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81st SNOW 「僕の彼女(おんな)だ!!!」

この回は、氷華の走馬灯シーンからお送りします。

で、晴夜がどれだけ氷華を大事に想っているかも書ければええかなー、と。

 意識を失って、砂浜に倒れふせたΣメンバー。


桃悦は氷華にゆっくりと近づき、馬乗りになった。


「ククク……これで僕のモノだ……まずは……雪女をじっくりと見るとしようか……」


眠っているかのように意識を失って倒れている氷華、神々しさすら感じさせられる。


「ああ……眠っている顔も美しい……ずっと……憧れ続けていた人が目の前にいるだなんてねえ……」


桃悦を照らすは月に光。


桃悦の銀髪が怪しく青白く光っていたのだった。





 氷華は目が覚めた。


川のせせらぎが聞こえ、周囲には彼岸花が広がっている。


「……? なんで私……沖縄にいるんじゃあ……??」


状況が理解できない氷華、立ち上がって歩き出した。


「ホント怖いな……なにこれ、どういう状況……?」


この場には晴夜も北川も、文香も冬菜もいない。


恐怖に渦巻いていた。


以前の内気な女の子に戻ってしまっていた。


得体の知れなさと、迷走感で。


歩を進めていくと、川岸に立っていた。


だがその先には進めなかった。


何か、結界を張られているかのように。


「え……?? なんで先に進めないの……?? もう……なんなのここ……!!」


氷華が結界に八つ当たりするかのように、ガンッ!! と殴った時だった。


示し合わせたかのように、氷華にとっては信じられない光景が見えてきた。


「……久しぶりね、氷華さん。」


「!? …………え!? なんっ……ええ!?」


氷華が驚くのも無理はない。


()()()()()()()()()()が目の前にいるのだから。


「雪羽ちゃん……!? なんでここに!? てか、ここ何処なの!?」


完全に思考パニック状態に陥っていた氷華。


目の前にいるのは紛うことなき霰塚雪羽。


幻影であるはずがない。


約2ヶ月ぶりの雪羽の姿。


自分が手にかけたとは思えないほど、綺麗な体をしているのだから。


「……ここは彼岸の世界。つまり貴女は今……死にかけの状態よ。」


「……!? なに!? どういうこと!!??」


氷華は余計にわけがわからなかった。


彼岸の世界? そしてなぜ自分はそこにいるのか……? 氷華は必死にここに来るまでのことを思い出そうとする。


「氷華さん……私に逢いたいのは分かるわ。だけどまだ……来ちゃダメよ。だって……まだ、やることがあるじゃないの。」


「………?? あ……思い出した……!! 私……石田くんとみんなで戦ってて……!!!」


桃悦と戦っている時を思い出したようだった。


だが、思い出したと同時に絶望感を覚えた。


圧倒的な強さが脳裏によぎっていたからだ。


「……雪羽ちゃん……桃悦は……石田くんは……本当に強いよ……何もできなかった……みんな倒れていくし……とてもじゃないけど勝てる気がしない……」


氷華はヘタっと座り込み、自分の不甲斐なさに涙を流す。


だが、雪羽は突き放した。


ゲキを入れるかのように。


「……それが私に勝った雪女ですか? あの時の貴女はこんなものじゃなかったはずよ!! 絶対に私を止めるんだ、そういう気迫が伝わってきていた……今の貴女はそれが無いじゃない!!!」


「……わかんないよ……あの時はただ……必死だったから……」


と、ここで佐久間が姿を現した。


「雪宮さん……君はなんのために……沖縄に来た?」


「!? 先生!?」


「僕は君に言ったはずだよ。晴夜を何があっても必ず守れ、そして桃悦を倒せ、と。」


氷華は佐久間の言葉に唇を噛む。


それすら出来ずに彼岸の世界まで来たのだから。


悔しさと情けなさが氷華に滲み出てきていた。


「それが今じゃどうだい、雪宮さん、君の情けない姿は。桃悦の全力すら引き出せていないじゃないか。無論()()だ。全力すら出せないまま……こんなところに来ているじゃないか。君がこんなものじゃないことは僕もよく知っている。君の初めての任務の時の……全てを凍らせる妖力を僕達に見せてくれたこと……今でも忘れていないよ。」


「あの時の……でも全部……必死だったんです……悪い奴を絶対倒そうってだけで……」


見かねたのか、ため息を吐いた怜緒樹が佐久間の後ろから出てきた。


「氷華……無様にやられたアタシが言えることじゃねえけどよ。アタシは氷華のこと……認めてんだよ。Σの新エースとして、な。……晴夜が言ってたぜ? 氷華はまだまだ強くなるって。新しい眼を練習してるって、よ。それに付き合っていくうちに……自分が置いてけぼりになる感覚になるんだとよ。でもよ……晴夜は嬉しそうに話すんだよ、そういうのを。アンタは分かんねえかもしれねえぜ? 自覚してねえから。でもよ、アタシもそうだし、晴夜もそうだし……Σのみんな、そう思ってんだぜ? アンタ以外、な。今のアンタは……Σのエースだよ。紛れもねえさ。それだけみんな……氷華のことを認めてんだぜ?」


「新しい……眼……? そうだ……私、まだ……あの眼を使えてない……!! 閻魔眼を……まだ……!!」


氷華は思い出したかのように立ち上がった。


私にはまだ、やるべきことがあった、と。


「まあ、そう焦るなよ、氷華。……現世は今……()()()()()()()()()()()だからよ……?」


怜緒樹がそう告げた時、現世は展開が動き出そうとしていたのだった。





 同じ頃、現世では。


晴夜の意識が回復していた。


「う……うう………ん……今、どうなって……」


朧げな意識の中、晴夜が目撃してしまったのは。


氷華に馬乗りになっている桃悦の姿だった。


「アイツ……!! 氷華に何を……!!」


愛する氷華に何をしようというのか、晴夜はそう思うと怒りが湧いてきていた。


だが、意識を失っていたが故か、ダメージが深いのか、足が動かなかった。


(ヤバい……なんとかしないと氷華が……!!)


晴夜はポケットから札を取り出し、足の疲労を回復させる術式を展開した。





 その頃、桃悦の方はというと。


「さて……君の力をもらうとしようか……雪宮さん……君は……『雪女』としてじゃなくて……『()()()()()』の雪宮氷華として……僕のものになるんだから……!!」


桃悦は氷華の頭に右手を突き出した。


雪女の力を取り込もうとでもいうのだろうか。


だが、それは阻止されようとしていた。


唯一コレを見ていた、晴夜によって。


「やめろーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」


晴夜の咆哮が砂浜に響き渡る。


「もう遅いよ、陽陰晴夜……雪宮さんはもう僕のものになるんだからね!!」


見せしめかのように、右手に妖力を桃悦は込めた。


(マズイ……本当にマズイ……!! このままだったら……!! 代償は大きいけど、やるしかない!!)


「結界術増強式……『大翔脚(たいしょうきゃく)』!!!」


人体の限界を越えるこの術式は、使用後2週間は筋肉痛になるほどの激痛を代償に伴うのだが、氷華を守るためなら晴夜は躊躇うことがなかった。


晴夜はラグビーのタックルのように、もの凄いスピードで、低い姿勢で桃悦に突撃していった。


「なっ!?」


「アアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」


完全に不意を突かれた桃悦、晴夜の気迫に押され、氷華の上から引き剥がされた。


勢いよく地面に転がる2人。


上に乗った晴夜は逃すまいと拳を桃悦に向かって振りかぶる。


桃悦は舌打ちをし、左手で砂を掴み、晴夜の顔面に向かって投げつけた。


砂をまともにもらった晴夜は一瞬目を閉じた。


桃悦は続けて右フックを晴夜に浴びせて脱出した。


だが晴夜も逃がさない。


すぐさま立ち上がって、右ストレートを桃悦に向かって振り下ろした。


まともに食らった桃悦は堪らずタタラを踏んだ。


「チッ……折角いいところだったのに……! 何故僕の邪魔をする、陽陰晴夜……!! 君にとっての雪宮さんはなんだと言うんだ……!!」


桃悦はもう、余裕綽々の表情ではなくなっていた。


鬼の形相になっていた。


晴夜は口から流れる血を左腕で拭い、桃悦にこう言い放った。


「氷華は……僕の彼女(おんな)だ……!! だから……氷華は僕が守る!!」


氷華の恋人としてのプライド、そして今の晴夜には、男としてのプライドがオーラに宿っていた。


「チッ……うざったいたら、ありゃしないね……! やはり『()()()()()()、か……()()()()()()()()()()()()()()()と思っていた僕がバカだったようだね!!」


「氷華を奪いたかったら……!! まず僕を殺してからにしろ!!」


「やはり君は……ここで殺しておかなければいけないようだな……!! ()()()()()()()()()()()ね!!」


「僕は簡単に死にはしないぞ……! 来い、桃悦!!」


氷華を巡る、男同士の喧嘩が幕を開けたのだった。

桃悦が最後に言ったことが次章の伏線になって繋がっていくので、このシーンを覚えておいて損はないかな、と思います。

次回は桃悦と晴夜の拳の語り合いです。

そして氷華はどうなるのか、乞うご期待ください。

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