を振り上げたと同時に、氷華も氷の拳を振り下ろした。


両者の拳がぶつかった。


と、それと同時に何やら動いている影が。


その影は空中で術を唱えた。


()()()()()!!」


桃悦の頭上で突如雨が降り出した。


「なっ……火が!!!」


桃悦も予想外だったため、驚愕の表情を見せたが、火が消えたことで仇になったことがある。


それは拳の威力が半減すること。


互角にぶつかり合っていたはずの拳に押し負ける。


氷華の拳は、桃悦を地面に叩き落とし、そのまま押し潰した。


氷華はすぐに察した。


(天狐だよね、今のは……! 何にせよ助かった!! 正直あの炎には手を焼いていたからね……!!)


獣人形態になっている天狐をチラッと見る氷華。


氷華はすぐに寒波を呼び寄せた。


「雪女凍結術……『氷柱雨(アイスピラーズレイン)』!!」


瞬く間に凍った雨を氷柱にし、地面に倒れ伏せている桃悦に降り注がせて追撃をかけた。





 時は数分前に遡る。


(ホラ見なさいよ!! 氷華、押されてるじゃない!!)


(だからって君がいくことはないだろ、天狐!!)


(晴夜……!! 氷華が本当に大事なら……!! 援護してやるのが男ってもんじゃないの!?)


札越しから晴夜に大声で問いかける天狐、晴夜は渋い顔をしていた。


桃悦の強さを肌で感じたからが故の躊躇いだったが、ここまで押されては背に腹を変えられない。


晴夜は一つ息を吐いた。


「天狐……危なくなったらすぐに撤退すること、これは絶対条件だ。主として……式神『九尾の狐』に出動命令を下す!! 行ってこい、天狐!!」


晴夜は、天狐の可能性に全てを賭けることを決めたようだった。


「任せなよ……絶対2人で、勝ってくるから。」


天狐は獣形態になり、氷華と桃悦の間をスルスルと抜けていった。





 そして時はまた戻る。


「やった!?」


天狐が氷華の横に降り立った。


「……こんなものじゃ……石田くんは止まらない……分かるよ……妖気が強いから……!!」


砂埃が払われた後、桃悦の立つ姿が見えた。


氷華と天狐は表情を引き締めた。


「……まさか……邪魔が入るとはね……不覚を取ったよ。」


「……私は最初っから……1vs1をしていたつもりはない……!」


「フン……だったらその妖怪はなんだというんだ……?」


氷華は一つ息を吐いた。


「……『親友』だ!! それに……『Σ(みんな)』の想いを全部背負ってる!! 私は貴方には負けない!!」


氷華は残りの2分半、全身全霊で立ち向かうという顔で、構える。


桃悦も表情を引き締める。


ここからが本番だと言わんばかりに。

次回から本格的に2vs1の構図になります。

天狐の真価を発揮させます。

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